2022.07.18

CARS

シトロエン2CVといえばこの人、ENGINE前編集長のスズキさんでしょう! フランス車はいつ乗っても美味しい!!

この個体は、1988年にパリはジャヴェル河岸の本社工場での生産が終了したあとポルトガル工場で2年間製造されたもののうちの1台で、最終1990年型。

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2CVはまるでパン・パリジャン

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こうして一度は手放した「ハイドロ・シトロエン」を、しかし、僕は、そのあともふたたびみたび購入した。GSよりひとまわり大型でDSの後継車であったCX、2台目のGS、そしてGSの後継車となったBXのブレーク(ステーションワゴン)である。さらにハイドロニューマティック機構はもたないが、DS同様、天才エンジニアのアンドレ・ルフェーブルと天才スタイリストのフラミニオ・ベルトーニがコンビを組んで開発した2CVを、買っては手放すことを繰り返したすえに、いま僕にとっては4台(代)目のそれを、ほぼ毎日のように運転している。

室内は、横方向には狭いが、開発を命じた当時の副社長のピエール・ブーランジェ(のちに社長になった)がおこなった「ハット・テスト」に合格しただけあって、頭上の空間には余裕があり、大人4人乗車は苦ではない。ブーランジェは身長2メートル近い大男で、シルクハットを被って乗り込み、ハットが天井に触れないことを要求した。


この2CVは、極上の舌平目のムニエルのように滑らかなテクスチュアの「美食」経験を与えることはできないけれど、パリパリのバゲットにハムとバターとチーズをほうりこんだシンプルで素朴な「パン・パリジャン」(パリのサンドイッチ)のように、いつ食べて(乗って)も美味しく、それを食べる(乗る)と元気が出るクルマである。ハイドロニューマティック系シトロエンに相通じるフラットで快適な乗り心地と、ソファでくつろぐような居心地はボーナスだ。

気候危機が叫ばれるいま、より高い速度よりも美味を追究するという戦後シトロエンが提示した思想は、見直されてしかるべき時を迎えたのではなかろうか。

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文=鈴木正文 写真=望月浩彦 撮影協力=アンスティチュ・フランセ東京(飯田橋)

(ENGINE2022年6月号)

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