2023.01.12

CARS

「32の240乗」って一体いくつ? 天文学的なパターンで色が替えられるBMWの次世代EVコンセプト

BMWが米ラスベガスで開幕したデジタル関連見本市の「CES2023」で、コンセプト・モデルの「iヴィジョン・ディー(Dee)」を発表した。車名のDeeは「デジタル・エモーショナル・エクスペリエンス」の略称だ。

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21世紀の「ノイエ・クラッセ」

BMWは2025年以降、次世代EV群を順次投入する計画で、それらは1960年代にBMWが自動車で躍進するきっかけとなったラインナップにならって「ノイエ・クラッセ」(新たなクラス)と呼ばれる。この電動化時代のノイエ・クラッセに使用されるデジタル技術を提示するのが今回のヴィジョンDeeである。



BMWデザインも進化

スペックは公開されていないが、ステージに登場したのはセダン・タイプで、ボディ・サイズはそれほど大きくない。フロントまわりはヘッドライトを含む全体でキドニー・グリルを表現した新しい意匠を採用。サイド・ウインドウにはホフマイスターズキンクを備えるなど、BMWの伝統的デザイン要素が盛り込まれている。さしずめ3シリーズの未来形といった趣だ。ただし、このコンセプト・カーは今後登場する具体的な車種の雛型ではなく、あくまでもテクノロジーのショーケースだという。

エクステリアではデザインもさることながら、フルカラーになった「Eインク」技術が大きな見せ場となる。2022年のCESではモノトーンで色調が変化するEインクを備えた「iX」が出展されたが、今回は32色が使用できるようになった。また、ボディ表面を240の区画に分割し、異なる色を組み合わせたパターンを表示することができるので、その組み合わせは天文学的な数字になる。

また、ヘッドライトとグリルが一体化したフロント・マスクやサイド・ウインドウにはアイコンや画像を表示することも可能だ。デジタル技術によるさまざまな視覚的表現でフィジカルなコミュニケーションを図るこの手法は「フィジタル」と呼称されている。



情報はヘッドアップ・ディスプレイに表示

インテリアでは進化したヘッドアップ・ディスプレイがトピック。フロント・ウインドウの幅いっぱいに情報を表示し、ダッシュボードからメーターやディスプレイを一切排除している。そのコンテンツはアナログ的なもの、運転関連情報、通信システムの内容、拡張現実の投影、仮想世界へのアクセスと5段階が設定され、ドライバーがチョイスできる。

表示内容は必要なときのみ操作部をダッシュボードに投影するシャイテック・センサーを用いた「ミックスト・リアリティ・スライダー」や、使用時のみ反応するステアリング・ホイールのタッチ・ポイントによって切り替えることができる。こうしたデバイスもフィジタル技術の一環だ。

ヘッドアップ・ディスプレイについては新世代ノイエ・クラッセで量産化することを明言しており、その他の技術も順次実用化されるだろう。しかし、BMWにはデジタルなハイテクだけでなく、アナログな「駆けぬける歓び」をいつまでも標準装備にしていて欲しいものだ。



文=関 耕一郎

(ENGINE WEBオリジナル)

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