2024.05.11

CARS

「6.2リッターV8 OHVの咆哮を聴けば、「本物はこっちだ!」と叫びたくなる」 清水草一がシボレー・コルベットほか5台の輸入車に試乗!

モータージャーナリストの清水草一さんが輸入車5台に乗った本音とは?

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ジャガーIペイス RダイナミックHSE「BEVデザインのお手本」

ジャガー初のピュアBEVとして登場したIペイス。すでに日本導入から5年になろうとしているが、相変わらず最大の美点は、フォルムの美しさだと断言しよう。特に斜め後ろから見た時の、気品に満ちたスポーティな造形は、新世代ジャガーを象徴している。クイッと突き出たノッチ部と、その下のシャープなテールランプ&ジャガーのエンブレムのハーモニーが、クルマ好きの美意識の秘孔を突く。

Iペイスは、BEVのあるべきフォルムのお手本を世界に提示した。SUVの床下にバッテリーを積めばいいというものではない、BEVはBEVなりの美しさを追求すべきだと身をもって示したことで、世の流れはその通りになった。すばらしいじゃないか。

ドライブフィールは、以前と変わらずパワフルで上品だが、登場から5年の歳月が流れたため、航続距離に物足りなさを感じるようになった。そのあたりに関しては、来年以降登場するはずのジャガー第2世代BEVに期待しよう。性能はもちろんのこと、デザインもとてもゴージャスなものになるらしい。




マクラーレン・アルトゥーラ「さすがマクラーレン!」

マクラーレンは、フェラーリの対極に位置するスーパースポーツだ。すべてが理詰めで、官能性などという雑味の入る余地のないクルマだと考えていた。

しかしアルトゥーラは違う。いや相変わらず徹底的に論理的ではあるが、3リッター120度V6ターボ+PHEVという構成は、ライバルであるフェラーリ296GTBと同じ。故かどうかはわからないが、低速域でのトルク感や、完全バランスの120度V6のフィーリングに、適度な官能性を感じるのである。

サウンドの抜けも、V8モデルより明らかに向上している。「音さえよければすべて善し」というサウンド信者である私としても、「マクラーレンも世俗のニーズがわかってきたのか」と、ニヤリとせずにはいられない。いや、マクラーレンのカスタマーは、カサカサに乾いた論理性に惚れているのかもしれないが、その点に配慮して(?)、官能性はあくまで適度なレベルにとどめられている。最高出力(680馬力)をライバルより抑えながら、0-100km/h加速はほぼ同等というところも、さすがマクラーレンと唸るしかない。




メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス「安全なる天上界」

メルセデスは開発の主軸をEVに移した。フラッグシップはもうSではなくEQSだ。Sは脇役なのだ……。そんな思いは、このクルマに乗ってフッ飛んだ。巨大なセダンボディの内部は、ウルトラゴージャスな竜宮城である。真っ赤なレザーがダイレクトに酒池肉林を連想させる。このダッシュボードの素材は一体ナニ?想像もつかないがとても高そうだ。

助手席には、タイトミニのウルトラいい女が足を組んでいる(妄想です)。彼女が顎をツンと上げた。全速前進の合図である。アクセルを床まで踏み抜く。最高出力802PS、最大トルク1430Nmが大地を蹴る(1430Nmは、モーターをブースト的に使うと10秒間だけ発生する)。巨体がワープのごとく加速するが、車内は平穏そのものだ。世界にどんな悲劇があろうとも、ここは安全なる天上界なのである。

いい女がつぶやく。「前のクルマ、全部抜いてちょうだい」と。了解。全部抜いたるで~!え、EVモードで33キロ走れるって?あ、そーなのね。それはそれで便利かもしれない!




ボルボXC40リチャージ・アルティメット・シングル・モーター「徹頭徹尾さわやかさん」

本誌読者の皆様にとっては、EVだからといって「わぁすごい」という時期は終わっていると推察する。ひょっとすると、スーパーEVの狂気の加速にも、「もう飽きちゃったよ」という方も少なくないだろう。いまクルマ好きに刺さるEVは、適度にコンパクトで、電費がよくて、航続距離に余裕のある、「中ぐらいなりおらが春」なモデルではないだろうか。

ボルボXC40リチャージは、とても中ぐらいで心地いいEVだ。運転していても特筆するようなことはなにも起きず、ただただ平和に風景が後方に流れていく。加速はEVとして実に中ぐらいだし、デザインもインテリアもサワヤカで嫌味ゼロ。エアコンには空気清浄機が付属していて空気もサワヤカだ。

2023年のマイナーチェンジで、FWDからRWDへ大転換を図り、モーターを自社製に変更したのは、電費の改善が目的だ。バッテリー容量を若干増やした結果、カタログ上の航続距離は502kmから590kmに増えている。徹頭徹尾さわやかさんなEVでありながら、本物の進歩を実現しているのである。

文=清水 草一

(ENGINE2024年4月号)

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