2023.02.26

CARS

建築家が所有する、世界にたった500台しかないアルファ・ロメオ・ジュリア・スプリントGTA! 古いクルマと古い建築の楽しみ方の意外な共通点とは

1963年に登場した、2ドア4座クーペのジュリア・スプリントGTを軽量化させたレース用モデル。

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見えないデザイン

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「形は同じなのに、素材を変えて軽くしている。そうした見えないところがデザインされているのを気に入っています」

このGTAは、かつて米国のペブルビーチにあったもの。26年前にとある会報誌に載った小さな写真を見て気になり手に入れた。フランスのオーナーが最初に10年ほど乗った後にアメリカを経由し、藤岡さんのもとに。リア・ウインドウには「ル・マン66」のステッカーが貼ってある。最初のオーナーはこのクルマで、「フォードVSフェラーリ」の伝説が生まれたあのレースを観に行ったのでは。そんな想像をするのも、藤岡さんの楽しみ方だ。

ちなみにGTAでレースに参戦する人はバンパーを外してしまう人が多いが、あえてオリジナルの姿を維持しているのも藤岡流。古い建物でも、オリジナルの状態をできるだけ維持しようとする人と、手を入れて現代的に改装する人など、オーナーそれぞれである。



「魅力的な建築が生まれるには、大胆なコンセプトだけでなく細やかなディテールが必要」

と語る藤岡さん。それは、クルマにも通じるそうだ。自身が所有するクルマ以外で惹かれるデザインとして挙げるのは、チシタリア202SC(1947年)。フェンダーとボディを一つに統合させた世界で最初のクルマで、MoMAで永久収蔵されるほど、カー・デザインの流れを変えた一台だ。そうした蘊蓄を抜きにしても、非常に美しいボディ・デザインをしている。しかし藤岡さんはボディだけでなく、「インパネのディテールが美しい」と指摘する。なるほど、大胆なコンセプトと細やかなディテールだ。長くこだわりのあるカーライフから得られた見識が、藤岡新さんの本業である建築を、より豊かで奥深いものにしていると感じた。

文=ジョー スズキ 写真=阿部昌也



■藤岡新:建築家 1959年京都市生まれ。東海大学大学院を修了後、100年以上の歴史を持ち、後楽園スタジアムなどを手掛けた古橋建築事務所に勤務。退所後、自身の建築事務所PLATS DESIGNを主宰。住宅、別荘、店舗の設計を手掛ける。表参道の中華料理店「希須林」はよく知られた仕事。また、名建築のリノベーションを請け負う仕事も長く、吉村順三が50年近く前に設計した別荘の改装。旧オーナーから新オーナーへの橋渡しも行った。絨毯は長年使用されていたものを糸から染め直し、素材の経年変化を、歳月を重ねた建築とマッチさせている。クルマ以外に、自転車、バイクなどの2輪も数多く所有。

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雑誌『エンジン』の大人気企画「マイカー&マイハウス」の取材・コーディネートを担当しているデザイン・プロデューサーのジョースズキさんのYouTubeチャンネル「東京上手」がスタート。建築、インテリア、アートをはじめ、地方の工房や名跡、刺激的な新しい施設や展覧会など、ライフスタイルを豊にする新感覚の映像リポート。素敵な音楽と美しい映像で見るちょっとプレミアムなルームツアーは必見の価値あり。ぜひチャンネル登録を!


(ENGINE2023年1月号)
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