2021.11.27

LIFESTYLE

目印は大きなクスノキと赤いアルファ・ロメオ・スパイダー 家もクルマもオープンで!

群馬県太田市で設計事務所を経営する田島さんご夫妻。オープンカーを愛するご主人が夫人と共に建てた自邸は、大きなクスノキが立つ、開放感にあふれた家だった。

仕事のモチベーションを上げる手段

庭の大きなクスノキと青い空。敷地と道路の境に柵などなく、赤いアルファ・ロメオ・スパイダー(2003年製)が幌を上げて停まっている。なんと豊かな光景だろう。ここは、建築家、田島寛己さん(47歳)、花織さん夫婦の自邸。

「精神衛生上、オープンカーがないと生きていけない」

と話す田島さんにとって、屋根のないスポーツカーを所有するのは、仕事のモチベーションを上げる手段のひとつ。これまで3台のオープンカーに乗ってきた。1台目は独身時代の2代目マツダ・ロードスター。デートでは助手席に花束を置いて、花織さんを迎えにいったこともあった。もっとも結婚してすぐに子供を授かったので、やむなく手放すことに。

写真では2台だが、駐車スペースは3台分ある。左側に子供たちが遊んだクスノキが。常緑樹なので、木の下は常に日陰となる。2階部分の右側の建物の中が夫婦の寝室、左側の建物の中が子供たちの寝室。外壁の木材は自分たちで塗った。屋根の庭からは真正面にクスノキが見え、そこのテーブルで「ビールを飲んで過ごすのは最高」だとか。自邸ゆえ、屋根の端に柵を設けなかったことで得られる解放感は抜群。

2台目は、初代マツダ・ロードスター。花織さんも運転したいというのでATにしたが乗る機会は限られ、運転しても少々消化不良に感じるところも。という訳で、V6の3リッターエンジンが魅力の、現在所有する916型アルファ・ロメオ・スパイダーに数年前に乗り換えた(ナンバープレートも「916」)。仲の良い夫婦は一緒にドライブに出かけることも多く、花織さんは「オープンにして走る際も、他人から見られて恥ずかしいと感じる事はない」と話す。


2台目のクルマを選ぶ方法は?

そう、ここは開放的なカリフォルニア……ではなく、 駅前にスバルの大きな工場がある群馬県太田市。田島邸は駅から離れた、40年以上も昔に住宅街として開発分譲されたエリアに建っている。



田島さんは普段使いの2台目として「916スパイダーと同じエンリコ・フミアがデザインしたスバル・レガシィ」に乗っていた時期もあるそうだ。現在はアウディA5スポーツバック(2013年製)で、その前はアルファ・ロメオ159。スパイダーと合わせて一時期アルファ・ロメオの2台持ちだったが、159に大きな故障があったため、安全重視でドイツ車となった。A5スポーツバックを選んだのは、ルーフの低さなどデザインが決め手。「クルマは黒」と主張する花織さんの意見で黒色となった。もちろん花織さんの現在の愛車、フォルクスワーゲン・ポロも黒だ。部活で野球をする2人の子供の送迎のため、長いことホンダ・ステップワゴンに乗っていたが、2人とも遠くの大学に通うため家を出たので、去年乗り換えた。



田島邸が建ったのは3年前のこと。長男が高校3年生の冬である。かつてこの場所には築40年になる古い住宅が建っていた。新婚で手に入れた田島さん一家が、18年住んだ家だ。それは、建築家の手掛ける作品とはほど遠い、普通の住宅である。幼いころから両親の仕事を見てきた子供たちは、「時間をかけてキレイな家を建てても、自分たちが住むのではなく他人に渡してしまう」のが不満だった。そこで両親は、子供たちに家を建てる約束をしたが、若い頃はそう簡単にできるものではない。そして仕事が軌道に乗り出すと、今度は忙しくて自邸にまで手が回らなくなる。それでも約束を守るため、一緒に住める期間は短いが、頑張って建てたのがこの家だ。



田島さんは子供の教育について独特の考えを持っている。特にポータブルゲーム機対策については、よく考えた。自分の子供たちだけに厳しくしても、誰か仲間が持っていれば意味がない。そこで、学校帰りに同級生たちが田島邸に集まり、木登りやボードゲームなど、いわゆる昭和の遊びを楽しむようにと工夫をしたのである。因みに庭の大きなクスノキは、田島さんが引っ越してきた時に既に植わっていたもの。歳月をかけて巨木となった。そこで田島さん夫妻が、子供たちが集まるようにと工夫したのが、庭にウッドデッキを設けること。子供たちがいなくとも友達は自由にやってきて、集い遊ぶことができるのだ。お陰で子供たちは、ポータブルゲーム機に熱中することなく育った。

そして建て替えの際、このウッドデッキだった場所は屋外テラスとなった。しかもそれまで通り、ここから直接家に出入りできるような間取りである。だから玄関は設けなかった。1階は多くの人が集まれるよう、大空間のリビング・ダイニング・キッチンが。この1階部分は、田島さん夫妻が初めて採用した鉄筋コンクリート造である。地面より40cmほど床を下げ、より近い目線で庭が見えるようにするためだ。2階には、平たい屋根の上に寝室が入る木造の小屋のような建物を2つ載せた。

障子はないがスクリーンを備える和室。正座しても、視線の近い高さに庭の芝生が見えるうえ、愛車の眺めも魅力的。


この自邸を含め、田島さん夫妻の作る空間が魅力的なのは、植物の使い方が上手いからだろう。クスノキは常緑樹で常に日陰を作るので、庭に植えられる植物は限られる。そのため、日の当たる1階の屋根の上も庭にし、日光が必要な植物を植えた。1階北側の中庭を含め、視界の中に植物が溢れる癒される家だ。

夫妻の寝室。天井は高くロフトも備わる。同じく2階にある子供たちの寝室にはリビングから別の階段で上るが、夫婦と子供たちの部屋が離れていてもお互いの気配は感じられる。ちなみに2つある子供部屋は、境の壁を撤去できる構造。

幸せが溢れる家

花織さんは、かつて家を設計したお施主さんから、「自宅に戻ってくると、家から灯が漏れてくる姿に感動する」と聞いていた。体験したことはないが、それは意識して設計してきたこと。実は田島邸、塀がないだけでなく、カーテンも雨戸もない。通りからは家の中が見えるが、オープンカーに乗るようにさほど気にならないという。そして「窓から照明の灯が漏れてくる家は、幸せが外にこぼれて、付近の家にお裾分けしている感じがする」と感想を話す。夜の素敵な風景が目に浮かぶようだ。そう、ここは田島さん夫妻が作った、幸せが満ち溢れる家なのである。



田島寛己:建築家、1974年群馬県太田市生まれ、東京理科大卒業/ 田島花織:インテリアコーディネーター、照明コンサルタント共にハウスメーカー勤務を経て2004年に共同で設計事務所を設立。群馬県内の住宅を中心に店舗・事務所、賃貸住宅など幅広く手掛ける。植栽の使い方にも定評がある。右/夫妻が手掛けた地元太田市のケーキ屋『ラ シェーブル ドール』。

文=ジョー スズキ 写真=田村浩章

(ENGINE2021年12月号)

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