2023.12.18

CARS

9000まで軽々と駆け上がる4.5リッターV8の回転の速さが、ドライバーの快楽中枢を直撃する! 458スパイダーはどんなフェラーリだったのか?【『エンジン』蔵出しシリーズ/フェラーリ篇】

458イタリアのリトラクタブル・ハードトップ・モデル、458スパイダーにイタリアで試乗!

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Bピラーのエレガンス

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458スパイダーの最大の見所のひとつは、その魅力的なスタイリングだ。低いノーズの先端に置かれた横長のエア・インテーク、ドア後端部から一気に盛り上がる豊満なリアのフェンダー・ラインなど、60年代後半のレーシング・スポーツ、P4を想わせる基本シェイプは、クーペとなんら変わらない。しかし、リトラクタブル・ハードトップ化によって前後2分割式となったルーフが、クーペのリア・クオーター・ウィンドウぶん短くなったことにより、ウェスト・ライン上部のボディが一段とコンパクトになって安定感が増した。ロールオーバー・バーも兼ねる3角形のBピラーはルーフ・ラインと連続し、横から見ると、リア・エンドまで続くエレガントなファストバック形状をつくっている。それが短いルーフとあいまって、シャープなシルエットをつくっている。切れ味がよい上に、うねる感情のようなダイナミズムがある。すばらしいスタイリングだと思った。

マラネロの風洞での実験のおかげで風仕舞いは非常によく、200km/h超の巡航でも髪がこんがらかるようなことはない。走行中の開閉はできない。最高速はクーペより5km/h低い320km/hだが、50kg+の車重にもかかわらず、0-100km/hをクーペとおなじ3.4秒で駆け抜ける。最速のオープンだ。


2分割式ルーフは回転しながら、たった14秒でエンジン・ルーム上部に収まる。ルーフじたいが小さいので、収納スペースも100リッターとコンパクトで、開閉機構を含む重量は、ソフト・トップ比25kg軽くできたという。結果、シート背後にゴルフ・バッグ1個分のスペースができたことも自慢だ。

剛性など

シルの強化によって対策したとはいえ、オープン・トップ化によって、ボディ剛性はクーペ比35%の低下(ねじり剛性)を余儀なくされた。しかし、乗ってみると、なるほどクーペほどの頑強なまでの剛性は感じないものの、オープン・ロードでのハード・コーナリングぐらいでは、なんら実害を感じなかった。コーナーの入り口から脱出にいたるまで、いっさいのアンダーステアを感じさせないハンドリングは見事の一言に尽きる。相当の悪路も走ったが、ボディの軋みなどは体感できなかったし、乗り心地はあいかわらず、スーパースポーツとは思えないほどのしなやかさを示す。車重はクーペより50kg重い1430kgである。



とはいえ、ルーフを下げれば重心がクーペより下がっていることもあり、コーナー脱出時のトラクションのかかりかたなど、かえってクーペより粘っこいかもしれない、とすら感じた。いずれにせよ、その強烈なトラクションと、オープンならではの、飛び去っていく風と風景、そして4000rpmぐらいから上で炸裂するエキゾースト・ノートなど、すべてが近い。それがドライブ・フィール上の速さを加速させる。とりわけ、9000まで一気呵成に軽々と駆け上がっていく4.5リッター・ユニットの回転の速さと、心臓に早鐘を打たせる怒濤のエキゾースト・ノートの高まりは、ドライバーの鼓膜を通して脳天の快楽中枢を直撃する。

光や風と戯れる458スパイダー的ドライビング・ハイは、無目的な生の衝動そのものとしての遊びにドライバーを惚けさせる。「我れ遊ぶ、ゆえに我れあり」とデカルトはいわなかったが、このフェラーリに乗っていると、人間存在の真実はむしろこっち側にある、と思いたくなる。

文=鈴木正文(ENGINE編集部) 写真=フェラーリS.p.A

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(ENGINE2011年12月号)

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