シームレスに豹変する村上 ふつうに走っている分には、大人しくなったと思える新型911だけれど、ひとたびアクセレレーターを床まで踏み込んだ時の豹変ぶりは、まるでジキル博士とハイド氏みたいだ。とにかく速い。
PDK仕様のデータだけれど、0-100km/h加速4.2秒は、自然吸気3.4リッター時代よりコンマ2秒速くなっている。カナリア諸島のテネリフェ島で開かれた国際試乗会では公道を閉鎖した山道で思い切り走らせてくれたのだけれど、その時の緊張感とアドレナリンの噴出感たるや、これまで自分がGT系を除く911で経験したなかで最大のものだった。
エンジンがパワー・アップしたのに伴いリアタイヤが0.5インチ拡幅されてグリップ力が増したのがけっこう効いていると思う。本気で限界まで攻めようと思ったら、それこそレーシング・ドライバー並みの腕が必要だと痛感させられるくらいダイナミック性能が高かった。齋藤 日本の山道を今回、存分に走らせることができて、確かに速いと思ったよ。これならSが欲しいとは思わない。で、さっきジキルとハイドという話が出たけれど、ジキルとハイドの間がさ、シームレスなんだよね。いつ変わったのかわからない。気づくとハイドになっている。ほんと山道で興じていて、溜飲の下がる思いがした。

ステアリングホイールに付いたロータリー式の走行モード切り替えスイッチでS(スポーツ)を選んで、センター・コンソール上の別のスイッチでサスペンションのダンピング・プログラムは標準を選んで走ると、少々路面が荒れていようがうねっていようがおかまいなし、ボディはグイングイン上下に揺れても4輪は路面を捉えて離さず、驚くほど高いアベレージ・スピードでコーナーの連続を飲み込んでいく。
もう万能感のかたまりのようだった。現実の公道というものがどういうものか、そこで速く走るためには脚はどういうセッティングでなければならないかをポルシェほど知り尽くしているメーカーは他にない、ということを改めて思い知らされたよ。
でね、新型911カレラのそういう凄さを思い知ったら、これがまるで小型実用車のように混雑した街のなかを走れて、まるで高級サルーンのように高速道路を快適に長距離移動できることを思い出して、911の凄みを痛感した。そのせいだと思うんだよね、今回は撮影の時に、後席とか荷室をまじまじと見た。この長さのボディで4座で荷物も積めて、それであのダイナミック性能とジキル博士の品の良さでしょ。敵なしだよ。
村上 まったくその通りで、今度の911はよりダイナミック性能を上げながら、驚くほど使い勝手のいい、よく躾られた乗り物になっている。「裾野は広く、ピークは高くなった」と国際試乗会のリポートに書いたのは、そういう意味だ。あえて欠点らしきものを挙げるとすれば、アクセレレーターを戻した時のエンジン・ブレーキの掛かり方が、自然吸気エンジンに較べて少し弱くなり、速度をコントロールする自在感が薄くなったこと。
それと、アクセレレーターを踏んだ時の背後から襲いかかってくるようなエンジン・サウンドが全体的にソフトになったこと。よく耳を澄ますと、ターボチャージャーの作動音も聞こえてくる。むろん、これらは新型911の価値を貶めるものではない。でも、かつてのまるで求道者のような孤高の存在だった911のことを思うと、ずいぶん遠くへ来たものだという感じを拭い去ることができないのも、正直なところなんだよね。齋藤 だめだよ、遠い目をしてオジさん発言に帰着しちゃ。最新型も孤高の存在ですよ、本当に。
話す人=齋藤浩之+村上 政(ENGINE編集長)
■ポルシェ911カレラ・カブリオレ 駆動方式 エンジン・リア縦置き後輪駆動全長×全幅×全高 4499×1810×1294mmホイールベース 2450mmトレッド(前) 1541mmトレッド(後) 1518mm車両重量 1450kg(車検証値)エンジン形式 水平対向6気筒DOHC24V直噴ツインターボ排気量 2981ccボア×ストローク 91.0×76.4mm最高出力 370ps/6500rpm最大トルク 45.9kgm/1700-5000rpmトランスミッション 7段MTサスペンション(前) ストラットサスペンション(後) マルチリンクブレーキ(前後) 通気冷却ディスクタイヤ(前) 235/40ZR19タイヤ(後) 295/35ZR19車両価格(消費税込み) 1244万1000円(テスト車1400万9000円)
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(ENGINE2016年5月号)
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