2022.12.10

LIFESTYLE

幅はジムニーと同じたったの1.4m! 売れ残っていた都心の旗竿地に建つ超狭小住宅の「狭さをまったく感じない」アイディアとは

細長い旗竿敷地で、周りをぐるりと囲まれた邸宅。

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他人とも過ごす家

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普通ならば低層階をシェアスペースにせずワンルーム賃貸にするが、吉田さん達はあえて他人を自分たちの生活に取り込むようにした。以前、2人が近くのマンションで暮らしていた際、大家さんが同じ建物に住んでいて日常的な会話があり、地方出身の2人は近所付き合いの有難さが身に染みていたのだ。シェアオフィスの住人たちは、吉田さんが夕食の支度をする忙しい時に、小さかったお子さんと遊んでくれたりもした。だから「子供は、シェアオフィスの皆さんと一緒に育てたようなものです。成長過程で、両親以外の大人に接するのはとても大事」と話す。建物に入ってすぐの玄関から、シェアオフィスの住人が見える構造になっているのも重要な設計ポイントだ。



さて、建物に入って驚いたのは、狭さを感じないうえ明るいこと。北東部の、屋上から地下まで貫くテラスが効いている。特にそれを感じるのが、天井高が4mある2階のリビングだ。とても4畳ほどとは思えない広がりを感じる空間だ。容積率には余裕があるので屋内にすることも可能だったが、1畳少々の空間を屋内にするより、テラスにして積極的に外部光を採り入れた方が、遥かに心地よいと判断したのである。

3階の寝室と水回りは閉ざされたスペースだが、天窓のお陰で廊下はことさら明るい。朝日を浴びながら顔を洗えるよう、洗面所はこの少し広めの廊下に設けた。床は簀の子状で、下の階にまで光を届けている。屋上への階段がバスルームから伸びているのは、狭小住宅ならでは。そして屋上庭園に出ると、家のサイズをすっかり忘れてしまうものだ。



それでも家の中心は2階のキッチンである。住居玄関から階段を上がってくると、まずキッチンに突き当たる。小さな家だが、玄関で住居部の気配を感じることはない。人を招くことが多いという吉田家。中央のキッチンカウンターの周りに人が集まりやすいよう、太い鉄骨製の窓枠梁やカーペット敷きの階段など、様々な場所に座れるように設計されている。料理や飲み物を用意する人が来客に背を向けずに済むうえ、距離が近くなる配慮も。客人が過ごすスペースは吹き抜けなので、閉塞感を感じることもない。その他、建築家の自邸ならではの工夫は幾つもある。



吉田邸で強く感じたのは、小さな家ではなく、楽しそうな家であること。敷地や家が広くなくても、設計次第で十分に豊かになる。この家のように、狭い敷地でも構わないので家を建てたくなるものだ。現在2人は、依頼を受けてクルマ2台の車庫だった土地に家を設計している。さすがに車庫はないそうだが、楽しく暮らせる家が完成するに違いない。

文=ジョー スズキ 写真=田村浩章



■建築家:吉田州一郎、1974年長崎県生まれ。慶応大学卒業後、建築系の事務所に。建築に関心を持ち大学で学び直し、早稲田大学大学院を修了。設計建築事務所、メーカーでの施設設計を経て独立。吉田あい、1980年広島県生まれ大阪育ち。早稲田大学大学院を修了。デザイン性の高い設計事務所、社会性の高い不動産会社を経て独立。二人はゼミの同窓で、この家を手掛けた後に共同でアキチアーキテクツを設立。

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(ENGINE2022年12月号)

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