2023.02.19

CARS

浮谷東次郎や矢吹圭造など、今や伝説となった天才ドライバーたちの名前も飛び出す「クルマ人生」がすごい! ホンダS800とディーノ246GTをガレージに納めるオーナーの2台持ちライフとは

オーナーの山中さんと、ホンダS800(1966&1970)とディーノ246GT(1970)。

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愛と青春のホンダS800

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そんな山中さんが、初めてホンダS800を手に入れたのは、2000年頃のことだった。

「ヨタハチに乗っていた若い時に、エスは高くて買えなかったから買ったんです。例のロングテール・マクランサにはガレージからサーキットまで何度となく乗りましたけど(笑)」

1966年型のリジッド仕様のS800をベースに、さるスペシャリストが排気量を860ccに拡大し、カムシャフトやFCRキャブなど、あらゆる部分に手を加えたフルチューンの直4DOHCを搭載。ノーマルの70psに対し110ps以上を絞り出すものの、意外なほど扱いやすく乗りやすいのが特徴。

以来、数台のエスを乗り継ぎ、今は長らく鈴鹿サーキットに展示してあったという70年型のS800Mと、レース・スペックの66年型S800をガレージに収めている。

特にレース仕様の方は、あるスペシャリストが手がけたフルチューン・エンジンを搭載。街乗りを考慮せずに徹底的に仕上げただけあって、6000回転以降のパワーの出方は驚異的。加えて足回りのセッティングも絶妙で、気持ちよくワインディングで振り回せる。

「思うようにコントロールできない、セッティングできないと思ったクルマはすぐ我が家からいなくなります。エスだって、ノーマルだったら他と一緒。思うようにならないクルマはどれも一緒です」

1966年型のリジッド仕様のS800をベースに、さるスペシャリストが排気量を860ccに拡大し、カムシャフトやFCRキャブなど、あらゆる部分に手を加えたフルチューンの直4DOHCを搭載。ノーマルの70psに対し110ps以上を絞り出すものの、意外なほど扱いやすく乗りやすいのが特徴。

と山中さんは笑う。そうした思いに至ったのは、公道ラリーを卒業し、50代からアルファロメオ・ジュリエッタ・スパイダーやスパイダー2000でサーキットレースに徹底的に打ち込むようになってからだという。

「一時期、肩を痛めてレースを離れたんですが、治ってきたのでまた走ろうと思ってこのエスを作ったんです。でも林さんが復元したマクランサでサーキットを走るようになったので、使うあてがなくナンバーをつけただけ。その後、ロングテール・マクランサも復活して僕が鈴鹿で乗るようになったんだから、人生って不思議なもんだよねぇ(笑)」

そんな山中さんの車歴に今年、新たに加わったのが漆黒のディーノ246GTだ。

「昔は嫌いだったんだけどね。フェラーリは1回も所有していないから、最後に経験しておこうと。それでレストア途中だったものを譲り受け、1年かけて仕上げたんです」

フェラーリ初の市販ミッドシップとして知られるディーノ206/246シリーズ。

山中さんのディーノは70年型。いわゆるティーポLという初期型で、内外装のディテールに206GTとの共通項も多い。

「それゆえに専用部品も多くてね。内装も配線もない状態だったから大変でした。乗った感じ? 思っていた通りのフツーに乗れるフェラーリ。スポーツカーじゃなくGTだから、乗りこなす醍醐味はないけど、スタイリングは最高ですよ」

そう言えるのもアルファ・チャレンジで常勝を誇り、いまだに105系エンジン車の岡山国際サーキットのベストラップを保持している腕前を持つ山中さんならではだ。

では、長きにわたるクルマ遍歴で最も自分の想いに近いクルマは何だったのだろう?

「レースで乗ってたジュリエッタと、このエスのレーサーかなぁ? エスはサイズ感がいいし、乗っていて楽しい。もし誰かに譲ったとしても、また作ったらいいんですよ。もっと理想のができるかもしれないし。まぁ、エスとは腐れ縁やね」

文=藤原よしお 写真=望月浩彦



(ENGINE2022年2・3月号)
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