2022.09.07

CARS

550万円以下の価格を超えた価値のある電気自動車選び! 注目の日産アリア、ヒョンデ・アイオニック、フィアット500eを乗り比べ!!

日産アリア、フィアット500e、ヒョンデ・アイオニック。

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愛らしさは踏襲

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フィアット500eは、お馴染み500をベースとするBEVではなく完全に新しく作られたモデルであり、しかも将来的には現行の500に置き換わる存在とされている。そう、500は遠からずBEVのみのモデルになるのである。

実際、サイズは500に対して全方位少しずつ拡大されているが、それでも見た目はしっかり500らしい愛らしさを踏襲している。試乗車は「OPEN」というグレードで、その名の通りキャンバストップルーフがセールスポイント。実は現時点でBEVのオープンカーはこのクルマが唯一の存在なのだそうだ。

2本スポークのステアリングホイールの奥に置かれたマルチファンクションディスプレイやダッシュボード中央のタッチパネルは、速度や電費など走行に関わる様々な情報をポップな絵柄で分かりやすく表示する。ドアの開閉がレバーではなく電気スイッチ式だったり各部にイラストが挿入されていたりと、様々な演出が散りばめられているのも楽しい。

フィアット500eも1モーターで前輪を駆動する。

レバーの代わりにボタンとされたスイッチでDレンジを選んで走り出すと、500eは小気味良い、いや良過ぎるほどのダッシュを見せた。500と言えばツインエアエンジンのイメージが強いが、BEVになるとすばしっこさは同じようでもトルクの立ち上がりに唐突感が無く、また変速時のギクシャクとも無縁でコントロールしやすいのが良い。

走行モードは「ノーマル」、「レンジ」、さらにギリギリまで航続距離を絞り出したい時のための「シェルパ」の3つ。レンジモードではアクセレレーターを戻すと結構強めの減速Gが立ち上がり最初はギクシャクするが、慣れると右足だけで加減速を自在にコントロールできるようになる。軽い操舵力でクイクイと向きを変えるステアリングを含めて、ちょっとおもちゃ的ではあるけれど、軽快な走りは楽しい。弾む気分に思わずルーフを開け放つと、エンジン音のしない滑るような加速に先進感を覚えてますます気分がアガる。

航続距離335kmという500eのスペックは、まさにシティユース前提の欲張りすぎないもの。車重が軽いから電費はいいし、走りも軽快で、BEVのメリットがめいっぱい活きている。近所に買い物に出るのすらこのクルマでならエンターテインメントになるし、その時に周囲に排ガスを出していないというのもちょっと誇らしい。そういう意味で500eは、まさにプレミアムコンパクトカーだと感じられた。

2007年登場の3代目500のイメージは踏襲しているが、特にダッシュボードはまったく新しいデザイン言語によって構築されている。

今回、550万円縛りで価格以上の価値があるBEVを探し求めたら、結果的にドイツ車以外の3台が集まった。いずれも個性の強いクルマたちだったが、共通しているのは単に内燃エンジンを電気モーターに置き換えるだけではなく、これを機に新しいクルマの魅力を打ち出していこうという意欲が前面に出たものになっていたことだ。

メーカーの思惑はさておき、実際にはBEVへのシフトは自宅に充電設備があり、時間に追われた長距離行の必要がほとんど無いといった、それが生活にフィットする人、楽しめる人からじわじわと起きていくはずである。私自身は生活環境的にまだその選択はできないが、これら個性派たちに改めて触れて、BEVライフを送れる人が本当にうらやましくなってしまった。この3台のように価格を超えた価値、今までのクルマとはひと味違った魅力をもった選択肢が増えてくれば、今後、BEVへの関心がますます高まってくるのは必至と感じられたのである。

文=島下泰久 写真=柏田芳敬

500eのラインナップは試乗車のオープンのほか、クローズド・ルーフのポップとアイコンの3種類。

■フィアット500eオープン
駆動方式 フロント・モーター前輪駆動
全長×全幅×全高 3630×1685×1530mm
ホイールベース 2320mm
トレッド(前/後) 1470/1460mm
車両重量 1360kg
最高出力 118ps/4000rpm
最大トルク 220Nm/2000rpm
バッテリー形式 リチウムイオン
バッテリー容量 42kWh
航続距離(WLTCモード) 335km
サスペンション(前) マクファーソンストラット+コイル
サスペンション(後) トーションビーム+コイル
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/ドラム
タイヤ(前後) 205/45R17
車両本体価格(税込) 495万円

■日産アリアB6
駆動方式 フロント・モーター前輪駆動
全長×全幅×全高 4595×1850×1665mm
ホイールベース 2775mm
トレッド(前/後) 1585/1590mm
車両重量 1920kg
最高出力 218ps/5950-13000rpm
最大トルク 300Nm/0-4392rpm
バッテリー形式 リチウムイオン
バッテリー容量 66kWh
航続距離(WLTCモード) 470km
サスペンション(前) マクファーソンストラット+コイル
サスペンション(後) マルチリンク+コイル
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/通気冷却式ディスク
タイヤ(前後) 235/55R19
車両本体価格(税込) 539万円

■ヒョンデ・アイオニック5ラウンジAWD
駆動方式 前後2モーター4輪駆動
全長×全幅×全高 4635×1890×1645mm
ホイールベース 3000mm
トレッド(前/後) 1628/1638mm
車両重量 2100kg
最高出力 305ps/2800-8600rpm
最大トルク 605Nm/0-4000rpm
バッテリー形式 リチウムイオン
バッテリー容量 72.6kWh
航続距離(WLTCモード) 577km
サスペンション(前) マクファーソンストラット+コイル
サスペンション(後) マルチリンク+コイル
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ(前後) 255/45R20
車両本体価格(税込) 589万円

(ENGINE2022年8月号)

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