2024.01.10

CARS

アヴェンタドールLP700-4に魂を売った48時間 悪魔の囁きが聞こえるランボルギーニの荒ぶるスーパーカー【『エンジン』蔵出しシリーズ/ランボルギーニ篇】

ランボルギーニ・アヴェンタドールLP700-4(2014年モデル)。

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雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回のランボルギーニ篇で取り上げるのは、アヴェンタドールだ。スペインの勇猛な雄牛の名をいただくスーパー・スポーツカーに、箱根のワインディングを2日間にわたって走ったリポート。700馬力の衝撃の虜になり、悪魔に魅入られて我を忘れた48時間のリポートを掲載した2014年7月号の記事をお送りする。

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700馬力の加速G

広報車を管理するランボルギーニ麻布のショールームでアヴェンタドールを借り出すときは、平和なものだった。いま振り返ってみれば、夢のスーパーカーに乗るというだけでウキウキしていた自分が滑稽に思える。



アヴェンタドールと過ごした48時間は、まるで悪魔と対話するような時間だった。もし48時間という制限がなかったら、僕はいまごろ悪魔に魂を売り渡していたかもしれない。それほどアヴェンタドールは魔性の魅力に満ちたクルマだったのだ。


麻布のディーラーを後にして、飯倉片町から首都高速に乗り、東名高速で西へ向かう。700馬力のスーパーカーが試乗できる場所などそうあるはずもなく、目的地はやはり箱根である。

午後の遅めの時間ということもあって交通量も多いことから、走行モードはノーマルのストラーダで走っていたのだが、これがいちばんソフトなモードとは思えないほど硬い。目地段差を越えるたびにドスンと突き上げを感じ、少しでも路面にうねりがあると縦方向に強く揺すられる。

ただし、そんな場合でもキャビンを覆うカーボン・モノコックと前後アルミ・フレームのボディはミシリとも言わない。



一方、350km/hの最高速を絞り出す6.5リッターのV12エンジンは、この程度の速度では出る幕もなく、控えめな音量の排気音は、前255、後ろ355という極太なタイヤが発する地響きのようなロード・ノイズにかき消されてしまっている。

ド派手な色と奇抜なカタチ、その上ドライバーは髭ヅラ。あぶないクルマと思われかねないので、控えめに走っていたが、ステアリングも軽く、ペダルなどの操作系に扱い辛いところもなく、硬い乗り心地と異様に低い目線の高さ、周りのクルマのドライバーの熱い視線を除けば、思っていたほどのスーパーさは感じられなかった。


箱根の麓に着いたのは午後4時頃だ。ここまではごくごく平穏な旅だった。それが激変したのは、ワインディングに突入して、長い登り坂を駆け上がり始めたときだ。

まるでガラス・ショーケースのようなリア・ハッチの下に納まる凶暴な60度V型12気筒エンジン。最高出力の発生回転はなんと8250 rpm! エンジン・ルームの開口部を補強する鋼管に沿うようにオーリンズ製のプッシュロッド式ダンパーが配置されている。

アクセレレーターを一気に床まで踏み込むと、ドンッという衝撃と同時に背後で破裂音が轟き、パアアアアーンという強烈なエグゾーストノートとともにカラダがシート・バックに押しつけられる。後ろに持って行かれるというような生やさしいものじゃない。何か重いモノにのしかかられているような圧迫感。これが700馬力の加速Gの凄さなのか。

ランボルギーニの車名には、みな勇猛な雄牛の名がつくが、この猛牛には登り坂など関係ないらしい。加速エネルギーは留まるところを知らず、アクセレレーターを踏んでいる限り勢いは衰えない。あっと言う間にコーナーが目前に迫り、ブレーキ・ペダルに踏み変えた途端、一気に減速Gが立ち上がり、いきなり引っ張られたように前のめりになる。異質なのはその後のコーナリングGだ。斜め下に引っ張られ、腰からシートにめり込むようにカラダが重くなる。


この感覚、何かに似ていると思ったら思い出した。数年前、ベネトン・ルノー時代のアロンソがドライブする、タンデムのF1マシンに富士の本コースで同乗試乗したときに感じたGとそっくりだ。カラダが薄っぺらなシートにめり込んで息苦しく、ひたすら耐えながらGを受け止めるしかなかったあの感じだ。

まさに戦闘機のシミュレーターのようなコクピットだ。



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