2022.11.05

CARS

男ごころをくすぐる現代の羊の皮を被った狼、レクサスIS500Fスポーツ・パフォーマンス! 5リッターV8の咆哮とFRのアナログな乗り味は最高!!

レクサスIS 500Fスポーツ・パフォーマンス

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秘めた狼は隠せない

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試乗の舞台はアメリカはサンタバーバラ周辺。日本仕様には設定の無いセレスティアル・ブルーと呼ばれる鮮やかな青をまとった1台のステアリングを握ることができた。

V型8気筒5.0リッター自然吸気の2UR-GSE型ユニットは、RC Fと変わらない最高出力481ps、最大トルク535Nmを発生する。トランスミッションは、広範囲のロックアップにより最短0.2秒で変速を完了する8速SPDS(スポーツ・ダイレクト・シフト)。駆動方式は、言わずもがなのFRである。

当然、シャシーにも相応に手が入れられている。サスペンションはスプリングレートが高められ、電子制御ダンパーのAVS、電動パワーステアリングの制御も改められている。トルセンLSDも装着。そしてISではフロントだけのパフォーマンスダンパーがリアにも追加されている。ボディのねじれやたわみを減衰させるこのアイテムは、大パワーを後輪だけで余さず受け止め、路面に伝達するには欠かせないというわけだ。

ディンプル加工を施された本革巻きステアリングや、Fスポーツ専用のウルトラスエードとLテックスを組み合わせたブラックのスポーツシートが、これが特別なスポーツ・モデルであることを主張する。


タイヤ・サイズはフロント235/40R19、リア265/35R19。ブリヂストン・ポテンザS001Lという銘柄ともどもISのFスポーツと共通である。ブレーキはフロントが対向4ポット・キャリパーで、ローター径はフロントが334mmから356mmへ、リアが297mmから323mmに拡大されている。

外観上の最大の識別点は、V型8気筒エンジンを収めるべく大きく隆起したフロント・フード。同時にフロント・フェンダーやバンパーなども変更され、全長は50mm伸ばされている。一方、リアに回るとやはりバンパーの意匠が異なり、専用の4連エキゾースト・エンドが大いに主張している。羊の皮を……と書いたが、秘めた狼の部分、もはや隠しきれていない。

インテリアには表皮にバックスキン調の風合いを持つウルトラスエードとLTexという2種類の合成皮革を組み合わせた専用のスポーツ・シートを採用する。ウルトラスエードはメーターフードやアームレストなどにもあしらわれ、更にディンプル加工の本革と組み合わせてステアリングホイールにも使われている。

ウルトラスエードはインテリアの随所にも使われて、スポーティさに加えて高級感を釀しだすのにも一役買っている。


世界が一変する

ドライバーズ・シートに腰を下ろしてスタート・スイッチを押すと、眼前のデジタルパネルにIS500専用のオープニング画面が映し出され、V型8気筒5.0リッター自然吸気ユニットが目を覚ます。ソソる鼓動に誘われるようにアクセレレーターを踏み込み、いよいよ発進である。

速度を上げずに走っている限り、IS500は野生を内に秘めてジェントルに振る舞う。V型8気筒らしい鼓動をかすかに響かせながら豊かなトルクに身を委ねてのクルージングは、それはそれで心地良い。乗り心地も硬くないどころかしなやか。試乗の拠点となったワイナリーの周辺は、舗装の荒れているところも少なくなかったが、そんな場面もまったく苦にすることはなかった。

しかしながら、このクルマに乗っていて、ずっとそんな風におとなしく走っているのは不可能だ。突き動かされるようにアクセレレーターを踏み込むと、世界は一変する。

重奏的に響くエンジン・サウンドのボリュームが高まるのと同時に豊潤なトルクの波が押し寄せ、力強い加速が始まる。音質が澄んだハイトーンに変わり、デジタル表示の回転計の針が吸い込まれるようにトップエンドまで駆け上がると瞬時の変速で次のギアへ。再びエンジンは快音を響かせ、見る見る速度が上昇していく。もうアクセレレーターを戻さなきゃと理性は思っているのに、なかなか右足を緩められないのだ。

そんな中でもサスペンションは変わらずよく動いて、確かな接地感を保ち続ける。減速してフロントが沈み込み、ステアリングを切り込むに従ってロールが深まっていくという一連の動きが一筆書きのようにスムーズで、挙動の先読みがしやすい。V型6気筒3.5リッターエンジンを積むIS350に対して車重は60kg増となるが、その影響はほとんど感じさせない。おそらくエンジンマウントなども相当入念にチューニングされているに違いない。

敢えて言えば、ステアリング・フィールはやや甘めだし、ブレーキのタッチも剛性感は今ひとつ。けれど、それが許せてしまったのは、このクルマのアナログ的なコンセプトに、案外しっくり来ていたからだろう。

助手席での至極快適な時間

そんな風に走りを楽しんだ翌日、サンタバーバラからトーランスまでの約100マイルを、今度はこのIS500の助手席で移動することになった。渋滞含めて約3時間のドライブは、至極快適なものだった。これがIS Fだったら、おそらくそうは行かなかったに違いない。まさにFスポーツ・パフォーマンスの価値、しかと実感できたのだった。

こういうクルマの発売を、そして日本導入を決断してくれたことには、もう感謝しかない。冒頭に記した通り、500台の特別仕様車は売れてしまったが、今冬以降、通常モデルの販売についてのアナウンスがあるということだ。

文=島下泰久 写真=レクサス・インターナショナル



■レクサスIS 500Fスポーツ・パフォーマンス
駆動方式 エンジン・フロント縦置き後輪駆動  
全長×全幅×全高 4760×1840×1435mm  
ホイールベース 2800mm  
車両重量 1720kg  
エンジン形式 直噴+ポート噴射自然吸気V8DOHC  
排気量 4968cc  
ボア×ストローク 94.0×84.5mm  
最高出力 481ps/7100rpm  
最大トルク 535Nm/4800rpm  
トランスミッション 8段AT  
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル  
サスペンション(後) マルチリンク/コイル  
ブレーキ 通気冷却式ディスク  
タイヤ (前)235/40ZR19、(後)265/35ZR19  
車両本体価格(税込み) 900万円(ファースト・エディション)  

(ENGINE2022年11月号)

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