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2021.12.19

CARS

選ぶのは賢い直4か？　ホットなV8か？　マセラティ・ギブリの悩ましい選択！！

森口将之

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マセラティは伝統的にサスペンションをガチガチに固めず、ドライバーが姿勢変化を使って曲がるスタイルを提供してきた。その中でもギブリ・ハイブリッドはまろやかで、街中でも足がしっとり動いてくれる。ダンパーをスポーツ側に切り替えても不快にはならない。

それでいてハンドリングはサイズを考えればかなり身軽だ。エンジンが4気筒で、48Vバッテリーをリアに積むことがメリットになっているのだろう。もしかするとバードケージのティーポ60／61も、このようなハンドリングの持ち主だったのかもしれないと想像した。



マセラティらしいトロフェオ

そこから乗り換えたトロフェオは3.8リッターV8ツインターボ・エンジンを積む最速のギブリ。ハイブリッドとの間にラインナップされるV6ツインターボにはAWDもあるが、こちらはいさぎよく後輪駆動のみだ。

外観は3連エアベントやブレーキ・キャリパー、Cピラーのトライデントのアクセントが赤くなるほか、エンジン・フードにアウトレットが設けられ、カーボン製リア・スポイラーが追加される。インテリアも各所がカーボン・パネルに置き換えられ、かなり精悍な雰囲気だ。

エンジンルームの眺めだけでも魅了されるV8ツインターボは、始動した瞬間から存在感にあふれる。フェラーリより重みのある、底力を感じさせる脈動をキャビンに響かせ、外にはイタリアン・スーパースポーツらしい、ハイトーンのエグゾースト・サウンドを発する。



V8としては排気量は大きくないので、昔の3200GTのようにシューンと吹け上がる。力はありあまっていて、余裕に任せてクルーズするのもいいし、山道でちょっと遊んでみるのもいい。多くのハイパフォーマンス・セダンがAWD化しつつあるからこそ、後輪駆動ならではの征服感が満喫できる。

乗り心地はハイブリッド同様まろやかだが、ノーズは重い。コーナー進入でブレーキをかけて荷重を前に移動させ、鼻先をコーナーに入れたあと、スロットルペダルで荷重を後輪に移し、アスファルトを蹴りながらコーナーを脱出する。マセラティらしいドライビング・スタイルが濃厚に味わえる。

ドライブ・モードはスポーツの上にコルサがあり、ダンパーは自動的にスポーツになる。ドライの滑らかな路面ではスポーツが適役だが、一部ウエットで路面も荒れたこの日の山道ではノーマルのほうが、個人的にはしっくりきた。

ギブリ・ハイブリッドには、4気筒ターボとモーターのコラボだからできる、軽やかな身のこなしがあった。一方のトロフェオはV8ツインターボならではの豪快な走りがあった。単なる上下関係ではなく、それぞれに固有のキャラクターを与えた術に感心した。

思い返してみればマセラティはこれまでも、同様のクルマづくりをしてきた。そこにハイブリッドが加わったのが現在の姿だと感じた。これまで以上に多彩なキャラクターが選べる、恵まれた時代にいるのだと、マセラティに教えられた。

文＝森口将之　写真＝柏田芳敬



■マセラティ・ギブリGT（ハイブリッド）
駆動方式　エンジン・フロント縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高　4791×1945×1461mm
ホイールベース　2998mm
トレッド（前／後）　1635／1653mm
車両重量　2030kg
エンジン形式　水冷直列4気筒DOHCターボ＋eブースター＋BSG
排気量　1998cc
最高出力　330ps/5750rpm
最大トルク　450Nm/4000rpm
トランスミッション　8段AT
サスペンション（前）　ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション（後）　マルチリンク/コイル
ブレーキ（前後）　ベンチレーテッド・ディスク
タイヤ（前／後）　245/40ZR20／285/35ZR20
車両本体価格　1021万円

■ギブリ・トロフェオ
駆動方式　エンジン・フロント縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高　4791×1945×1461mm
ホイールベース　2998mm
トレッド（前／後）　1635／1653mm
車両重量　2080kg
エンジン形式　水冷V型8気筒DOHCターボ
排気量　3799cc
最高出力　580ps/6750rpm
最大トルク　730Nm/2250-5250rpm
トランスミッション　8段AT
サスペンション（前）　ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション（後）　マルチリンク/コイル
ブレーキ（前後）　ベンチレーテッド・ディスク
タイヤ（前／後）　245/35ZR21／285/30ZR21
車両本体価格　1840万円

（ENGINE2022年1月号）

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