2024.09.10

CARS

【エンジン・アーカイブ「蔵出しシリーズ」】2008年、誕生したばかりの日産GT-Rに乗って徳大寺有恒は何を思ったか? 「まさか、こんなクルマに乗れるとは!」

2008年、徳大寺有恒さんは、誕生したばかりの日産GT-Rに乗った!

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デカンショ、デカンショで

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ブレーキはこのような超高速車にとって特に重要だが、ブレンボのモノブロック・キャリパーを使っている。一般の道では極めてよいタッチで効いてくれるし、サーキットでは、友人・清水和夫のパッセンジャー・シートで経験したが、不平を言う様子がなかった。

GT‐Rは相当すごい。ロード・カーとしてはこのクルマ以上のクルマはあまりなかろう。

GT‐Rは分別のある男のクルマである。定価777万円というプライス・タグは、このクルマが解り、使いこなせる男(もちろん女性でもいいのだが)にとっては望外の安さであろう。

GT‐Rは現代のクルマである。しかも日本の。だから日本でも十分使える。デパートへの買い物のアシとしてもいける。しかし、誰もそんなことのためにこのクルマは買うまい。このクルマは古いカテゴリーのGTカーなのである。ウィークエンドはサーキットへ遊びに行くだろう。

サーキットに着き、ライト類にテーピングし、サーキットを何ラップか走り、再び高速道路を走って帰る。それがこのクルマを所有する目的となり、喜びとなる。ツクバでもフジでもいい。目の前が開けたらガス・ペダルを床まで踏んでやる。さしものフジの長いストレートもすぐ終わり、あなたは迫り来る第1コーナーの手前で強いブレーキをかけねばならぬだろう。

ときおりはスズカで楽しみたい。このクルマはあのニュルブルクリンクを7分30秒台で走れるのだから。

では、ウィーク・ポイントはいかなるものであるか。ひとつはスタイルだろう。極めて武骨である。しかし、見方を変えると極めて日本的だとも思える。時速300km/hのスーパーカーとして、鬼面人を驚かす、というものでもない。

4座クーペというボディ形式もこの種のクルマとしては珍しい。この国ではスポーツカーが認知されているとはいいがたいから、このほうがむしろ受け入れられやすいのかもしれない。演出のへたさかげん。それは言うまい。それが日本の、日産のクルマなのである。

たしかに性能はスーパーカーだ。スピードだけでものを言えば、第1級のレーシング・カーと肩を並べる。スポーツカー好きのクルマであることはむろんだが、現代のレーシング・カーでもある。

それが777万円で買え、ジジイの私が東京の渋滞のなか、買い物に行くのに使える。こいつはわれわれの知っている、これまでのスーパーカーとは違う。私はこのクルマを見ると、弊衣破帽のバンカラを思い出す。“デカンショ、デカンショで半年暮らす、あとの半年は寝て暮らす、よーいよーい、デッカンショ!”

そんなクルマなのである、GT‐Rは。

文=徳大寺有恒 写真=小林俊樹/阿部昌也

(ENGINE2008年2月号)

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