2023.05.17

CARS

もう2度とつくれないハイパーカー、アストン・マーティン・ヴァルキリーに試乗! 自然吸気コスワースV12のレヴリミットは驚異の11100回転!!

アストン・マーティン・ヴァルキリー

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儀式が喜びに変わる

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ところが、運転そのものは拍子抜けするほど簡単。まず、ギアボックスはいわゆるセミATタイプなので、パドルで1速を選んだら、あとはアクセレレーターを踏み込むだけで発進可能。しかも、発進時は決まってエンジンではなくモーターで駆動されるので、動き出しは思いがけないほど滑らか。車速がおよそ20km/hを超えると動力源がモーターからエンジンに切り替わり、この時はさすがに軽いショックを感じるものの、これもさほど激しくはない。

ちなみに発進時にモーターを用いるのは、クラッチを小径化して小型軽量に仕上げることが最大の目的。こんな発想で開発されたロードカーが、かつてあっただろうか? この事実を知れば、前述した「エンジン始動後も1分間は発進できない」儀式も喜びに変わるだろう。



乗り心地も、意外なほど快適だった。もちろん、サスペンションはそれなりに硬いけれど、十分なストロークが確保されているうえに、ダンパーが良質でボディ剛性が驚異的に高いこともあって、いやなショックや振動がまるで伝わってこないのだ。

もっとも、それはあくまでも、ゆっくりと流して走ったときのハナシ。今回はナンバー取得前だったので、富士スピードウェイのマルチパーパス・ドライビングコースというミニコースの一種で試乗したのだが、その短いストレートでもアクセレレーターを70%程度まで踏み込めば自然吸気式のコスワース製V12エンジンは瞬時に7000rpmに達し、精緻なメカニズムが高速で運動している鼓動を伝え始める。それだけでも私は深い陶酔感を味わったけれど、11100rpmに設定されたレヴリミットまで回したとき、このエンジンがどんな感動をもたらすかは、想像するしかなかった。



ちなみに、今回の試乗はもっともマイルドなアーバン・モードで行ったが、ドライビングモードとしてはこれ以外にスポーツとトラックが用意されていて、トラック・モードを選べばサーキットでF1に匹敵するラップタイムを記録できるそうだ。

2度と造れない

ローレンス・ストロールを会長に迎えたアストン・マーティンは、昨年からワークス・チームとしてF1グランプリに参戦。2年目の今季は表彰台の常連となりコンストラクターズ選手権で2番手(第3戦終了時)につけている。さらにロードカーではヴァルキリーに続きヴァルハラをリリースし、ミドシップ・スポーツのラインナップ強化を図っている。こうしたスポーツカー路線と伝統的なグランドツアラーが同社の2本柱となるのは間違いないだろう。

それでも、ヴァルキリーのようなハイパーカーは2度と造れないと、アストン・マーティンのスペシャル・セールスを司るサイモン・イングルフィールドは打ち明ける。

「このV12は1万rpm以上も回るのに、ユーロ6など各国の排ガス規制をクリアしています。その開発にどれだけの費用がかかったか、想像できますか? 今後、排ガス規制がさらに厳しくなれば、同じようなエンジンを開発するのは不可能です。つまり、最初にして最後のハイパーカーが、このヴァルキリーなのです」

ちなみに、当初は自社開発のV6エンジン+ハイブリッドのパワートレインを搭載すると発表していたミドシップ・スポーツカーのヴァルハラは、エンジンをAMG製V8にスイッチして2024年前半にデリバリーを開始することを発表済み。続いてミドシップ化される次期型ヴァンキッシュもこのパワートレインを搭載すると予想される。さらに2025年にはブランド初のEVをリリースし、その翌年には全モデルに電動パワートレインを設定。続いて2030年までに主要モデルであるGTスポーツカーと、SUVの全車をEVとする計画だ。

文=大谷達也 写真=アストン・マーティン



(ENGINE2023年6月号)

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