ランボルギーニ・アヴェンタドールLP700-4(2014年モデル)。
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内なる声アヴェンタドールはまるでレーシング・カーだと思い、速度を緩めてシート・バックを起こし、ステアリングをカラダに近づけると、今度は走行モードでスポーツを選び、マニュアル・シフトで再びアクセレレーターを踏み込んだ。パララララーン、パララララーンと一段と排気音が高まり、加速もさらに鋭くなる。
アシも明らかに硬くなり、臓腑が上下に激しく揺さぶられるほどの強烈な振動が襲ってくる。それでも、リア・スポイラーの角度が自動調節されてダウン・フォースで押しつけられているからか、タイヤが跳ねて暴れることはない。が、フロント・スクリーン越しの世界が高まる速度と振動で溶けていくように見えたのには驚いた。ストラーダのときが猛牛ならスポーツのときのこいつは悪魔だと思った。
その悪魔が囁きかけてきたのは空が暗くなり始めたときだ。
シフトをマニュアルからオートに切り替えると、ブレーキングでシュドンッ、シュドンッとこれまで聞いたことのないようなダウン・シフトの音がして、コーナリング・スピードに最適な回転数とギアを瞬時に選び、猛然と立ち上がる。
見事なシフト・ワークに助けられながら、ブレーキングとステアリング操作に集中しながら何度もワインディングを往復していると、もっとアクセルが踏めるぞ、もっと速く曲がれるぞ、と内なる声が聞こえてくる。その声に導かれるように夢中で走りまわり、日がどっぷりと暮れて強烈なGとの格闘を終えたときには、全身が汗びっしょりでぐったりと疲れ果てていた。

その夜は、夜明けとともに行う撮影に備えて大磯に宿を取ったが、興奮して一睡もできず、結局翌日の撮影後も、あの内なる声を聞きながら、返却ぎりぎりまで箱根の山々を走りまわった。アヴェンタドールは洗練さを増す最近のスーパー・スポーツカーの対極にあるようなクルマだ。日常でも使えないことはないが、むしろレーシング・カーがロード・カーになったようなむき出しの荒々しさこそが魅力だと思う。アヴェンタドールにしかないあの振動、あの音、あのGの凄さ。狂気を秘めた凄みのある快楽。ランボルギーニ好きが魂を売りわたす気持ちがわかる気がした。文=塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦
■ランボルギーニ・アヴェンタドールLP700-4駆動方式 エンジン・ミドシップ縦置きフルタイム4WD全長×全幅×全高 4780×2030×1136mmホイールベース 2700mm乾燥重量 1820kg(前780kg/後1040kg)エンジン形式 アルミ製60度V型12気筒DOHC48バルブ排気量 6498ccボア×ストローク 95.0×76.4mm最高出力 700ps/8250rpm最大トルク 70.4kgm/5500rpmトランスミッション 7段自動マニュアルサスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイルサスペンション(後) ダブルウィッシュボーン/コイルブレーキ(前後) カーボン・セラミック製通気冷却式ディスクタイヤ(前後) 255/30ZR20/355/25ZR21車両本体価格 4317万3000円
(ENGINE2014年7月号)
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