2023.12.20

CARS

125万円高の価値はあるか? ジープ・ラングラーのPHEV、「4xe」に本格オフロード・コースで試乗した

待ったなしのゼロエミッションを達成するため、電動化を急速に推し進める自動車メーカー。その波はオフロード・モデルを主軸とする「ジープ」にも押し寄せている。まずは乗用車プラットフォームを用いたモデルから様子見をしていたが、ついにジープの象徴である「ラングラー」もプラグイン・ハイブリッド(PHEV)の採用で電動化に踏み切った。今回はそのラングラーのPHEVモデルを、ラングラーが最も得意とするオフロードで試乗。果たして、電動化されてもその卓越したオフロード性能を守ることができただろうか。

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ジープの王道

ジープといえば、真っ先に思い浮かぶモデルがラングラーだ。最近では街乗りにも適したコンパクトな「レネゲード」や「コンパス」、「チェロキー」に代わるミドル・サイズの「コマンダー」、高級大型モデルの「グランドチェロキー」と豊富なラインナップを展開するが、世の中の一般的なジープのイメージを体現しているのはやはりラングラーや、そのピックアップ版である「グラディエイター」だろう。



ラングラーのPHEVはルビコン仕様

とにかくタフなオフローダーで、SUVというよりクロカン(クロスカントリー)という呼び名がふさわしいラングラーは、ややもすれば原始的なイメージも抱きがちだ。しかし実際は、着実に駆動系やシャシーの進化を重ね、パワートレインにはいまやPHEVも存在する。「4xe」(フォー・バイ・イー)と銘打たれたプラグイン・ハイブリッド・システムを積むラングラーは4ドア・モデルの「アンリミテッド」に設定され、日本には「ルビコン」仕様で2022年12月に導入された。

ルビコンは、ロー・ギア化した副変速機の4Lレンジや17インチのマッドテレーン(M/T)タイヤ、スタビライザーのキャンセル機構を備えることで悪路走破性を高めた、ラングラー本来の性能を極めたというか、ハードコアなグレード。本国ではこれらのオフロード志向の装備を省いて価格も重量も抑えたグレード、「サハラ」のPHEVも販売されている。単に電動化モデルの普及を図るなら、より街乗りSUVニーズに対応できるサハラを導入した方が適しているはず。あえてルビコンにしたのは、輸入車にありがちな全部乗せ仕様の上位グレードだからという理由なのではと思っていた。実際にオフロードを走るまでは‥‥。



オフロード用装備が強い味方

ルビコン4xeを走らせたのは山梨県の富士ケ嶺オフロード。最大35度のヒルクライムやモーグル、ロックエリアなどが揃った関東屈指のオフロード・コースだ。まずはインストラクターの先導でルートを確認し、そのあとはフリーで走行。ルビコン用4WDシステムの「ロックトラック・フルタイム4x4」に備わる副変速機で4Lレンジを選択すれば、2350kgの車両重量には力不足に思える272ps/400Nmの2.0リッター直4ターボであることを忘れさせるほど力強く、M/Tタイヤは悪路を蹴飛ばしていく。

急角度の登り降りで、登り坂で速度を一定に保つ「ヒルアセント・コントロール」と同じく下り坂用の「ヒルディセント・コントロール」を備えた「セレクスピード・コントロール」をオンにする。これにより、クルマはアクセル・ペダルを操作することなく一定の速度で走行するので、操舵や路面の状況把握に集中でき、不慣れな状況下でも安全に運転できる。モーグルではスタビライザーをカットしてサスペンション・ストロークを拡大する電子制御式の「フロント・スウェイバー・ディスコネクト」の効果を実感。左右輪が凹凸の大きな段差をものともせず路面を捉え、車体の傾きは不安を覚えない範疇に収まる。これらの恩恵をすべて享受できるとなれば、ガソリン・モデルにおけるルビコンとサハラの価格差は安心料だと納得できる。



悪条件でも威力を発揮

では、PHEVにそれら悪路走行デバイスを組み合わせるメリットはあるのか。今回、本格オフロードを走ってみて、それは間違いなくあると感じた。むしろ、電動パワートレインとオフロードとの相性がいいことを思い知ったと言ってもいい。

WLTCモードで航続距離42kmというEV走行を優先させる「エレクトリック」モードを選択すると、145ps/255Nmのモーターが駆動力を担う。ご存知のとおり、電気モーターはゼロ回転でも最大トルクを発生し、ペダル操作に対する駆動力制御を内燃エンジンより緻密に行うことができる。そのため、トラクションを確保しづらく、また滑りやすい悪路では、電動化の利点が舗装路以上に有効。原動機の回転数に依存することなく十分なトルクを得られるので、荒れた路面の急こう配などゆっくり進みたいけど駆動力が必要といった場面で威力を発揮する。



親和性がきわめて高い

そう、粛々と形容したいほどの静粛性の高さも、オフロードではうれしい。窓を開ければ、踏みしめた路面の地質や接地面の状態を耳で知ることができる。実際、土に覆われた坂道では、その下に隠れた石の存在に、タイヤが触れて崩れる音で気づき、それを目安にスロットルペダルの操作量を調節することでスタックを回避できた場面があった。バードウォッチングや釣りなどのレジャーフィールドや、キャンプサイトなどで静かに行動したい場面でも、エンジン音がないことはプラス要素だ。悪路走破性を高めたルビコンと、ノイズなく低速から力強いモーター駆動は、親和性がきわめて高い。モーターで走れることができれば、自然の中にクルマで分け入る罪悪感も多少は薄らぐというものだ。

4xeの値付けはガソリン・エンジンのみのルビコンに対して125万円高いが、クリーンエネルギー車への補助金や税制優遇を用いれば、実際の価格差はより小さくなる。モード燃費はガソリン・モデルに劣るが、充電環境とEV走行の使い方次第ではそちらの差も縮められるはずだ。オフロード・ユースを前提にラングラーを購入するなら、4xeは真剣に検討する価値がある選択肢だ。



文=関 耕一郎 写真=茂呂幸正

(ENGINE WEBオリジナル)

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