日産アリア、フィアット500e、ヒョンデ・アイオニック。
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愛らしさは踏襲フィアット500eは、お馴染み500をベースとするBEVではなく完全に新しく作られたモデルであり、しかも将来的には現行の500に置き換わる存在とされている。そう、500は遠からずBEVのみのモデルになるのである。実際、サイズは500に対して全方位少しずつ拡大されているが、それでも見た目はしっかり500らしい愛らしさを踏襲している。試乗車は「OPEN」というグレードで、その名の通りキャンバストップルーフがセールスポイント。実は現時点でBEVのオープンカーはこのクルマが唯一の存在なのだそうだ。2本スポークのステアリングホイールの奥に置かれたマルチファンクションディスプレイやダッシュボード中央のタッチパネルは、速度や電費など走行に関わる様々な情報をポップな絵柄で分かりやすく表示する。ドアの開閉がレバーではなく電気スイッチ式だったり各部にイラストが挿入されていたりと、様々な演出が散りばめられているのも楽しい。レバーの代わりにボタンとされたスイッチでDレンジを選んで走り出すと、500eは小気味良い、いや良過ぎるほどのダッシュを見せた。500と言えばツインエアエンジンのイメージが強いが、BEVになるとすばしっこさは同じようでもトルクの立ち上がりに唐突感が無く、また変速時のギクシャクとも無縁でコントロールしやすいのが良い。走行モードは「ノーマル」、「レンジ」、さらにギリギリまで航続距離を絞り出したい時のための「シェルパ」の3つ。レンジモードではアクセレレーターを戻すと結構強めの減速Gが立ち上がり最初はギクシャクするが、慣れると右足だけで加減速を自在にコントロールできるようになる。軽い操舵力でクイクイと向きを変えるステアリングを含めて、ちょっとおもちゃ的ではあるけれど、軽快な走りは楽しい。弾む気分に思わずルーフを開け放つと、エンジン音のしない滑るような加速に先進感を覚えてますます気分がアガる。航続距離335kmという500eのスペックは、まさにシティユース前提の欲張りすぎないもの。車重が軽いから電費はいいし、走りも軽快で、BEVのメリットがめいっぱい活きている。近所に買い物に出るのすらこのクルマでならエンターテインメントになるし、その時に周囲に排ガスを出していないというのもちょっと誇らしい。そういう意味で500eは、まさにプレミアムコンパクトカーだと感じられた。今回、550万円縛りで価格以上の価値があるBEVを探し求めたら、結果的にドイツ車以外の3台が集まった。いずれも個性の強いクルマたちだったが、共通しているのは単に内燃エンジンを電気モーターに置き換えるだけではなく、これを機に新しいクルマの魅力を打ち出していこうという意欲が前面に出たものになっていたことだ。メーカーの思惑はさておき、実際にはBEVへのシフトは自宅に充電設備があり、時間に追われた長距離行の必要がほとんど無いといった、それが生活にフィットする人、楽しめる人からじわじわと起きていくはずである。私自身は生活環境的にまだその選択はできないが、これら個性派たちに改めて触れて、BEVライフを送れる人が本当にうらやましくなってしまった。この3台のように価格を超えた価値、今までのクルマとはひと味違った魅力をもった選択肢が増えてくれば、今後、BEVへの関心がますます高まってくるのは必至と感じられたのである。文=島下泰久 写真=柏田芳敬■フィアット500eオープン駆動方式 フロント・モーター前輪駆動全長×全幅×全高 3630×1685×1530mmホイールベース 2320mmトレッド(前/後) 1470/1460mm車両重量 1360kg最高出力 118ps/4000rpm最大トルク 220Nm/2000rpmバッテリー形式 リチウムイオンバッテリー容量 42kWh航続距離(WLTCモード) 335kmサスペンション(前) マクファーソンストラット+コイルサスペンション(後) トーションビーム+コイルブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/ドラムタイヤ(前後) 205/45R17車両本体価格(税込) 495万円■日産アリアB6駆動方式 フロント・モーター前輪駆動全長×全幅×全高 4595×1850×1665mmホイールベース 2775mmトレッド(前/後) 1585/1590mm車両重量 1920kg最高出力 218ps/5950-13000rpm最大トルク 300Nm/0-4392rpmバッテリー形式 リチウムイオンバッテリー容量 66kWh航続距離(WLTCモード) 470kmサスペンション(前) マクファーソンストラット+コイルサスペンション(後) マルチリンク+コイルブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/通気冷却式ディスクタイヤ(前後) 235/55R19車両本体価格(税込) 539万円■ヒョンデ・アイオニック5ラウンジAWD駆動方式 前後2モーター4輪駆動全長×全幅×全高 4635×1890×1645mmホイールベース 3000mmトレッド(前/後) 1628/1638mm車両重量 2100kg最高出力 305ps/2800-8600rpm最大トルク 605Nm/0-4000rpmバッテリー形式 リチウムイオンバッテリー容量 72.6kWh航続距離(WLTCモード) 577kmサスペンション(前) マクファーソンストラット+コイルサスペンション(後) マルチリンク+コイルブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/ディスクタイヤ(前後) 255/45R20車両本体価格(税込) 589万円(ENGINE2022年8月号)
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