2024.04.19

CARS

アバルト・グランデ・プントのスーパースポーツ版、エッセエッセはどんなホットハッチだったのか? やっぱり痛快なのがイチバンだ!!

アバルト・グランデ・プントのスーパースポーツ版、エッセエッセで峠を目指した!

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高速道路で? マーク点灯

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しかし、である。群馬と長野の県境にある渋峠を目指して関越自動車道を高速で北上し始めると、予想外の事態が起きた。

走り慣れた道だから、路面状況はだいたい把握しているのだけれど、不意にガツンとフロント・サスペンションがフル・ボトミングするショックが伝わってきた。ほかのクルマではほとんど記憶にない。うねりを乗り越えて戻るときにガツンと底突きする。バンプ・ストップ・ラバーを急激に突く。

速度を落とせば問題ないし、たとえ突き上げられても、進路を乱されるようなことにはならないから、不安は生まれないのだけれど、「こんなこと繰り返しているとクルマ痛むよなぁ」という気持ちはどうしても抱く。

マフラーもエッセエッセ専用品となる。赤く見えるスプリングはエッセエッセ専用品の証(標準は黒塗装)。マフラー・カッターは一見同じように見えるが、これも専用品。突き出し部分が少し長い


エッセエッセ専用のサスペンション・スプリングはガチガチに硬いものではなく、むしろストロークを積極的に許して路面不整を吸収し、結果的に車輌姿勢がフラットに保たれるように考えられている。ローダウン化によってバウンド・ストロークは減っているから、ストロークを使い切ってしまう状況がまま起きる。

信州中野で高速を降り、渋峠を目指して駆け上がった山道でもそれは変わらなかった。

路面条件がけっしていい道とはいえないけれど、登りきるまでに何度もフル・ボトミングした。ストラット・タワーからAピラーの辺りにかけてガツンとくる。攻めたせいはあるにしても、攻めてなんぼのクルマなんだから、という思いは強い。スムーズな路面では標準型を凌ぐ能力を見せつけるのだから、なんとも悩ましい。



赤城を走らせて感激した

ロケを終えた後の渋川伊香保までの一般道で、エッセエッセに不都合はなにも出なかった。

炎天下でときにノロノロ運転を強いられても、エアコンは強力に作動しつづけ、エンジンが不調をきたすなどということももちろんなかった。

普通のグランデ・プントの2倍の出力を誇るアバルト版でも足りないという強者向けに作られたエッセエッセは、たったの1368ccからじつに180psもの高出力を搾りだそうというクルマであることを思い出すと、パワー・トレインの洗練度は望みうる最上の域に達していると思う。

標準型はIHI社製の小型ターボチャージャー(RHF3-P10.5)を使うが、エッセエッセにはギャレット社のGT1446が組み込まれる。タービン、コンプレッサー径ともに大きい。エアフィルターは伊BMC製


圧縮比は標準型と同じ9.8対1のままだから、低回転域でスカスカなどということなく、発進停止の繰り返しも苦にならない。乗り心地が硬めなことを受け入れれば、毎日これと暮らしていけるだろう。

となれば、やはりワインディング・ロードでどうかをきっちり見定めておかないといけない。渋川伊香保ICで僕は東京ではなく新潟方面のゲートをくぐった。綺麗な路面が続く登り勾配の関越道をエッセエッセはあっという間に飲み込み、赤城ICで降りた僕は、がらがらに空いた赤城南面道路を経由して赤城山を越えることにした。

痛快だった。南面道路では突き上げがなく、いいところばかりが出る。鼻先は狙ったラインにピタリと乗る。

赤城山頂を目指す本格的なワインディングになっても、速度抑制のために設けられた意図的なうねりを慎重に越えれば、それ以外の部分では見事に本領を発揮しまくった。クルマの動きがピタッときまる。

ブレーキ・ディスクは前後ともにクロス・ドリル孔入りのものに変更される。また、フロントのディスク・パッドは食いつきのいいソフト・タイプのものが組み込まれる。キャリパーは同一の仕様。白の専用ホイールは18インチ。215/40R18 89Wを履く(標準型は215/45R17)

専用の効きのいいソフトなパッドを使うブレーキの感触も申し分ない。スポーティなドライビングが楽しくて仕方ない。気をよくしてそのまま北面へと降りていっても、気持ちよさは変わらなかった。2500
rpm辺りから本格的な過給ゾーンに入るエンジンもあきらかに標準型よりパワフルで、スロットル・コントロールのし甲斐がある。面白い。

スポーツ・ボタンは、オーバーブースト機構と連動する標準型とは違って、パワーステアリングのアシスト特性とスロットルの開度特性を少し変えるだけだから、好みでどちらを選んでも、速さには違いがでないのもいい。僕はいろいろとやってみて、結局山道でもノーマル・モードを選んだ。細かなスロットル・コントロールが効くし、ヘアピンのようなタイト・コーナーで操舵力がちょうどよく軽くなって、楽ができる。

エッセエッセは道を選ぶけれど、ツボにはまれば痛快このうえないクルマだということが分かって、僕は溜飲を下げたのだった。

翌日、編集部へ出ると、編集長に「スタンダード・タイプも連れて行ったんだろ。それで、どっちが良かった?」と訊ねられた。ひととおり説明したあとで、「僕は毎日使うことがなにより前提なので、たぶん、悩んだ末につぶしの効く標準型を選ぶと思います」と、答えた。するとスズキさんは、こう言ったのだった。「なるほどね。だったらエッセエッセだろう。多少のネガは受け入れても、痛快なものを求める。そうでないと」と。僕は、アッ! と思った。

文=齋藤浩之(ENGINE編集部) 写真=小野一秋

(ENGINE2009年10月号)

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