2024.07.12

CARS

こういうオヤジたちはカッコいい! ロータス・エランとフェアレディ240ZGで趣味のヒストリックカー・レースを仲間たちと愉しむ 

佐藤さんの2台の愛機、ロータス・エラン26Rと日産フェアレディ240ZG。

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遅咲きのレーサー

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それ以降、佐藤さんはヒストリックカー・レースに出場しながらも、腕を磨くためにヴィッツ・レース、86/BRZレース、Z-チャレンジといった現行のワンメイク・レースにも積極的に参戦を続けてきた。

「遅咲きなので、もう狂ったように練習するしかないわけです。ちゃんとプロについてもらってやるんだけど、ヴィッツも86/BRZも“けちょんけちょん”ですよ。でもそのおかげでコッチ(ヒストリックカー・レース)では良い思いをさせてもらっています。ほら、親父趣味ってそこそこ良いところにいないと辛いものがありますから」

そう佐藤さんは笑うが、大事な趣味であるがゆえに、レースに向かう姿勢はストイックで真剣だ。

タイヤをバイアスのダンロップCR65に限定したヒストリック・マスターズ・レース。

「ほとんどの大会でダブル・エントリー、場合によってはトリプル・エントリーしているのでバテないように、レースの2週間前からは禁酒します。お酒は好きなんだけど、医学的には胃が疲れちゃうのはダメなんです。胃って、ただ消化して腸にスルーするのではなくて、水分とグルコース(ブドウ糖)を結構吸収する。例えば脱水症状のような緊急事態の時は、腸に行く前に胃が吸収して脱水を回避するんですよ。だから胃が疲れているのはダメ。脱水はパフォーマンスに大きく影響しますから。それだけは気をつけています。それ以外に食事も気をつけるようになったので、カミさんは結果的に喜んでくれているかも(笑)」

そうした徹底した姿勢は、クルマにおいても変わらない。現在佐藤さんはレーシングカーだけでもエラン26Rと240ZGのほかに、最初に仕立てたヒストリック・レーサーであるアルファロメオ1300GTジュニア、さらにはロータス23Bも所有し、レース毎に使い分けるという、羨ましいサンデー・レーサー生活を送っている。



そこで特筆すべきは、それぞれがスペシャリストの手に委ねられ、最大のポテンシャルを発揮できる状態に整えられていることだ。

「ヴィッツはサーキットでしか見なかったし、ワックスもかけたことがない、ただの走る道具。一方のヒストリックカーは愛玩の対象っていうのかな。ガレージにおいて、つい見惚れて眺めたり。23Bなんか憧れのクルマでしたから所有するだけで楽しい。ああしよう、こうしようってプロセスも楽しくてね。メカニックと1日50件くらいメールのやり取りをすることもあるくらいです」

2レース連続で2位!

さて、写真を見てお気づきかもしれないが、この日エラン26Rのノーズには幾重にもガムテープで補強された痛々しい跡が残っていた。

佐藤さんのエラン26Rはイギリスのヒストリックカー・レースでチャンピオンを獲得した経歴をもつ、名門トニー・トンプソンがフルチューンを施した1台で、タートルトレーディングの手でさらにその戦闘力が高められている。

「実はブレーキがちょっとトラブっていまして。バランサーを色々変えて、フロント寄りにしないと曲がらないどころかリヤがロックしちゃう。実はレース前の練習の時にその症状が出て、ちょっとスポンジ・バリアに当たってしまったんです」

それは佐藤さんが真剣に攻めている証拠でもあるのだが、その甲斐あって予選では早々に8秒台を記録し、一時トップに立った。

「8秒が出たし、直後に240ZGのP+Sレースの決勝が控えていたので早々に引き揚げたんですが、最後にコーティナの池田選手に逆転されちゃいました。スタートは叶わないけどインフィールドは良いペースなので上手くついていけば……」

その瞬間、苦楽を共にするチーム・スタッフがガッツポーズで迎える姿はこの日を象徴するシーンの1つだった。

そして迎えたマスターズ・ヒストリックの決勝。2番グリッドの佐藤さんは、スタートで一瞬遅れたものの見事挽回。途中の赤旗再スタート、直前を走っていたマシンのスピンなども冷静に切り抜け、予選を0.4秒上回るラップタイムも記録し、2位でゴールしてみせた。

一方、240ZGでエントリーしたP+Sレースは3番グリッドからスタート。途中で水温が上がり6500rpmシフトに切り替えたため、後続に追いつかれそうになったが「不得意なところは無理せず、得意なところで伸ばす」という冷静なドライビングで、値千金の2位入賞を果たしている。



「ドライバーも年寄り、クルマも年寄りだから、助け合いながら体もマシンも壊さないように走るのが、レースを長く続ける秘訣かもしれません。他にバンドやスキーなど趣味もありますが、やっぱりレースはアドレナリンの出方が違います。確かに“なんでこんなイライラしてんだ、カリカリしてんだ、たかが遊びじゃないか”って思うことは多々あります。でも仲間がいて、チームがいてそれを乗り越えられる。今年でレースを始めて31年目だけど、75歳で走っている先輩もいますからね。僕ももう少しできるかな? と思っています。今シーズンも14レース走る予定ですよ!」

レース歴31年目を迎えたジェントルマン・レーサー佐藤さんの真剣に、そして大いに遊ぶ『On Any Sunday』は、この先もずっと続いていきそうだ。

文=藤原よしお 写真=望月浩彦

(ENGINE2024年7月号)

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