2022.05.24

CARS

フランス車の「天国」と「地獄」体験、教えてください!! シトロエン・ミーティングで聞きました!【後篇】

春の日の週末、シトロエンを愛するオーナーたちが、神奈川県横須賀市のとある場所に集まった。フランス車のなかでもシトロエンのオーナーほど、愛情を持ってクルマに接している人はいない。それは時には偏愛に近いこともある。だから天国的な体験はもちろん、たとえそれがめくるめくトラブルの体験であったとしても、まるでラブストーリーのように聞こえるから不思議。日本シトロエンクラブ(CCJ)のミーティングでたくさん集まったシトロエン偏愛者のみなさんに、愛車の魅力とこれまでのトラブルについて聞いてみた、フランス車の「天国」と「地獄」体験、教えてくださいの後篇。フランス車大好きジャーナリストの森口将之がリポートする。

◆前篇から読みたいときはコチラから◆

ひとり目は2CVに乗る辻寿夫さん。

1990年型2CVスペシアルに乗る辻寿夫さん「天国はフレンドリーな仲間たち」 

『エンジン』もお世話になっている印刷会社にお勤めの辻さんは、6年前に娘さんが購入した2CVで参加。オーナーは現在子育て中であまりドライブができず、代わりに乗っているそうだが、しだいに気に入ってしまい、ご自身も去年秋にボルボから2代目C5に乗り換えたとのこと。もっともフランス車っぽいという理由で初期の2リッターにしたという選択眼は、2CVによって育まれたかもしれない。実は2CV、壊れる場所がないと言われるほど信頼性は高い。辻さんも地獄はエアコンがないことぐらいと語る。天国は仲間がフレンドリーで楽しめること。この日もリアルのミーティングならではの時間を堪能していた。



1989年型2CVスペシアルに乗る田中博志さん「道ゆく人がみんなが笑顔になるクルマ」 

日本には10台ぐらいしかないのではと言われる、並行輸入の右ハンドル仕様2CVに2年前から乗っている田中さん。その前はプジョーを乗り継いできたそうで、現在もRCZを手もとに置いている。2CVは衝動買い。SNSの情報を見て新幹線で福島へ見に行き、2週間後に再び新幹線に乗って、自走で帰ってきた。最初にお金をかけて整備したおかげもあって、現状は天国だらけとのこと。走っていると子供たちをはじめ、道ゆく人々がみんな笑顔になってくれることが、このうえない喜びだという。毎年1回、オーナーたちが集まってキャンプに行くという催しもあるそうで、それも楽しみだという。



1997年型エグザンティアSXに乗る伏見聡さん「元気に乗れば壊れない」

GSA、BX、ZXと乗り継いできた伏見さんが現在の愛車としているのはエグザンティア。上級のV-SXは電子制御のハイドラクティブ・サスペンションを採用していたが、クラシックDS以来の技術であるハイドロの乗り心地を好む伏見さんは、正規輸入車で最後のハイドロであるSXを選択し、左ハンドルにもこだわった。GSAではガソリン逆流、BXではオルタネーターのベルト断裂、エアコンのブロアモーター故障などを経験したが、長年の付き合いで元気に乗れば壊れないという秘訣を掴んだ近年は、さほど困っていないとのこと。イベント以外では同じ車種に遭遇しないこともプラスに捉えている。



1990年型2CVスペシアルに乗る川崎好仁さん「トラブルも夫婦の思い出」 

川崎さんにとって2CVは2台目。昔チャールストンに乗っており、お子さん誕生を機に国産車に乗り換えたものの、子育てが一段落した2年前に正規輸入の最終型を手に入れた。戻ってきた理由として、飽きない形、今のクルマとは違う快適さとともに挙げていたのが、走っているときの周囲のクルマの優しさ。困難がなかったわけではなく、チャールストンのときは結婚式の申し込みで横浜に出かけたところキー・シリンダーが取れてしまい、やむなく時間を遅らせたという。でもこの日、夫婦揃って写真に収まったところを見ると、今はそんなエピソードも天国にカウントされているようだ。



1987年型CX25GTiに乗る永野然次さん「乗り味にホレボレ」

今回のミーティングの運営を担当した永野さんは、AXやBXを乗り継ぎ、現在は20年前に購入したシリーズ2のCXを所有する。購入時に10万kmを刻んでいたオドメーターは、なんと23万kmに達していた。もちろんこの間、天国ばかりだったわけではない。ステアリングや電気系は前のオーナーが手を入れていたそうだが、永野さんのもとでエンジンの載せ替え、ATのオーバーホールなどを行うことになった。それでも乗り続けている理由は、乗り心地とシートの良さ、速度可変のセルフセンタリング・ステアリングがもたらす直進安定性とのこと。これからも着実に距離を重ねていくことだろう。



1973年型SM3リッターに乗る大畑仁志さん「乗らされている感じがしない」

これまで12台のシトロエンを乗り継ぎ、今もCXやC6など6台を所有する大畑さん。SMは古株に属するが、走っては壊れの連続だったそうで、ミーティングの3日前に修理が完了した。ハイプレッシャー・ポンプなどを駆動するアクセサリー・シャフトが折れたり、エンジンのタイミング・チェーンがコマ飛びしてバルブ・クラッシュを引き起こしたり、聞いている側まで動揺するほどの出来事を乗り越えて路上復帰を果たせた原動力は、高度なメカニズムを持ちながら乗らされている感じがなく、自ら操ることで走りを極めていけるという独特の世界があるからだという。



文=森口将之 写真=望月浩彦

(ENGINE2022年6月号)

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