2024.01.04

CARS

0から100km/hまでの加速はたったの2.8秒! マクラーレンの新たな旗艦、750Sに自動車評論家の大谷達也が試乗 これがマクラーレンの正しい姿!!

マクラーレン750S

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マクラーレンの旗艦であり、おそらく特別なモデルや派生モデルを除き、最後の純内燃エンジン・シリーズとなるであろう750S。ポルトガルのエストリル・サーキットとその近郊で、モータージャーナリストの大谷達也がテストした。

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徹底した軽量化

語弊を恐れずにいえば、なかなか地味なモデルチェンジだ。

アイソケットと呼ばれる特徴的なヘッドライトまわりのデザインがほんの少しすっきりしたり、フロント・スポイラー周辺のエア・インテーク部がシンプルな形状に改められたものの、外観上の変化はほんのわずか。フロント・フェンダー上にルーバー状のエア・アウトレットが追加され、可変式リア・ウイングのサイズが少しだけ大きくなるなど、派手に見える要素も加わっているのだけれど、いずれも前作720Sと見比べなければ気づかない範囲である。



メカニズム面でも、モデル名が示すとおりエンジンの最高出力は720psから750psに引き上げられたものの、ハイブリッド・システムなどの派手なテクノロジーの追加は皆無。また、最近はやりのトルクベクタリングや4WSで姿勢を制御しているわけでもない。

その代わりにウォーキングの技術陣が取り組んだのは、サスペンション・セッティングやジオメトリーの緻密な見直しであり、徹底した軽量化だった。つまり、見た目のインパクトよりも実質を重視した改良を行ったのだ。その方向性はいかにもイギリスらしく、またF1チームをバックボーンに持つマクラーレンらしい姿勢といえるものだ。



より自然に、より滑らかに

それでも、720Sとの違いは、乗ればたちどころにして理解できる。エストリル・サーキット周辺の一般道で乗ると、これまで以上にサスペンションが滑らかにストロークすることに気づく。どっしりとした乗り心地で、徹頭徹尾ボディをフラットに保つ720Sとは大きく異なるキャラクターだ。いっぽうで、750Sでは特にコンフォート・モードを選ぶと路面の凹凸にあわせてかすかにピッチングする傾向が見られたものの、720S以上にソフトにショックを吸収するその快適さはスーパー・スポーツカーの新境地を切り拓いたといっていい。前述の軽いピッチングにしても、油圧で姿勢を電子制御するマクラーレン独自のプロアクティブ・シャシー・コントロール(PCC)に馴染みのない方にとっては、むしろ自然で親しみやすい挙動と感じることだろう。

外観同様、インテリアも見た目より機能性を重視し着実に進化。可倒式だったメーター・ユニットは廃止されたが、左右端にステアリング・ホイールを保持したまま指先で操作可能な走行モード切り替え用のロッカー・スイッチを配置。


エンジンの印象も大きく変わった。エグゾースト・ノートは、これまでの野太く迫力のある音色から、高音成分が強調された繊細で品のいいものへと生まれ変わった。音量も控え目になったので、人によっては物足りないと感じられるかもしれないが、あまりひと目を引きたくない私にとってこの方針転換は大歓迎。繊細な音色になった分、V8エンジンの緻密な回転フィールがより浮き彫りになったことも嬉しい変化だ。

スロットル・レスポンスはシャープで、峠道での細やかなアクセル操作にもぴったりと寄り添うようにして反応してくれる。その回転フィールはより滑らかになったとも感じられるが、圧巻は5000~7000rpmのトップエンドで、それまでリニアだった回転数とパワーの関係が一転。急に指数関数のようにパワーが高まっていくのだ。ここに、720Sよりもファイナルを15%下げた駆動系が組み合わされるのだから加速感がすさまじいのは当然のこと。なにしろ0から100km/hまでの加速は2.8秒、200km/hまででも7.2秒(クーペ)で駆け抜ける俊足の持ち主なのである。



そんなパワーを存分に発揮できたのがサーキットでの走行だった。驚くべきことに長さ1kmほどのメイン・ストレートでは280km/hオーバーに到達。これには良好なエアロダイナミクスや軽量設計も効いているはず。それ以上に圧倒されたのがスタビリティの高さで、280km/hからのフル・ブレーキングでもステアリングを修正する必要がなかったほか、かなり頑張ったつもりのコーナリングでもタイヤが滑る気配は皆無。私の腕前では、わざと意地悪なことでもしない限り、アンダーステアやオーバーステアを感じることはできなかった。

ただし、常にピュアなヴィークル・ダイナミクスを追求するマクラーレンにとって、これが正しい姿であるのは明らか。やはりマクラーレンは、スーパースポーツカー界の真面目な求道者なのである。

文=大谷達也 写真=マクラーレン


■マクラーレン750S

駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4569×1930×1196mm
ホイールベース 2670mm
トレッド(前/後) 1680/1629mm
車両乾燥重量 1227kg
パワーユニット形式 水冷V型8気筒DOHC
ボア×ストローク 93×73.5mm
排気量 3994cc
最高出力 750ps/7500rpm
最大トルク 800Nm/5500rpm
トランスミッション デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション(前後) ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(前後) カーボンセラミック通気冷却式ディスク
タイヤ(前/後) 245/35ZR19/305/30R20
車両本体価格(税込) 3930万円

(ENGINE2024年2・3月号)

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