2012年の年初、ついに上陸したフェラーリFFの試乗記。
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いままでにない4WDスズキ エンジンはV12なわけだけれど、これは599用の進化型?齋藤 そうです。ボアを少し拡げて排気量が6.3リッターになっています。それとカリフォルニア、458イタリアに続いて燃料供給が直噴式になっています。8000rpmで660psを出し、最大トルクは69.6kgmに達します。常用回転上限は8200rpmです。V10時代のF1用に1万9000rpmが可能な直噴システムの開発に成功していただけのことはあります。
スズキ メインの変速機は?齋藤 V12エンジンでは世界初の例となるツイン・クラッチ式の7段型トランスアクスルが投入されています。トルクチューブを使わないで、エンジンとはオープン・プロペラ・シャフトで繋がれています。スズキ こともなげに最新のテクノロジーを一挙に投入している。フェラーリの技術力の凄さを感じるね。考え方もオリジナルだ。1980年代のアウディ・クワトロに始まる高速4WDの流れに照らしても、どれとも違う。ポルシェや日産とも違う。齋藤 4WD化による重量増はライバル比で半分だそうです。もちろん、そのおかげで、前後の重量配分もフェラーリの好みどおり、リアにバイアスのかかったものになっています。47対53かな。日本の車検証重量で見ても、48対52を保っています。スズキ じつにスマートだ。村上 まるでコロンブスの卵。見せられて初めて、あっ、その手があったかと思う。完全なフロント・ミドシップ以外では実現不可能な機構だ。スズキ 既成のものに囚われていないよね。まさに天才的だな。齋藤 ルネッサンスの国ならではの発想だと思いました。村上 超高速安定性を確保するために4WD化するのが定石だったところへ、それとは全く違う発想の4WDを投入してきたわけだからね。齋藤 6リッター超の12気筒による完全フロント・ミドシップ、完全な4座、大きな荷室を考えると、4.9mという全長は奇跡的に短い。
スズキ しかも、それを可能にしたコーダ・トロンカ風のテール・エンドの処理は、空力的にも好ましいはずだ。最高速度が335km/hに達するクルマにして、リアのディフューザーを除くと、これみよがしな空力付加物がないのがその証でしょ。齋藤 リアの左右2個ずつのスリットから気流を出して、境界層の剥離をコントロールしていたりと、ここでも最先端。だてにF1からの技術転用を謳っていないと思います。評論を否定するデキのよさスズキ そういう自動車テクノロジーの最前線にあるクルマが、乗ってみたら、じつに素晴らしかった。村上 先月、ランボルギーニのアヴェンタドールとレクサスのLFAに乗って、どっちもすごく良いクルマだなと思ったんですが、FFに乗って仰天した。驚異的な洗練。先月の2台がかなり乱暴なものに思えてしまう。あの2台だって、そうとうに洗練されていたのに、フェラーリのFFは遥か上をいく。びっくりした。あの2台と同じ速度を、あっけなく穏やかな表情でこなしてしまう。齋藤 スピード感のなさが脅威。免許証がすぐになくなってしまいます。
村上 フェラーリってF430あたりからデキがめちゃくちゃ良くなったと思っているんですけど、やっぱり、エンツォ・フェラーリを作った経験がいかんなく発揮されているような気がしてならないんです。スズキ フェラーリはレーシング・テクノロジーの最前線にいる強みが本当に活かされている。開発が速い。それにしても、エンジンの魅力が抜群だね。ストレスなく8200rpmまで回り、適度にミュートされたサウンドが響く。大人しく走れば驚くほど静かで、ひとたび踏み込めば、電光石火の反応でパパパッとシフトダウンして、タメなしにダッシュする。村上 野蛮な荒々しさ一切なし。齋藤 もったいぶったところがないのに発揮される実力が図抜けている。スズキ 助走なしにハイジャンプするかのようなところがある。齋藤 それをスーツ姿でやる。運動着に着替えない。2t近い重さがあるとはとうてい思えない動き。村上 身のこなしが軽やか。乗り心地も素晴らしい。非の打ち所がない。スズキ FFは評論というものを否定するような高みに達している。ヴェイロン、GT-R、そして、FF。4WDの金字塔だね、FFは。話す人=鈴木正文+村上 政+齋藤浩之(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦■フェラーリFF駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動全長×全幅×全高 4907×1953×1379mmホイールベース 2990mmトレッド 前/後 1676/1660mm車両重量[車検証](乾燥) 1970kg(1790kg)エンジン形式 自然吸気直噴60度V型12気筒DOHC48バルブ総排気量 6262cc最高出力 660ps/8000rpm最大トルク 69.6kgm/6000rpm変速機 デュアル・クラッチ式7段変速機サスペンション形式 前 ダブルウィッシュボーン/コイルサスペンション形式 後 マルチリンク/コイルブレーキ 前後 通気冷却式ディスク(CCM3)タイヤ 前/後 245/35ZR20/295/35ZR20車両価格 3200万円(ENGINE2012年2月号)
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