新たな時代の礎を作るシャネルの物語

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変化を恐れず果敢に挑む姿勢があってこそ、歴史と伝統の重みも意味を成してくる。だからこそファンはその時計のデザインに心を奪われ、機能に夢中になる。そして気になりだすと、見えないことがもっと知りたくなる。「どうしてこのデザインが誕生したのか」、「どのように作られているのか」、「どのような歴史を辿ってきたのか」――。時計には製作者やブランドの想いが込められたストーリーがあり、知れば知るほど虜になってしまう。そんな素敵なシャネルの魅力を紹介しよう。

J12 ウォンテッドドゥシャネル
恒例の数量限定モデル「カプセルコレクション」2022年版のひとつ。プレーンなマットブラックのダイアルとベゼルとに、金属皮膜を形成するメタライゼーションによるシルバーのロゴがグラフィカルに浮き立つ。文字がずれないよう、ベゼルは固定式とした。左はエリュが描いた最初期のスケッチ。すでにスタイルがほぼ完成されている。自動巻き。高耐性セラミック＆SS、ケース直径38mm、200m防水。105万6000円。

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リニューアルに伴い資本参加するケニッシ社製クロノメーターCal.12.1を搭載。シースルーバックに姿を見せる円と半円とを組み合わせた自動巻きローターも、シャスタンの手による。

何も変えず、すべてを変えたアイコンとしての正しい進化

2000年にデビューしたシャネルの「J12」は、漆黒の外観で衝撃を与えた。しかしやがて時計ファンは気付く。そのデザインは、スポーツウォッチとして極めてオーセンティックであることを。当時のアーティスティックディレクター故ジャック・エリュは、幅広のベゼルやコントラストが明確なダイアルなど古典にならった普遍的なスタイルをブラックセラミックで形作り、コンテンポラリーへと昇華させたのだ。

そんな「J12」は、2019年に刷新を果たす。メゾンのアイコンにメスを入れたのは、時計部門のクリエイションスタジオディレクター、アルノー・シャスタン。彼はまず「J12」を構成するすべてのディテールを抽出し、それぞれのデザインの本質を理解しようと努めた。そしてそれらを4年もかけて慎重に手直しし、生まれ変わった「J12」は、その変化に気付けないほど、初代と酷似していた。しかし変更点は70％以上に及ぶ。何も変わっていないようで、まったく違う新たな「J12」を生み出したシャスタンは、それをベースに自身オリジナルのクリエーションを注ぎはじめた。今年の新作では、一切の目盛りを廃し、CHANELの文字を主役とした。それでも「J12」らしさが損なわれていないのが、普遍のスタイルが確立されている証だ。

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問い合わせ＝シャネル（カスタマーケア） Tel.0120-525-519

文＝高木教雄　写真＝近藤正一
（ENGINE2022年8月号）

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