2024.02.29

CARS

ヤフオク7万円で買ったシトロエン、細々したトラブルと平和だった(わずか)半年間【シトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート#33】

焼津を目指し東名高速を西へ向かう途中、富士川SAで一休みしているエグザンティア。

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極上のエグザンティアがやって来た

半年間で入庫したのは2回だったが、異音にしてもLHMの滲みにしても、大至急作業が必要だったわけではない。では、なぜ主治医のカークラフトに足を運んだかといえば、面白いクルマが入庫してきたからだ。



カークラフトにやって来たのは、ワイン・レッドの2000年型シトロエン・エグザンティア・エクスクルーシブ。リポート車両と同じハイドラクティブ2を備え、排気量は同じ2リットルだがDOHCユニットを搭載する最終型モデルで、走行距離はわずか2万6000kmくらい。カークラフト顧客の知り合いが静岡県某所で乗っていたそうだが、少々やっかいなトラブルを抱えており、長らく放置されていた。

もともとこのクルマの話は僕も耳にしていて「部品取りとして買っておいたらどうだ?」とカークラフトの篠原 勇さんから声を掛けてもらっていた。しかし様子を聞けば聞くほど、部品取りにするのはもったいないくらいの素性の持ち主だった。ワイン色の外装も、ファブリックの内装も、目立つダメージはなく程度は極上。ただし、キーをひねっても突然始動できなくなる持病を抱えていた。

ところがディーラーに積載車で運ぶと、何事もなかったかのようにエンジンがかかる。メカニックが確認しても、おかしな所はない、と言われてしまう。たちの悪い症状だ。結局ずっとその繰り返しで、オーナーはほとほと困っていた。

カークラフトは顧客を通じ、このワイン・レッドのエグザンティアをオーナーから引き上げることになった。さっそく油脂類の交換と簡単に点検を行い、スタッドレス・タイヤを装着するなど最低限の整備を行い、走行テストを繰り返す。



幸い始動不良の原因は突き止められ、続いて発生したECUユニットの不具合も、あるスペシャリストとの出会いでなんとか修復。圧が抜けていたスフェアは交換され、ハイドラクティブ2のソレノイド・バルブもついでに加工。僕のリポート車のようにハード・ロック症状が出ないよう、機械的にソフト側へ固定してしまった。つまりスフェアの数は2つ多いまま、ハイドラクティブ2をハイドロニューマチックにしてしまったというわけだ。この状態でもECUからの制御は問題なく、足まわりはずっとしなやかなままだという。

カークラフトがECUのスペシャリストと確認したところ、エグザンティアより後の初代C5など、緻密な制御が行われるECUユニットは、中の集積回路が樹脂コーティングされてしまっており、なかなか手が付けられないそうだ。もちろん、新品のECUなど、すでに入手はそうとう困難になっている。やはり制御が簡単で、構造が現代のクルマに比べてシンプルなエグザンティアは、人の手で直していくことができる、最後のハイドローリック・シトロエンになるのかもしれない。


極上のエグザンティアに乗る

カークラフトの篠原さんは悪いところをどんどん洗い出したいから、リポート車の代車はこのワイン・レッドのエグザンティアではどうか、という。願ってもないことだ。後期型のエグザンティアには新車当時は結構乗ったけど、かなり久しぶりのドライブである。こうして入庫の間、トータルで約360kmほど、一般道と高速道路を試すことができた。



残念ながらこの時点では足まわりは作業前で、スフェアの圧が抜け、ややリア・サスペンションの突き上げが大きめだった。PSAとルノーの共同開発のAL4という4段ATも、信号が赤になって減段していく時など、かなり強くガツン! というショックが出ていた。特に後者は、後期型のエグザンティアではよく知られる持病だ。放置すれば、ATの載せ替えやオーバーホールが必要になる。これには同乗した家族も「赤い方が青いうちのクルマよりすごく綺麗なのに、ガクガクして、なんか古いクルマみたいな感じがする」という。

確かにそうした部分もあるけれど、一方で、ボディ剛性がすごくしっかりしているところや、DOHCに変更されたエンジンの高回転域のスムーズさは、リポート車とまったく別物だった。いやー、いいわコレ。室内の静粛性も含めると、ひとクラス上級になったような印象すらある。高速域では特に差が顕著だ。

内外装の綺麗さや、走行距離のことを考えても、正直、こっちに先に出会っていたらなぁ、と思わずにはいられなかった。同じように200万円をつぎ込むなら、普通の人は7万円のリポート車でなく、確実にこっちをベースにするだろう。



とはいえ、いますぐこちらに乗り換えたいかと言われたら答えはノーだ。この極上エグザンティアだってこの時点ですでに22年オチである。リポート車のように1度徹底してある程度手を入れていれば安心だけど、いくら走行距離が少ないからといって、経年で部品はどんどん劣化していく。むしろ、どこに何が潜んでいるかは分からない。トラブルが続いて延々もぐら叩きになる可能性だってある。走行距離が短いという理由だけで手を出すのが、天国への道とは限らない。

リポート車のSOHCのエンジンはちょっとうるさいし、上り勾配になるとパワーが足らないなぁ、と思うことはよくあるけれど「ATはぬるりぬるりと気持ち良く変速するリポート車の方がずっと好みでしたよ」「シャープなオリジナル・デザインの初期型のほうがカッコイイですしね」と、僕は篠原さんに強がりを言っておくことにした。

その後、このワイン・レッドのエグザンティアは予想通り細々としたトラブルが出つつも、なんとか元気にやっているらしい。



とにもかくにも、1台またエグザンティアが路上に復帰したのはめでたいことだ。前オーナーはそれを、とても喜んでいるそうである。


過去最大級のトラブル襲来!

さて、我がエグザンティアの方はといえば、2023年早々、古のシトロエンDSがマスコットになっているクルマ好きの集うカフェを訪ねたりもしたが、その後持ち主がポーランドとフランスに旅に出てしまったため、納車以来はじめとなる10日間ほどの長期休暇を味わっていた。



このあたり詳細については写真と、海外篇のリポートを参照して欲しい。

さて次回は2023年の春から夏にかけて、国内外から入手した部品たちについてと、半年の短い平和の終わりを告げる、これまでで最大級のトラブルの襲来についてご報告していく……。

文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=上田純一郎/カークラフト

■CITROEN XANTIA V-SX シトロエン・エグザンティアV-SX
購入価格 7万円(板金を含む2023年3月時点までの支払い総額は234万6996円)
導入時期 2021年6月
走行距離 17万4088km(購入時15万8970km)

(ENGINE WEBオリジナル)

◆エンジン編集部ウエダのシトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート連載一覧はコチラ
ヤフオク7万円25年オチのシトロエンの長期リポート連載!

◆ちょっと古いクルマ趣味を愉しむ人たちのリポート一覧はコチラ
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