2021.08.09

CARS

ちょっと古いメルセデス・ベンツがよみがえる場所! ヤナセ・クラシックセンター潜入(?)リポート!!

ちょっと古いメルセデス・ベンツを甦らせる ヤナセ・クラシックセンター

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乗って楽しめるSL

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そうしたヤナセクラシックカーセンターの目指すクオリティが明らかなのが、今回取材した91年型のメルセデス・ベンツ500SLだ。

栄光のW198型300SLから数えると4代目にあたるR129型は89年のジュネーブ・ショーで登場。W126型Sクラス以降、ブルーノ・サッコが推し進めた空力コンシャスなデザインの最終形というべき流麗なスタイルを持つR129は、メルセデス初の可変吸気バルブタイミング・システムを採用した5リッターV8DOHC、ADS可変ダンパー、セルフ・レベリング・システム、電動油圧駆動のルーフ、緊急時にポップアップするロールバーなど数々の新基軸を投入したスーパー・スポーツであった。



今でも新鮮さを失わないボディは特にレストアなどを行ったものではないにもかかわらずピシッとしている。実はこの個体そのものを以前ドライブさせてもらったことがあるのだが、メルセデスらしい剛性感のあるシャシーと力強く滑らかなV8は絶品で、古いクルマという印象はまったくなかったのを覚えている。

「エンジンのマウント交換、電装系の消耗品や足回りのブッシュ交換、4段ATのオーバーホールを行いました。内装もオリジナルのままですが、センターコンソールのウッドパネルや灰皿も修理。あとメーターナセルのパネルの新品が手に入ったので交換することにしています」

残念ながら既に売約済みとのことだが、ここまで手を入れて販売価格は528万円。山田さんによると驚くことに半年、5000kmの保証までついているという。

「ご購入後すぐに修理が必要とならないように、ヤナセ販売車両の中から、整備履歴がある程度明らかな車両を厳選し、私たちの熟練メカニックが点検します。不具合箇所の修理はもちろんのこと。ウィークポイントの予防整備を行い、ATもオーバーホールするというメニューを行っています。“乗って楽しむ”というのはクラシックカーセンターのコンセプトなので、その名に恥じないものを販売するようにしています」

ヤナセ物の神通力

そうした自信の背景にあるのが、長い歴史を持つヤナセの技術力、経験、そして人的資源である。それを象徴する1つとして、敷地内にあるユニット部門と呼ばれる機関系の修理、オーバーホールを行う部門を見せていただいたのだが、最新モデルに混じって、W124のトルコン式ATや、R107型SLのリサーキュレーティング・ボール式のステアリング・ギアボックスが、熟練メカニックによって新品同様にオーバーホールされている光景は見事だった。さらにATギアボックスをテストするブースが3つもあることに驚いた。

こうした完璧なメンテナンス体制に加え、最近では女性スタッフの視点で内外装を含めてチェックを入れてもらい、誰の目から見ても綺麗と感じる仕上がりにも留意しているのだという。

ここで個人的に1つ気になったのは、正規輸入車と並行車の違い。マニア筋の間ではメルセデスに限らず、パワーの出ている本国仕様を珍重する傾向もあるのだが、その点についてはどうなのだろう?

「確かにパワーは並行車の方がありますが、正規輸入車は渋滞やストップ&ゴーに対応するためファイナルギアを変えたり、フューエル・クーラーが付いていたり、ATのバルブ・ボディが違ったりと、日本の実情に合わせた改良が施されています。今でも多くのクルマが生き残り、毎日安全、安心にドライブできているのも、その結果だと思います」

菅野さんによると、そうした日本仕様を前提にメーカーのトレーニングを受けているので、正規物であれば迅速、的確に対応できるという。そういう意味でも“ヤナセ物”の神通力は、クラシックでも色褪せることはないということなのだろう。

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文=藤原よしお 写真=望月浩彦

※リポートで取り上げた車両の在庫や価格はエンジン8月号掲載時のものです。
(ENGINE2021年8月号)

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