2022.11.22

CARS

世界が注目! 宇宙服を着ない有人与圧「月面探査車」開発に協力する、ホンダの驚きの技術力とは

トヨタがJAXAと共同開発を進める月面探査車、愛称「ルナクルーザー」。

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月面への輸送にも強み

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トヨタは独自に水素燃料電池の技術を持っているが、JAXAとの共同研究でいわば“別トラック”を走っていたのが本田技術研究所の水素燃料電池による月面エネルギー供給システム。2021年の発表では、「酸素や水素、電気を有人拠点や移動用車両に供給するための循環型再生エネルギーシステム」を提供する考えだ。循環型再生エネルギーシステムは、水を電気分解して酸素と水素を作り出す「高圧水電解システム」と、酸素と水素から電気と水を発生させる「燃料電池システム」から構成される。なにしろ月面に化石燃料はなく、資源として利用できるのは水(当初は地球から運搬)と昼間の太陽光のみだ。太陽光発電による電力で水を分解して水素と酸素の形で蓄え、太陽光を利用できないときは酸素と水素から電気と水を発生させてまた水を得る。アポロ計画のミッションを大幅に超える長期の月面滞在を実現するには、こうしたエネルギー循環の仕組みが必須だ。

ホンダの持つ高圧水電解システムは水素を圧縮するためのコンプレッサーが不要で、コンパクトかつ軽量なのが特徴だ。月面でローバーが活躍するには、地球から月面への宇宙輸送が大きな課題となる。ホンダの持つコンパクト化、軽量化技術は輸送面で大きな恩恵だ。また開発スピードという面でも、すでに地上での運用実績がある技術を取り込むことで、2024年以降にはエンジニアリング・モデル開発をスタートするという有人与圧ローバーの早期実現に寄与できる。

ホンダはロケット開発への参入も表明している。水素を製造しているのだから液体水素燃料のロケットを開発するのかとも思えるが、ことは単純ではない。ホンダはロケット事業関連でエンジン燃焼試験の様子を公開したものの、モノクロ映像のため燃焼炎の色から推進剤の種類を推測できない。液体水素は民間の小型ロケットのエンジンとして採用されている例が少なく、開発期間が読みにくい。競合がひしめく世界の小型ロケット業界で、ホンダが複雑で開発時間のかかる水素燃料ロケットを採用するのか、手堅く炭化水素燃料を採用するのか、まだ先読みはできない状況だ。

文=秋山文野(サイエンスライター) 写真提供=トヨタ自動車、本田技研工業

(ENGINE 2022年12月号)

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