2022.09.07

CARS

550万円以下の価格を超えた価値のある電気自動車選び! 注目の日産アリア、ヒョンデ・アイオニック、フィアット500eを乗り比べ!!

日産アリア、フィアット500e、ヒョンデ・アイオニック。

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1000万円級のプレミアム・モデルから、500万円前後へと主戦場を移しつつある電気自動車。しかも既存の内燃エンジン車をベースとしない、まったく新しいモデルたちが続々と登場。そんな中でも、とびきり個性的な3台を集めて乗り比べてみた。モータージャーナリストの島下泰久がリポートする。

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価格を超えた価値ある存在か?

世界的なCO2削減の動きに呼応し、さらには勢いに乗るテスラに対抗するためもあって、一昨年辺りから欧州プレミアムメーカーからバッテリー電気自動車(BEV)が続々登場してきている。当初は、まさにテスラ・モデルSやモデルXを仮想敵とした価格レンジのモデルばかりが投入されていたが、ここに来てラインナップが広がりリーズナブルな、それこそ税込み550万円という今回の縛りにも対応するようなモデルが次々に登場してきた。しかも嬉しいことに、その多くが単に値段が現実的というだけでなく、実力高く個性にあふれ、まさに価格を超えた価値を持った存在となっている。ここに集めたのは、その代表格と言える3台である。



まず筆頭にあげるのは日産アリア。実はこのクルマは2020年夏に発表されていたが、デリバリーが遅れに遅れ、ようやく今春からユーザーの手に渡り始めた。リーフで早くからBEVの量販に乗り出した日産にとっては、ようやくのBEV第2弾。先日発表された軽BEVのサクラと合わせた3兄弟で、BEV再攻勢に出ようというわけだ。

このアリア、何より目をひくのがそのデザインである。大径タイヤが際立つワンモーションフォルムのクーペSUVルックに、薄型のLEDヘッドライトや、ラジエーターグリルに代わって採用された内側に組子のパターンを配したスモークパネルなどの組み合わせによって、ベタに言えば未来感たっぷりの外観が形作られている。

最近の日産デザインが掲げるテーマは「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」。時間を超えた日本的な未来感とでも言えばいいだろうか。その雰囲気は確かにある。

1モーターで前輪を駆動するアリアB6。日本仕様は基本、このB6と2モーターになるB6 E-フォース、そしてバッテリー容量が91kWhまで増加するB9とB9Eフォースの4モデル。

キーを持ってクルマに近づくと、自動的にドアがアンロック。室内に入ると、いかにも今っぽい大型ディスプレイが鎮座している一方、全体としてはとてもスッキリとした印象に仕立てられている。エアコンの吹出口は横一線に配置され、ウッドパネルに静電容量スイッチが内蔵されるなどして、シンプルかつ質高くまとめられているのだ。

室内スペース自体もとても広い。エンジンが無いBEVなのでフードは短く、そのぶん室内前後長は余裕。しかも足元スペースを拡大するべく空調ユニットを床下の電気モーター隣に設置したことも効いている。

試乗車はB6と呼ばれるバッテリー容量66kWh、前輪駆動のいわばエントリーモデル。いざ走らせると、とにかく静かで滑らかなことに舌を巻いた。発進そして加速は300Nmという最大トルクから想像する以上に力強いが、かと言ってアクセルオンでいきなり飛び出したりはせず、扱いやすい。

アクセレレーターの開閉だけで加速だけでなくほぼ停止に近い減速もできるワンペダルドライブも可能だが、そのコントロール性も秀逸。新開発の巻線界磁モーターの静粛性、抵抗の少なさが、この上質感に大いに貢献しているのは間違いない。このパワートレインにはBEVの旨味成分だけがギュッと凝縮されている。

シフト・セレクターは左右からつまんで前後させるタイプ。走行モードはスポーツ、スタンダード、エコの3種。ステアリング・ヒーターや前後席のシート・ヒーターと前席のベンチレーション・シートは標準装備。

乗り心地は街中などでの初期の当たりは柔らかいものの、高速道路の路面の継ぎ目のような素早い入力に対しては硬めで、身体が揺さぶられる感が強いのが気になった。しかしながらフットワーク自体は素直で、重心の低さ、前後重量配分の良さが素直に活きている。実に軽快に、颯爽と走ってくれるのだ。

アリアの走りは全身から質の高さ、繊細なタッチとでも言うものを感じさせてくれる。BEVならば自動的に静かに滑らかになるわけではなく、そこにはやはり知見やノウハウが活きる。リーフ以来、BEVをずっと手掛けてきた意味が、その走りにはしっかり反映されているわけだ。

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