2023.12.18

CARS

9000まで軽々と駆け上がる4.5リッターV8の回転の速さが、ドライバーの快楽中枢を直撃する! 458スパイダーはどんなフェラーリだったのか?【『エンジン』蔵出しシリーズ/フェラーリ篇】

458イタリアのリトラクタブル・ハードトップ・モデル、458スパイダーにイタリアで試乗!

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雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回取り上げるのは、2011年9月、フランクフルトの自動車ショウで正式にデビューしたフェラーリ458イタリアの、リトラクタブル・ハードトップ・モデルである458スパイダーだ。イタリアのアペニン山脈周辺でおこなわれた国際試乗会。そのテストに臨んだエンジン元編集長の鈴木正文氏による2011年12月号に掲載されたリポートをお送りする。

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レッジョ・エミリアを走る

フェラーリが用意したテスト・ドライブのルートは、イタリア半島をブーツに見立てると、その膝下あたりを東西にまたぐエミリオ・ロマーニャ州の、起伏に富んだ山がちの一帯を中心に組み立てられていた。出撃拠点となったレッジョ・エミリアは、エンツォの生地、モデナにほど近く、ルートにはレーシング・ドライバー時代のかれが挑んだヒル・クライム・コースも組み込まれていた。



アペニン山脈のいくつもの山を越えて半島西部のビーチに出て引き返すコースはトータルで330kmあまり。屈曲したアウトストラーダもふくめたそのほとんどの区間で、思う存分、全開にできるところが多々あった。それに、2、3、4、3、2、1、2、3、2と、連続的にパドルでシフトして走った距離だけでも200km近くあっただろうか。オープンでもクローズドでも、458スパイダーは、強度の刺激とエレガントなまでの洗練を同時に堪能させ、ドライバーを倦ませることがなかった。年内には世界に先駆けて日本での引き渡しがはじまる見込みで、価格は3060万円と、クーペよりも230万円高になる。その値打ちはある、というのが、僕の見立てだ。

精悍ながらエレガントなクローズド・ルック

アルミのルーフ

458スパイダーは、アルミ製のルーフが青天井になる、ということ以外は、2年前にデビューした458イタリアとおなじ、ともいえるが、そうともいいきれないところもある。おなじなのは、比出力127馬力、許容回転数9000rpmという純レーシング・ユニットさながらの4.5リッター、570馬力(@9000rpm)、55.1kgm(@6000rpm)の直噴V8と、7段「F1」デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)から成るパワー・トレインが第1。そして、フロントがダブル・ウィッシュボーン、リアがマルチ・リンクというサスペンションに、電子制御される第2世代の磁性流体ダンパーを組み込み、電子制御式ディファレンシャルの「E-ディフ」と、緻密なトラクション制御によって定評のある「F1トラック」とから成るシャシーを有するというのが第2だ。しかし、このスパイダーの登場にともない、クーペ(458イタリア)については、磁性流体ダンパーのソフトウェアがあらためられ、さらに、ステアリング・パッド上で走行セッティングを選ぶマネッティーノ・ボタンでレース・モードを実行すると、DCTとF1トラックのレスポンスがさらに上がる、という変更が施された。サーキット走行もたびたびするという硬派走り屋が多いというクーペ・オウナー向けの変更で、既存のオウナーも希望すれば、おなじプログラムへの書き換えができるという。スパイダーの登場で、クーペを先鋭的な「走り」のクルマに仕立て、差別化をはかったわけだ。



おなじでないのは、V8のエア・インレットがエンジン前方から後方に移され、排気系もオープン時にエキサイティングなサウンドになるよう手直しされたこと、そしてアイドリング・ストップ機構や燃料ポンプ、コンプレッサーなどの制御の緻密化などからなる「HELE」(ハイ・エモーション、ロー・エミッション)パッケージが日本仕様で標準化されたことがある。このHELEにより欧州複合サイクルにおけるCO2排出量は275g/kmと、300gの大台を割り込んだ。

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