2024.08.31

CARS

後輪駆動で517馬力 自然吸気6リッターV12に6段マニュアルって、凄すぎ! 2008年モデルのDBSは、どんなアストン・マーティンだったのか?

6リッターV12、トランスミッションは6マニュアル。

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激しい雷鳴のような音

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サファイア・クリスタルを使った美しいキイをセンターコンソール上部に穿たれた穴に差し込むと、エンジン始動準備完了を知らせる赤い点滅が始まる。そのままキイをさらに押し込めば、一瞬の静寂ののちに、激しい雷鳴のような音を轟かせて6リッターV12に火が入る。いや、雷鳴が轟くのは外の話で、室内では心地よく耳に入ってくる程度なのだが……。

シートはリクライニング機能つきのバケット。サイドが大きく張り出し、ややタイトだがホールド性は抜群だ。着座位置は思い切り低い。無償オプションとしてカーボン製のフルバケットを選ぶことも可能だが、これはかなりレーシーな仕様で、背が極端に立っているから、リラックスして乗りたいムキにはお勧めできない。いずれもシート表面には、軽量かつ肌ざわりのいいセミアニリン・レザーとアルカンタラが使われており、ワインディングを攻めている時にお尻が滑るなんてことはない。

アルミとハンドステッチのレザーを使ったシックなインテリア。


巨大なアルミ製のノブがついたシフト・レバーを1速に入れ、500馬力超のエンジンを持つクルマにしては踏力が軽めのクラッチを繋ぐ。6リッターV12は下のトルクがやや細めで発進時には繊細さが要求されるが、ひとたび繋がってしまえば、あとはアクセレレーターを踏む足に力を入れればドカンと発進する。

ビルシュタイン製のアダプティブ・ダンパーをノーマル・モードにしておけば、乗り心地はこれまでのアストンと比較して格段にいい。いや、たとえスポーツを選んだとしても、鋭い突き上げに不快な思いをさせられることはないだろう。すべての動きは滑らかかつしなやかで、超高級スポーツカーにふさわしい居心地の良さが室内を支配している。

カーボン製のフルバケット・シート。


聞こえてくるのは、V12の緻密な回転音と控え目なエクゾースト・ノート。回転数を上げていくと、4000付近でサウンドが変化し、再び激しい雷鳴が轟くが、室内にいる限りは遠い雷鳴といったレベルだ。このサウンド・チューニングにはかなり気を使ったとアストン唯一の日本人エンジニアから聞いた。DB9よりずっとアグレッシブでヴァンクウィッシュのようなエキサイトメントを持つが、しかしソフィスティケイトされた音。街中ではいたって静かに、高速道路を飛ばす時には心地良いサウンドが室内に響くよう、回転数との関係を調整したのだという。

節度感あるスポーティさ

今回の試乗コースにはワインディングもかなり含まれていたが、コーナーを駆け抜ける気持ち良さは特筆に値するものだった。新型DBSのハンドリングはかなりシャープだがシャープ過ぎない、節度感あるスポーティさとでも言えばいいのか。軽めのタッチのステアリングを切り込んでいくと、スッとノーズが内に入っていく。その時、ダンパーをスポーツに設定しておけばロールは極少。動きは極めてダイレクトで、センシティブな運転が要求されるが、決して神経質になる必要はない。

無粋なウイングなどなくとも空力的に優れたデザインになっているという。


たとえば、最大のライバルであるファラーリ599と比べたら、DBSは極めて重厚な、安定感のあるスポーツカーだ。599が触れなば切れんという研ぎ澄まされたカミソリだとすれば、DBSは程よい切れ味の鈍い光沢を放つナイフといってもいいかも知れない。少なくとも、いつリアが滑り出すかと、お尻の下がムズムズするような感覚は皆無だ。

むろん、自動安定装置のDSCをオフにしてアクセレレーターを乱暴に踏み込めば、いつでもリアをブレークさせられるパワーを持っているし、あるいは、少しだけお尻を流すのを許容するトラック・モードも用意されている。しかし、コーナーを限界まで攻めるような走り方が、この贅沢な2座スポーツ・クーペにふさわしいとは到底思えなかった。

やろうと思えばできる。でも、あえてやらないという節度感こそが、「タキシードを着たタフ・ガイ」の真骨頂なのではないかと思った。

文=村上政(ENGINE編集部) 写真=アストン・マーティン・ラゴンダ・リミテッド


◆アストン・マーティンDBSのおさえどころ
・ヴァンクウィッシュの後継車なれど、よりコンフォート指向に。
・アルミ・バスタブ構造のVHプラットフォームはDB9の発展型。
・6lV12+トランスアクスルのドライブトレインも同様。
・ボディ・パネルにはアルミに加えて、カーボンファイバーを多用。
・アストン初のカーボン・セラミック・ブレーキを標準装備。
・お値段は最大のライバル、フェラーリ599を上回る3270万円。

■アストン・マーティンDBS
駆動方式 FR(トランスアクスル)
全長×全幅×全高 4721×1905×1280mm
ホイールベース 2740mm
車両重量 1695kg
エンジン形式 アルミ製V型12気筒DOHC48バルブ
排気量 5935cc
ボア×ストローク 89×79.5mm
最高出力 517ps/6500rpm
最大トルク 58.1kgm/5750rpm
ギアボックス 6速MT(グラッツィアーノ製)
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ 通気冷却式カーボン・セラミック・ディスク
タイヤ (前)245/35ZR20/(後)295/30ZR20
車両本体価格 3270万円(日本でのデリバリー開始は来年3月)

(ENGINE2008年1月号)

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