DRSもボタンで操作できるエンジンを担当する顔見知りの開発エンジニアは、「今回はエアロダイナミクスとシャシーの部門が予算のほとんどを使ってしまったから、私のところにはほとんどお金が回ってこなかった」とボヤいていたけれど、確かに空力の進化ぶりに比べるとエンジンにはあまり手が入れられていないようだ。自然吸気4リッター・フラット6の最高出力は525psで、先代RSより5ps、現行GT3より15ps増強されただけだし、最大トルクに至っては465Nmで、先代RSや現行GT3より5Nm細くなっている。先のエンジニア氏によれば、これは空力やシャシーの特性に合わせてチューニングした結果であるという。では、シャシーはどうかといえば、フロントのダブルウィッシュボーン・サスペンションのリア・アームを空力効率に優れた形状のものにするなどして、最高速度の296km/hでの走行時にフロント・アクスルだけで約40kgのダウンフォースを増やしているというのも驚きだが、そのほか、全体のダウンフォースの大幅増加を踏まえ、前後アクスル間のダウンフォースのバランスを維持するために徹底的に手が入れられているのだとか。

そして極めつけは、ノーマル、スポーツ、トラックの3つのドライビング・モードのうち、トラック・モードを選んだ時には、なんとフロントとリアのダンパーの伸び側と縮み側の減衰力を、ステアリング・ホイールに取り付けられたロータリースイッチを使ってすべて個別に調整できるようになっているほか、リアのディファレンシャルの効き強さも加速時と減速時で別々に調整できることだ。さらに先のDRSもボタンひとつでドライバーの意思によって操作できるとなれば、もはやレーシングカーそのものか、それ以上といっても過言ではあるまい。ボディにも触れておけば、ボンネット、フロント・フェンダー、ドア、ルーフがすべてカーボン製で、標準装備のフルバケット・シートにもカーボンが奢られる。リア・ウイングもスワンネックのステイも含めてすべてカーボン製。その結果、これだけの空力パーツを付加しながらも車重は1450kgに抑えられている。◆1周5.9kmの超高速グランプリ・サーキットで、新型911GT3RSはどんな振る舞いを見せたのか。後篇に続く!▶「ポルシェのおすすめ記事」をもっと見る文=村上政(ENGINE編集部)(ENGINEWEBオリジナル)
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