中古車バイヤーズガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回お送りするのは2009年6月号に掲載されたケータハム・セヴンともう一台は聞いたこともない英国のスポーツカー、ファービオの試乗記だ。当時のロータスの輸入元LCIの別会社、PCIが扱いはじめた英国製スポーツカー、ケータハムとファービオ。エンスー大国からの2台を勇躍テストしたビックリのリポート。「混じりけのない回春剤 英国スポーツカー・スペシャリストの新作2台!」ENGINE 2009年6月号ケータハム・セヴンCSR350とファービオGTSに乗っているうち、私のなかでなにかが目覚めた。セヴンにはオープンで乗っていたから、日焼けもしたりして本当はものすごく疲れているはずなのに、体を動かしたいと思った。なんだか知らないけど、やる気、やりたい気もわいてきた。私、現在48歳でありますが、もうすぐ50歳になろうというオジサンでもそういう気分になるんですねぇ。2台のイギリス製スポーツカーが私をして、眠らせない、高揚した気分にしてしまった。クルマから降りたあとも! 翌日には効き目がなくなったから、まことに健康的といえる。副作用のない、混じりけのない回春剤。春よ。
ケータハム・セヴンCSR350は、史上もっとも快適なセヴンであった。これなら毎日乗れる。第1に従来のセヴンよりボディが若干大きい。ホイールベースで約60mm、全幅で100mmほど拡大されている。おかげでコクピットに収まった自分がリラックスしているのを感じる。その分タイト感は減っているけれど、窮屈じゃないってことは幸せだ。第2に乗り心地が素晴らしい。リア・サスペンションはド・ディオンから完全独立となり、フロントにはF1式のインボード・サスペンションを採用。空気抵抗を減らすべく、スプリングとダンパーがノーズ・コーンの内側に配置されている。荒れた路面でもまったく跳ねない。路面をしなやかになぞる。いかにもロード・ホールディングがいい。スタビリティも素晴らしい。まっすぐ走ることに神経を研ぎ澄ます必要がない。チューブラー・フレームは強化され、シャシー剛性は20%上がっている。第3にエンジンがトルキーで扱いやすい。排気量が2234ccもある。フォード・デュラテック2.3をコスワースがチューンしたもので、200psの最高出力を7000rpmで、21.8kgmの最大トルクは4200rpmで発生する。数値上は超高回転型みたいだが、現代のエンジンである。ぜんぜん気難しくない。車重が575kgしかないこともある。野太いサウンドを発してモリモリ加速する。メーカー公表の0─100km/h加速は3.8秒、1トン当たり馬力は347ps(これが名称の由来)もある。アクセル・ペダルを床まで踏みつけるなんて蛮勇をふるうチャンスは一般道ではなかなかない。
ケータハム・セヴンCSR350は、コーリン・チャップマンが前世紀の1957年に発表したロータス・セヴンの基本定型を守りつつ、快適方向に進化した。とはいえ、その本性はおそらくロータス・セヴンとなんら変わっていない。箱根に到着して、撮影のためにサイド・カーテンを外して走り始めると、山の空気が容赦なく顔面に当たる。春とはいえ、冷たい。下半身はエンジンの熱気で温かい。コタツに入りながら寒中ドライビング。頭寒足熱。なんだかオツである。山道を飛ばしていると、排気音も一緒に飛んでいく。だから意外と静かに感じる。裸で走っているようなクルマだから、爽快至極。ステアリングはものすごく小径で、触れている指先の動きだけで、あるいはアクセル・ペダルに載せた右足にほんの心持ち力を入れただけで、セヴンのボディ全体が反応する。ふだん使ってない閉じていた神経回路の扉が次々に開いて、膨大な量の情報が指先、足先から出入りし、私の体が覚醒していく。スポーツカーはだから素晴らしい。
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