2024.01.21

CARS

人生が楽しくなるのはどっちだ? 清水草一が買ったフェラーリ458イタリアか、西川淳が買ったランボルギーニ・アヴェンタドールLP700-4か!【『エンジン』蔵出しシリーズ/フェラーリ&ランボルギーニ篇】

清水草一が買ったフェラーリ458イタリアか、西川淳が買ったランボルギーニ・アヴェンタドールLP700-4か、人生が楽しくなるのはどっち?

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遂に真っ白な灰になった

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小沢 しかし清水さん、ここまで最新型って最近珍しいですよね。

清水 458に関しては、人生の最終目標だったから。いつかは絶対買おう、2000万円切ったら買おうと思ってたんだ。経済的になるべく無理のない範囲で。

小沢 十分無理ありますけど(笑)。



清水 ある程度買い時ってあるじゃないですか。中古フェラーリを買い支える人達は、1000万ちょっとがリミットだから、そこまでは早く落ちる。だから今買うのは絶対ソンだなって分かってはいたけど、今回はそういうのを超越してた。

西川 だから損得じゃないって。

清水 でも、結果的に凄く良かった。最近1000万円前後のスーパーカーしか買ってなくて、それって値落ちが凄く少なくて、維持費なんかも含めて年100万円で乗れちゃうんだよね。マークXぐらいの減価償却で乗れちゃうわけ。それは俺にとって、すっげぇぬるま湯だったんだよ。

西川 200万円の国産車買ったって、1年で100万下がるからね。

小沢 それで大乗フェラーリ教が維持出来ると思えば安いし。

「俺は458買ったことで、男として やること全部やったなと思ってんだ。 よくここまで来たなと」


清水 実際、凄いおトクで「おトクです」って繰り返し言ってきたけど、その感じがヤになってきて、重荷をまたもう1回しょってみたの。サラサラリーマン時代に348を買ったように。そしたら物凄くいい!

小沢 いわゆる1つの男気?

清水 自分の金銭的限界に挑戦したわけだけど、348の時に「一生乗ろう」と心底思えたのが、今回も同様にそう思えるわけ。無理なく買うと、結局1年ぐらいで次が欲しくなってしまう。限界までトライしてなかったからなんだよね。

小沢 お金の問題っていうより、自分の意識の問題であると。

清水 そう。やっぱチャレンジしないと真の満足度は得られないんだよ。

小沢 どんな満足度ですか。

清水 天まで届く達成感(笑)。

小沢 わかりやす~。

お気に入りのポイントは3つ。ガラス越しに見るV8は最高の眺め。直噴式4.5リッターV型8気筒DOHC32バルブの最高出力は570ps/9000rpm、最大トルクは55.1kgm/6000rpmを発揮する。


西川 僕にはまだないなぁ。次はパガーニ、マジで欲しい!

小沢 見事、俺のイメージ通りのフェラーリ・オーナーとランボ・オーナーですね。フェラーリは言わば正統的な耽美派で、クルマをじっくりなめ回すように愛するけど、ランボはどっちかっていうと叩き上げ系。自分の限界を突破するのが大好きで、ある意味クルマ版のロッキー・バルボア。バイタリティの塊なんですよ。

西川 それから僕が思うに世代もあるよね。清水さんって僕より少し上じゃないですか。兄貴ぐらいの世代で、L型エンジンとか磨いてたし、凄いクルマに乗りたい人達なの。だからミニ・カーとか嫌いでしょ? 

清水 うん。まったく興味無し。

西川 逆に僕らはすっごい好きで、僕は「クルマは乗ってナンボ」とも言うけど、「乗らんでもナンボ」というから。とにかく好きな事がいっぱいあり過ぎて、達成感を得るにはまだまだ難しいのかなと。

小沢 なんか両方うらやましいです。正直、今クルマでメチャクチャ欲しいのってないんですよ。特に速くてカッコイイ系は。



清水 俺は458買ったことで、男としてやること全部やったなと思ってんだ。よくここまで来たなという満足感ね。

小沢 真っ白な灰になった……というか、己のためですね。俺はエベレストに登ったぞ! みたいな。

清水 庶民としてありえない高みまで来たな、と(笑)。俺は子供が2人いて、普通の家庭生活もあるわけで。西川君みたいに全身スーパーカーにどっぷりの人とは違う。

西川 僕も扶養家族はいるけどね。でも清水さんは凄いと思う。

清水 フリーライターで458を買うって、どんだけ大変かわかるでしょ。キミも!

小沢 僕、ヘタレなんで(苦笑)。



清水 いや、俺もアヴェンタドールは想像できない。458プラス千何百万円なんて全く理解不可能だよ。

小沢 西川さんは証券トレーダーとかIT長者に近い雰囲気持ってるしなぁ。リクルート出身だし。

西川 でもアヴェンタドールのために、クルマ全部手放したから。16台あって、10台以上手放した。

小沢 あの緑のカウンタックも?

西川 それはある。あとBBも。いまはバラバラだけどね。

小沢 なんだ、やっぱ凄いじゃん。でも、ある意味自動車ジャーナリストとして最高到達点ですよね。今までのスーパーカー・ジャーナリストって大抵ボンボンで、西川さんも実はそうかもしれないけど、学歴はまっとうに凄いし、そういう匂いがあまりしないじゃないですか。

西川 ボンボンではないかなぁ。

「アヴェンタドールのために、 クルマ全部手放したから。 16台あって、10台以上手放した」


清水 西川君は収入の7~8割をクルマにつぎ込んでるからさ。そこがスーパーだ。俺はせいぜい3割。

小沢 ええっ!!

