2024.01.02

CARS

このクルマは物理の法則の外にいる! 「限界域を垣間見ることすら難しい」フルモデルチェンジしたメルセデスAMG GTに自動車評論家の島下泰久が試乗!!

メルセデスAMG GT 63 4マチック+クーペ

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同じところ、異なるところ

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しかしながら、その違いは発進の時点ですでに明確に伝わってきた。アクセル操作に対する反応がよりダイレクトで、右足に力を込めるとすぐに背中から蹴飛ばすような強力なトラクションが発揮されるのである。

実際、0-100km/h加速タイムはコンマ3秒短縮されて3.2秒となる。意外や車重もほぼ一緒の両車。一体何がそれだけの差に繋がっているのか。



まずはタイヤ・サイズ。SLの前265/後295に対して、前295/後305まで太くなっている。その強大なグリップに対応するべくブッシュ類も強化された。

さらに4マチック+も、よりリア重視の駆動力制御に改められている。電子制御LSDも、ロック率の高い別品番のものが使われているということで、スペックを眺めるだけでも目指す走りの世界が浮かび上がってくる。エンジニアに聞くと、同じコンポーネンツを使いつつも、両車はまったく異なるクルマとして開発されたという。当たり前だが、AMG GTは、よりAMG GTらしくというわけである。



コーナリングについても同様だ。アンチロールバーに代わって左右サスペンションを油圧連関させてロールを抑えるセミアクティブ・サスペンションや、最大2.5度の操舵角を持つリアアクスル・ステアリングなどは、やはりSLと共通である。しかしながらその挙動は操舵と同時にノーズがインに切れ込むかの如くシャープ。ほぼ2トンという車重をまるで意識させない。

旋回スピードの高さも驚くほど。ワインディング・ロードでは限界域を垣間見ることすら難しい。このクルマだけ、物理の法則の外にいるかのようだ。

そして立ち上がりで右足に力を込めれば、リア寄りの駆動力配分によってまさにFRかのような豪快な立ち上がりを、無類の安心感の下に堪能することができるのである。



走りは、まさにメルセデスAMG GTならではの世界。しかしながら先代に較べてはるかに安心して、そのパフォーマンスを引き出すことができるのが、この新型だ。格段に高まった日常性も相まって、これまで以上に多くの人にアピールするに違いない。

あるいは、それを軟弱になったと見る人もいるかも知れないが、心配は要らないだろう。きっと今後、先代と同様にそうした声に応える硬派なモデルを含めた様々なバリエーションが用意されるはずだ。

文=島下泰久 写真=メルセデス・ベンツ

■メルセデスAMG GT 63 4マチック+クーペ
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4728×1984×1354mm
ホイールベース 2700mm
トレッド(前/後) 1683/1686mm
車両重量 1970kg
パワーユニット形式 水冷V型8気筒DOHCツインターボ
排気量 3982cc
最高出力 585ps/5500-6500rpm
最大トルク 800Nm/2500-5000rpm
トランスミッション 9段自動AT
サスペンション(前後) ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(前後) カーボンセラミック通気冷却式ディスク
タイヤ(前) 295/35ZR20
タイヤ(後) 305/35ZR20
車両本体価格(税込) 未定

(ENGINE2024年2・3月号)

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