恐るべき高回転エンジン!最高回転数が実に9500rpmにもなるこのV12ユニットが、ドライバーの頭のすぐ後ろに位置しているのだから、その刺激の強さは推して知るべし。強烈なビートを刻み続けるマラネロ製エンジンは、6500rpmを越えたあたりから耳の奥がむずがゆくなるようなメカニカルノイズを奏で始めると、8000rpmでは絶叫に近いサウンドを周囲にまき散らし、聞く者の魂と全身を激しく揺さぶる。そしてドライバーを深い陶酔の世界へと誘うのである。さらに驚くべきことは、この超高回転エンジンが恐ろしく扱い易い点にある。6・5リッターの大排気量なのだから低回転域でも十分なトルクを生み出すのは当然かもしれないが、そこからパワーの谷や山を一切感じさせないまま、最高出力を生み出す9250rpm(!)まで一直線に駆け上がっていくのだ。しかもレスポンスはカミソリのように鋭いから、いつでも欲しいだけのパワーが手に入る。高回転域では絶叫マシンに変貌するエンジン・サウンドにしても、市街地で用いる回転域では低く抑えられていて、決してうるさくはない。しかも、タイヤから伝わるショックにしても角がきれいに丸められていて、乗り心地は意外にも快適。おかげで、気苦労は感じても、試乗後も肉体的な疲労はまったくといっていいほど残らなかった。今回はゾルダー・サーキットでも厳しい制限付き(最高速度70km/h!)ながら試乗の機会を得た。ここでは、フロントのロールをまったく感じさせることなく、まるで横っ飛びするかのようなコーナリングを披露。これはかつてのフェラーリにありがちなクセだが、デイトナSP3はリアのスタビリティがすこぶる高く、乗り手に不安を与えない。この点でもデイトナSP3は現代のスポーツカーに相応しい存在といえるだろう。▶「フェラーリのおすすめ記事」をもっと見る文=大谷達也 写真=フェラーリ
■フェラーリ・デイトナSP3駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン後輪駆動全長×全幅×全高 4686×2050×1142mmホイールベース 2651mmトレッド(前/後) 1692/1631mm車両乾燥重量 1485kgエンジン形式 水冷V型12気筒DOHC排気量 6496cc最高出力 840ps/9250rpm最大トルク 71.1kgm/7250rpmトランスミッション 7段デュアルクラッチ式自動MTサスペンション(前) ダブルウィッシュボーン+コイルサスペンション(後) マルチリンク+コイルブレーキ(前後) 炭素繊維強化樹脂通気冷却式ディスクタイヤ(前/後) 265/30ZR20/345/30ZR21車両本体価格 200万ユーロ(約2億8500万円)(ENGINE2022年12月号)
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