2023.04.16

CARS

日本では希少なフィアット・ドブロにシトロエン・サクソから乗り換えた! ラリー好きのオーナーに起こった人生の転機とは?

フィアット・ドブロとオーナーの若林さん。

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きかけは遅咲きのかるたデビュー

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Y乗り同士の縁でかるたに出会ったのはこの頃だ。幼い時にやっていたからルールくらいは知っていたが、漫画『ちはやふる』を読んで競技かるたのことを知る。小学校入学前からはじめる子供もいるこの世界で、40歳のデビューは相当な遅咲きだったが、同じタイミングでスタートした仲間たちと切磋琢磨するうち、完全にのめり込んでしまった。

さらに所属していたところの会長から、場所を借りて練習会を主催してもらえないか、という打診があり、若林さんは快諾。人や畳を運ぶためのトランスポーターが必要になる。元気のいいクルマたちを乗り継いできたから、どうしても変速機だけはMTにこだわって探し、見つかったのが日本に数台あるかどうかのフィアット・ドブロだった。こうして会員たちの会場から駅までの送迎や、大会開催時のサポートカーとしてドブロは大活躍。ちょっと強引に助手席のヘッドレストまで使って端をひっかけないと無理だけど、畳はたくさん積めるし、もちろん人もしっかり7人乗せることができる。サクソを手放し、Yを親戚に預け、ドブロは若林さんと競技かるたのなくてはならない相棒となった。

競技かるたは剣道場や柔道場など畳のあるところだけでなく、公民館などで行うことも多いため、若林さんは必要に応じて畳をドブロで運んでいる。一度に10枚くらい載せることもよくあるそうだ。


「でもドブロ、最初は調子が悪くて、登坂車線も登れないくらい。え、こんなに走らないの? って(笑)」

Yやサクソ同様にしっかりと手を入れると、ドブロは見事に蘇った。とはいえ、ドブロはやはりどこまでいっても商用車ベースのいわば荷車である。きびきびと走って楽しかった小さく軽量なYやサクソのようには血が騒がないのでは? と尋ねると、どうやら今、彼の血が騒ぐのは競技かるたの方らしい。

「競技かるたは最初に百の和歌を憶えるという高いハードルはありますが、それをクリアさえすれば様々な戦術があって面白い。基本的には耳のいい若い人が有利ではあるんですが、様々な戦術があって、経験のある大人でも戦えます」

『ちはやふる』は広瀬すず主演で三部作の映画にもなったが、なんと若林さん、この完結篇に出演している。袴をはき、クライマックスの名人戦における審判役だったそうだ。エキストラではあるが、ちゃんとエンド・クレジットに名前も入った。

乗って遊べるクルマから、クルマで遊ぶことに見事スイッチした若林さん。ただし最近、ドブロとのペアとして、ケータハム・スーパーセブンもいいなぁ、と考えたりもするのだとか。運転と競技かるたの、どちらもが彼の人生を豊かにしている。

文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=岡村智明 協力=ビーチカフェ・くつろぎ/カークラフト

両側のスライド・ドアと観音開きのリア・ドアを持つ若林さんのドブロ。名古屋の並行輸入に強い専門店にあった中古車を購入。その姿形のせいか、2代目ルノー・カングーに間違われることも多いのだとか。


(ENGINE2023年5月号)
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