2024.07.04

CARS

2009年型グラントゥーリズモSの中古車を買うならトランスミッションはATか、それともシーケンシャルか? 「エンジン蔵出し記事」で当時の評価をチェックする!

ATとシーケンシャル、トランスミッション違いの2台のグラントゥーリズモSを乗り比べる!

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危ういまでの軽やかさ

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乗り味も意外なくらい違っていた。常識的に考えれば、よりスポーツ志向の高いシーケンシャルは軽快でスポーティ、ラグジュアリー志向の強いATはやや重厚で安定感のある走りになっていると想像されるだろうが、実際に乗り較べた結果は、むしろ逆だ。シーケンシャルの方が、ドイツ車ほどではないけれど、それでも明らかに重厚な味付けになっている。すべての操作系がそれなりの手応えを持っていて、走っていてクルマの状態がわかり易いし、ある意味安全に飛ばせる感じが伝わってくる。

ブル・オチェアーノ(紺)のボディの個体が新しく日本に上陸したグラントゥリズモSオートマティック(車両本体価格=1665万円)。


足回りはどちらもかなり硬めの設定だが、オートマティックには可変ダンパーのスカイフックが標準装備されているから、乗り心地は当然、そちらの方がいい。しかし、そんなこととは別に、オートマティックの乗り味は、ノーマル・モードでもスポーツ・モードでも軽快そのもので、極端に言えば危ういまでの軽やかさが支配している。直線を飛ばすにも、ステアリングを握りしめるような野暮なマネは御法度だ。間違ってどこに飛んで行ってしまうかわからない。手のひらでウッドとレザーの感触を慈しみ、楽しむようにステアリングを軽く包み込み、同じく軽い感触のアクセレレーターに神経を集中させてデリケートに踏み込みながら、道路の表層を滑るように軽やかに疾走する。そんな走り方こそがこの感触の化け物にはふさわしいと、私には感じられたのである。

贅沢のきわみ

もうひとつの大きな違いは、音だ。シーケンシャルは、ステアリング脇のダッシュボードに設けられたボタンを押してスポーツ・モードをオンにした瞬間から、4.7リッターV8の排気音が爆音モードに切り替わり、アクセレレーターを踏み込むたびに、まるで猛り狂ったかのような雄叫びを上げ続けるようになる。そして、アクセレレーターを戻すと、今度はボッボッボッとむずがるような音を立てるのである。



一方、オートマティックにも同じボタンがあるが、押しても最初は違いがわからないくらい控え目だ。アクセレレーターを全開にすると3000回転を超えたあたりから音が変化するのがわかるが、それでも外はともかく室内にまで爆音が響きわたることはない。そんな野蛮な音より、もっと繊細な感触を楽しめ、というように平然としながら、それでいてシフト・ダウンの時には、ATのくせにしっかりとブリッピングの音を室内に響かせるのだ。

正直に言って、どちらが好きかと言われたら今でも圧倒的にシーケンシャルを支持する。明らかなスポーツ志向は誰にもわかりやすく、あたり一面に響きわたる爆音を聞いていると、これぞイタリアンGTと言いたくなる。だが、本当にそうか。スポーティなのにラグジュアリー志向で、感触の化け物のようなデリケートさを持ち、危ういまでの軽やかな走りでドライバーを挑発し続けるオートマティックこそ贅沢のきわみ、華麗なるイタリアンGTなのではないか。それが今回の結論である。

文=村上政(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦

(ENGINE2009年10月号)

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