走りの洗練度が高まった私が最初に乗ったのは白いボディ・カラーを持ったGTだった。今度からリアのトランクリッド後端にグレード名が付くようになったので、簡単に識別できる。走り出してすぐに感じたのは、飛び切り軽快感あふれるハンドリングはそのままに、走りの洗練度が格段に高まったということである。私が1年間長期リポートで乗っていたリネージと比較すると、わずかにトルクが太くなったことが、低中速時の走りを想像以上にスムーズなものにしていると思った。プレゼンでは足の硬さは先代と同じと言っていたが、体感的にはパワー&トルクが上がった分、少しダンパーも締め上げられている印象だ。とはいえ、乗り心地が悪いとはまったく感じなかった。むしろ、スポーツカーとしてちょうど気持ちいい硬さの足まわりで、ステアリングから伝わってくるロード・インフォメーションも、これまでのリネージより鮮明になったように思われた。そのほか、クルマの隅々から聞こえてくる様々な音や細かな振動から感じられるボディのしっかり感が、かつて乗っていたリネージよりずっと高まっている。4年間つくり続けているうちに、工業製品としての工作精度もどんどん上がっているのだ。その結果、軽さを生かした軽快なハンドリングを減じることなく、その一方で、ビシッとした骨格から得られる安定感ある走りをついに実現したのだ、と思うと、走っていてとてもうれしくなってきた。次に乗ったSは、ハッキリと固められた足回りを持つスポーツ志向丸出しのモデルだった。ステアリング操作に対するクルマの動きもすこぶるシャープで、運転には常に少しばかり緊張感が強いられる。しかし、それでも先代に比べると、GTと同じくすべての部分の工作精度が上がった結果、この手のスポーツ・モデルとしては格段に洗練された乗り味に仕上がっていると思った。リクライニングしないフルバケット・シートの座り心地もホールド感も悪くないし、これで普段乗りからサーキット走行まで楽しみたいというムキには、好適な1台であるに違いない。しかし、今回私が惹かれたのは、軽快感と快適性をほどよく兼ね備えたGTの走りだ。内燃機関終焉の時が近いことも考えると、今こそが買い時だろう。さあ、どうしよう。
■アルピーヌA110 GT駆動方式 エンジン・ミド横置き後輪駆動全長×全幅×全高 4205×1800×1250mmホイールベース 2420mm車両重量 1120kgエンジン形式 直噴直列4気筒DOHC16バルブ・ターボ排気量 1798ccボア×ストローク 79.7×90.1mm最高出力 300ps/6300rpm最大トルク 340Nm/2400rpmトランスミッション ツインクラッチ式7段自動MTサスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイルサスペンション(後) ダブルウィッシュボーン/コイルブレーキ(前後) 通気冷却式ディスクタイヤ (前)205/40R18、(後)235/40R18車両本体価格(税込み) 893万円文=村上 政(本誌) 写真=柏田芳敬(ENGINE2022年8月号)
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