EV時代への回答としてポルシェが満を持して送り出したタイカン。デビューから2年が過ぎ、RWD モデルに加えて待望のクロスツーリスモも出揃った今、ポルシェ好きを公言する3人、モータージャーナリストの藤原よしお、島下泰久、そして『エンジン』編集長のムラカミが、改めてその「ポルシェならではの魅力」を探ってみた。ターボSの最高出力は625馬力!村上 今日は鳴り物入りで登場して2年となる3台のポルシェ・タイカンで箱根まで走りに行ってきました。藤原 最高峰のタイカン・ターボS、一番ベーシックな後輪駆動のタイカン、そして新たに加わったタイカン4クロスツーリスモの3台ですね。島下 ターボSは最高出力625psで、オーバーブースト時が761ps。素のタイカンは326psで、オーバーブースト時408psですが、試乗車はオプションのパフォーマンス・バッテリー・プラスを装着して380ps、オーバーブースト時476psになっていた。一方、タイカン4クロスツーリスモは、パフォーマンス・バッテリー・プラスが標準装備で、パワーは今回の素と同じです。
藤原 車検証を見るとターボSが2380kg、クロスツーリスモが2320kg、タイカンが2180kg。ターボSとタイカンでは200kgも違うんですね。村上 乗ってみてどうだった?藤原 どう評価していいのか、まだわからないんですよ。クルマの出来も動力性能もスゴく良いのは良くわかるんです。でもポルシェの中での立ち位置とか、自分の中で消化しきれない違和感がある。スゴすぎて自分のリズムとシンクロしないというか。ターボSは特に。島下 ターボSは「ウチのが一番速い」ってことを見せなきゃいけないクルマだから。テスラ・モデルSで一変したプレミアム・カー市場にポルシェのブランド力と走りで挑むタイカンにおいて、切込隊長としての役目があるわけですよ。藤原 やっぱタイカンの中でもターボSだけ特別なんですよね。島下 911でもターボSってそういう存在じゃないですか。村上 ポルシェってずっと2ドアしか出していないスポーツカー専業メーカーの雄だった。そこに4ドアのカイエンやパナメーラを出した。でもEVではいきなり4ドア。今回不思議な気がしたのは、スポーツ・モデルではあるけど、その前にこれは高級車だなって思ったこと。乗り心地とか、躾け方とかそういうものが。島下 ポルシェなのに、みんな最初に「乗り心地が……」って言葉が出てくる。あまりスポーツカーとして見ていない。いつの間にか高級車として見ているっていうのが面白い。
村上 新しい時代のポルシェは、単純にスポーツカーであることを超えて、高級車であることも受け入れなければならない立ち位置にいるってことだよね。ひと昔前のポルシェって、スポーツカーとしては常に完璧を求めてきたけど、それは必ずしも高級車ということではなかった。島下 でもポルシェらしくないと思いながら、やっぱポルシェだよなと思うのは、ステアリング・フィール。ノーズが圧倒的に軽く動く感じで、重たいのに動きが軽快。海外試乗会の時にステアフィールの生々しさと、すっと鼻が入ってく感じで思ったんです、これは911だと。街中で乗るとクルマが重いのは確かですよね。それはEV全体の課題。だから今日のようなシチュエーションでは違和感が大きい。でも海外のような速度域で飛ばすと重さを忘れるんですよ。藤原 体では物理的に重いのがわかるのに、動力性能が遥かにそれを上回る。その感覚のズレも違和感かも。島下 一度そのポテンシャルをフルに引き出すほど飛ばすと、やっぱポルシェだなこれってわかってもらえると思う。重たいって言ってもハンドリングはすごく正確でしょう?藤原 路面にピターって吸い付く感じ。一方でターボS、クロスツーリスモの順番で乗っちゃうと、最初は2駆の旨味がわからなかった。でも乗り続けるとジワジワくるんです。島下 素のやつだけエアサスじゃないんですよね。あの乗り心地って911っぽいなって思う。シャシー剛性あって足が硬いんだけど、バタバタするようなシチュエーションでも不快じゃない。藤原 そう! 感覚的には2駆の方がわかりやすい。サスの動きもそうだし、リアしか駆動がかからないから、後ろ足が蹴っていく感じとか。島下 パワーもそこそこだしね。パワーがないから踏めるし、踏んでも後ろでしか掻かないから、そこも911っぽい。
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