2024.02.16

CARS

勉強よりも貫禄で勝つ兄貴! ランボルギーニ・ガヤルドとアウディR8の比較試乗!! これは面白い兄弟喧嘩!?【『エンジン』蔵出しシリーズ/比較試乗篇】

ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4とアウディR8の兄弟喧嘩!

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eギアとSトロニック

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ガヤルドから乗る。従来の5リッターから5.2リッターに格上げされ、あらたに直噴機構も得た自然吸気のV10は、従来比40psアップの560ps/8000rpmと40Nm増しの540Nm(55.1kgm)/6500rpmとなった。ついにリッター100psを超えたそれは、始動の瞬間こそオウナーをよろこばせる演出によって威嚇的に吼えたけれど、血が全身にまわりだして1分もしないうちに沈静化し、むしろ静かにアイドリングする。シフトに要する時間を40%短縮するとともに12.8kg軽くなったとされる新開発の6段eギア(セミAT)のパドルは、フェラーリ同様、ステアリング・コラムに固定される。右を引くとアップ、左を引くとダウンとなるのもおなじだ。

ガヤルドのセンター・コンソールには、工芸品的になかなか魅力的なフリップ・スイッチがズラリと並ぶ。コントラスト・パイピングを持つシートは大振りで、座り心地、ホールド性ともによい。しかし、視界はスーパーカーのそれといってしまえばそれまでだがよくない。とくに斜め後方については絶望的だ。


最初は自動シフトのAモードにして走り出した。シフト・アップ時には、上のギアにつながるまでの間が長く、そのかんの加速の鈍化のために、ドライバーがつんのめるのはあい変わらずだ。たまらず、センター・トンネル上の「スポーツ」ボタンを押してパドルで変速すると、多少ましにはなる。しかし、まだつんのめりは残る。最速シフト・モードの「コルサ」(レース)にしてようやく、シフト・アップ時の違和感が消えた。いっぽう、おなじシステムのセミAT(Sトロニック)を持つR8は、なぜか変速がよりスムーズだった。とはいえ、自動モードではガヤルドと選ぶところがない。シングル・クラッチ式のセミATは、もはや「むかしの味」である。

しかし、サスペンションがあらたまり、日常的使用条件での乗り心地は飛躍的に向上した。新型ガヤルドは、この点で一日の長があったF430のレベルに近づき、現代のスーパーカー基準を満たしたといえる。ハードなサーキット走行にも耐えるようにスプリングはいっそう硬められたが、ダンパーの動きがよく、多少の路面の荒れに遭遇しても突き上げを感じない。ただし、うねる路面の高速コーナリングでは、路面変化にダンパーの動きが追いつかないようで、ピッチングを許す。

いっぽうR8は、ほぼどんな路面、どんな速度状況でも快適な乗り心地で、ガヤルドがピッチングを許した場面でもフラットな姿勢を維持する。どっちが進んだクルマの感じがするかといえば、当然こっちになる。

R8のインテリアは、基本構成はガヤルドに似ているが、ガヤルドよりもさらに整理されている。ガヤルドとR8、ともにフラット・ボトムのステアリングは、表面素材は別としても、本体はおなじかもしれないとおもわせる。



数字より円満

とはいえ、560psという途方もない数字から想像するより、現実のガヤルドはずっと円満なクルマだ。V10エンジンは、巡航時は非常に静かで、トルク・フィールが回転の上昇とともに滑らかに盛り上がっていく。スロットル操作にたいするレスポンスも自然だ。ただ、するどいという感じはない。8400rpmでレヴ・リミットを迎えるまで、スムーズに吹け上がり、7000あたりからは、従来型では聞いたためしのない、澄んだ雑味のないエクゾースト・ノートを上げる。文明的になったのだ。だから、高速巡航はLP560-4の得意科目である。

いっぽう、高速巡航中のR8は、パワー・トレインもシャシーの動きも、ランボよりもっと軽やかに、そしてしなやかに感じる。420psの最高出力だから、LP560とおなじペースで走ると、より高回転まで回すことになるが、3000-5000あたりの中速域でトルクがフラットな代わりに、生き生きとしたパワー感が際立ち、軽快なサウンドとあいまって、軽い体をほどよく動かしているような爽快感がある。



こうしたちがいは、ワインディング・ロードをガンガン走ってもほぼ同様に観察することができた。ひと口にいって、R8がバンタム級のボクサーだとすれば、ガヤルドはミドル級ボクサーだった。あるいは、R8がしなやかで若々しい筋肉の持ち主であるとすれば、ガヤルドの筋肉はひと回り太いものに感じた。そして、R8のステアリング・フィールのわかりやすさに較べると、パワー・アシスト量が控えめな、ということはより重めのガヤルドのステアリングは、正確ではあるものの、同等の鮮明なグリップ感を持ち合わせてはいないのだった。

ムルシエラゴよりもはるかにモダンで、スーパーカーというよりもスポーツカーのようにおもえたガヤルドは、R8のような若者と直接乗り較べると、ガヤルドにたいするムルシエラゴのように感じるのだった。別言すれば、ガヤルドはサンタガタからの使者にふさわしく、R8の前ではスタイルもパフォーマンスもエキセントリックなスーパーカーだった。この2台はつまり、兄弟は兄弟でも性分は正反対である。もちろんガヤルドが兄貴でR8が弟だ。勉強は弟、貫禄は兄貴の勝ちだった。兄弟、うまくやっていけるだろう。

文=鈴木正文(ENGINE編集長) 写真=望月浩彦

■ランボルギーニ・ガヤルドLP560-4
駆動方式 縦置きミドシップ・フルタイム4WD
全長×全幅×全高 4345×1900×1165mm
ホイールベース 2560mm
車両重量 1410kg
エンジン形式 90度V10DOHC4バルブ
排気量 5204cc
ボア×ストローク 84.5×92.8mm
最高出力 560ps/8000rpm
最大トルク 540Nm(55.1kgm)/6500rpm
トランスミッション 6段セミAT
サスペンション(前) ダブル・ウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) ダブル・ウィッシュボーン/コイル
ブレーキ 前後通気冷却式ディスク
タイヤ 前235/35ZR19 後295/30ZR19
車両本体価格 2533万1250円

■アウディR8
駆動方式 縦置きミドシップ・フルタイム4WD
全長×全幅×全高 4435×1905×1250mm
ホイールベース 2650mm
車両重量 1630kg
エンジン形式 90度V8DOHC4バルブ
排気量 4163cc
ボア×ストローク 84.5×92.8mm
最高出力 420ps/7800rpm
最大トルク 430Nm(43.8kgm)/4500-6000rpm
トランスミッション 6段セミAT
サスペンション(前) ダブル・ウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) ダブル・ウィッシュボーン/コイル
ブレーキ 前後通気冷却式ディスク
タイヤ 235/35ZR19 (後)295/30ZR19
車両本体価格 1670万円

(ENGINE2008年10月号)

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