西川 そうよ。独立してから10年間、つぎ込めるものはつぎ込んで、それが16台になって、このためにGT-Rとか8Cとか全部売った。

小沢 やっぱクルマ版ロッキーだ。

西川 ロッキー16みたいな(笑)。

清水 俺の場合、一回一回神に祈るようにして買ってるからね、フェラーリだけを。かなり違うよ。

小沢 どっちもカッコ良くてバカっ速いミドシップ・カーだけど、スタイルというか思想は相変わらず対照的。そのヘンは70年代のフェラーリ512BBとランボルギーニ・カウンタックの関係と変わらない。

西川 その2台の後継車だからね。458はV8モデルではあるけど。




一生信仰しようと決めた

小沢 最後になっちゃいましたが、走った感じはどっちが凄いんですか。

清水 今までで断然最高にキモチいいんだよ、458って。これまでのフェラーリは、実は野蛮なクルマだったじゃない。普通の人がイメージする「エレガントで繊細でゴージャスで……」ってのはウソで、とても荒々しくてイーカゲンなクルマだった。でも458は違う。世間のイメージ通りのフェラーリなんだよ!! エレガントで繊細で最高に甘美でさ。昔、近所のおばさんに、「フェラーリって、さぞ乗り心地がいいんでしょうねぇ」って言われて吹き出したことがあったけど、458はまさにそう。天使に添い寝してもらってるような、超ステキなクルマなんですよ。

小沢 なるほど。ではランボは?

西川 僕がアヴェンタドールの前に持ってたランボはディアブロで、ムルシエラゴの所有経験はないけど、新型12気筒エンジンがまるで違う。今までは揶揄するとトラクターのような荒さがあったけど、まるで違ってやたら緻密。物凄く気持ちイイ。

小沢 どっちがイイですか?

西川 V8と比べると、アヴェンタのV12でしょ。ただ、ここにフェラーリの12気筒を持ってくると負ける。そこは認めます。ま、今はミドシップ12気筒フェラーリの普通のラインナップはないわけだけどさ。



清水 いやあ、ハンドリングなら絶対負けない。ウルトラ速くてウルトラ曲がってくれて、UFOか宇宙戦艦かって感じだからね。しかも、えっ、どうしてこんなに曲がるの? っていうナゾだらけ。電子制御のお陰で未知の領域だらけになって、こんなことはあり得なかったって感覚がテンコ盛り。乗ってて震えっぱなしだね。特に驚いたのは狭いタイトコーナー。箱根の長尾峠の下りが超絶楽しい! フェラーリで長尾峠だよ!? あんな狭いところ、スーパーカーで走るもんじゃなかったのに、458は幻の多角形コーナリングまでブチかます。パキーンって直角に曲がっちゃう! 458の電子制御は、「もっと行け、もっと行け」と、ひたすらドライバーを誘ってくれる。

西川 それをフェラーリで出来たことが凄いですよね。できても当たり前だけど(笑)。

小沢 アヴェンタドールは?

西川 コイツはカーボンボディが効いてて足が良く動く。だから以前の12気筒と比べると、本当に運転が上手い人じゃなくても十分曲がれるようになった。ただし、エンジンがデカい分、細かい長尾は無理かな。それより楽しいのは超違法領域(笑)。テストコースで試したけど時速250km以上が物凄くキモチいい。真っ直ぐでもコーナーでも全体の一体感や安定感が凄くってクルマの大きさを感じなくなっていく。いつも言ってるけどフェラーリはGTカーであり、スーパー・スポーツ。でもランボはスーパーカーだからさ。



清水 とにかく458は全域で素晴らしくて、遂にこんな高みにまできてくださったんですか! って叫ぶしかない。特にコーナーでは、知らなかった禁断の世界も教えてくれて、エマニエル夫人になった気分。彼女は、マリオってエロ親父に「君はもっと深い世界を知らなければならない」って調教されていくでしょう。俺もそういう気分なのよ。残りの人生かけて458に調教されて、ナゾを解き明かしてみたい。フェラーリは俺が最初に出会った神様なので、一生信仰しようと決めてるしね。

西川 いいねぇ。それってシアワセじゃない。僕はちょっと違うけど、やっぱずっとクルマで行くね。別に単なる所有欲でも、速さでも、ハイテクでもない。今純粋にパガーニが欲しい! と思えるし、その瞬間が一番シアワセなんだもん。

小沢 ちなみに今のエコブームはどう影響しますかね。フェラーリもハイブリッドになるみたいですが、将来つまらなくはならないですかね。

清水 そんなの、建前を整えているだけ。中身は全然変わらないさ。

西川 そう、クルマも邪魔なナンバー付けて走るじゃん。あれと一緒よ。

小沢 とにかくスーパーカーは永遠だと。なんか2人がウラヤマシイ。そんなバカになれて(笑)。

語る人=清水草一&西川淳 行司(まとめも)小沢コージ 写真=柏田芳敬

(ENGINE2012年12月号)

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