オンラインによるリモート開催となった世界最大の時計フェア「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2021」を振り返る第1弾。カルティエからは、伝統と革新の両面から意欲的に発表されたモデルを取り上げ、時計ジャーナリストの菅原 茂氏と エンジン時計担当の前田清輝がその魅力を解説する。これぞカルティエ、名作のオンパレードデジタルプラットフォームによる発表とはいえ、質、量ともに圧倒的な新製品によって豊かな創作力をあらためて認識させたカルティエ。昨年のリニューアルで話題を集めた新世代「パシャ」には、期待通りクロノグラフが仲間入り。歴史的名作に由来する「カルティエ プリヴェ」では、フォルムが独創的な「クロシュ」が登場し、愛好家を喜ばす。また、複雑時計の超絶技術を披露したスケルトンのトゥールビヨンも興味をそそるが、予想外のサプライズといえば、かつて一世を風靡した「マスト」をオマージュした「タンク マスト」の発表である。21世紀の"タンキスト"たちが続々と生まれそうだ。
パシャ ドゥ カルティエ クロノグラフ41mm
2020年に生まれ変わった「パシャ」の第2弾。目盛りを刻む回転ベゼル、カボションを配したクロノグラフのプッシュボタンなど歴史的名作のデザインコードを継承しながら、自社製ムーブメント、容易にブレスレット交換ができる「クイックスイッチ」、さらにコマ調整が可能な「スマートリンク」システムなど、随所に新世代の特色が盛り込まれている。自動巻き。ステンレススティール、ケース直径41mm、10気圧防水。交換用レザーストラップ付き。予価110万8800円。7月発売予定。Maud Remy-Lonvis (C)Cartier
クロシュ ドゥ カルティエアイコニックな歴史的モデルに焦点を当てた「カルティエ プリヴェ」の5作目は、1920年に創作された「クロシュ=鐘」のフォルムを再現。非対称のユニークなデザインのケースは、水平に置いた姿が卓上ベルを思わせるのと同時に12時位置が上になるのでデスククロックとしても使える。1作目から4作目と同様に、忠実な復刻と現代的なスケルトンの両バージョンを展開する。手巻き。ピンクゴールド、ケースサイズ37.15mm×28.75mm、3気圧防水。世界限定100本。予価320万7600円。9月発売予定。
プラチナによる「クロシュ ドゥカルティエ」スケルトンは、デザインに合わせた新開発の手巻きムーブメントを搭載。ケースサイズ37.15mm×28.75mm。世界限定50本。予価811万8000円。9月発売予定。(C) Cartier
タンク マスト LM1970年代〜80年代に一世を風靡した「マスト」をオマージュした最新作のひとつは、光エネルギーで動く新開発の「ソーラービートTM」ムーブメントを搭載し、非動物性素材のストラップを採用。価格も魅力的だ。ステンレススティール、3気圧防水。SM( 縦29.5×横22mm)予価28万8200円、LM(縦33.7mm×横25.5mm)予価30万3600円。9月発売予定。(C) Cartier
サントス デュモン "モンテカルロ"プレシャスセットブラジル人飛行家アルベルト・サントス=デュモンのためにカルティエが創作した腕時計が「サントス」。新作は彼の1902年のモナコでの飛行船による海上飛行を称えた、カフリンクスと特製ボックスが付属する100本限定の貴重なセット。手巻き。プラチナ、ケース縦46.6mm×横33.9mm、3気圧防水。予価361万6800円。9月発売予定。(C) Cartier時計ジャーナリスト・菅原 茂はこう見た!思い出します1980年代。ラグジュアリーを身近なものに変えた「マスト ドゥ カルティエ」のタンクウォッチや筆記具、レザーグッズなどが自分のまわりでも大流行。新作「タンク マスト」からは、明るい活気に満ちたそんな時代が甦る。今回光発電ムーブメントを搭載した意図はサステナブルにあり。未来への展望も込められたこの時計、欲しくなりませんか?ENGINE編集部・前田清輝はこう見た!カルティエの伝説のタイムピースに焦点を当てたコレクション、「カルティエ プリヴェ」。毎年、どのモデルが登場するのかワクワクするのだが、今年の「クロシュ ドゥ カルティエ」もその期待を裏切らない出来! 優美なフォルムと個性的な表示にうっとり。「旅先でテーブルクロックのように置いて楽しみたい!」、そんな妄想をしてしまった。文=菅原 茂/前田清輝(ENGINE編集部)(ENGINE2021年7月号)