2024.06.30

CARS

自動車研究家の山本シンヤがTGRラリーチャレンジにコ・ドライバー参戦! 参加すればわかる! ハマりますよ!!

TGRラリーチャレンジ(通称ラリチャレ)に自動車研究家の山本シンヤが参戦!

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業界の大先輩に誘われて

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そんなラリチャレに筆者は古くから参戦している。初ラリーは2007年で当時所属していた編集部の企画だった。本当は1戦のみのスポットの予定が、あまりの面白さから編集長に直談判してシリーズを戦った。当時は運転技量も未熟だったので表彰台には上がれなかったが、何度か入賞を経験したのはいい思い出。

写真上は105号車ドライバーの早川 茂氏(右)とコ・ドライバーの筆者(左)との2ショット。

これをキッカケに参加型モータースポーツの魅力にハマり、仕事の合間にサーキットレースを中心に参戦。何度か優勝や入賞を経験している。

そんな筆者が再びラリーの世界に戻ったのは2018年。同業の大先輩・清水和夫氏から「シンヤ君、コ・ドラできるよね?」とオファーを受けて参戦したラリチャレ渋川でクラス4位。ここでコ・ドライバーの重要性と面白さを知り、訓練をスタート。参考書『ラリーナビゲーター入門』と先輩コ・ドラからのアドバイスやレクチャーを元に勉強した。

その甲斐あって、2018年のラリチャレ高岡万葉戦では同業の佐藤久実氏と組んでクラス3位、2021年のラリチャレ渋川では執行役員でTCカンパニープレジデントの新郷和晃氏と組んでクラス3位と表彰台も獲得。そんな戦歴が評価されたのか(!?)、現在はTGR―WRG(ワールド・ラリー・蒲郡)で早川茂副会長のコ・ドラを担当している。実はこれは、筆者が時々ラリチャレに参戦している事をチェックしていた豊田章男氏から直々にオファーを受けた話で、早川氏のコ・ドラの参加が難しくなったため、筆者に“白羽の矢が立った”のだ。

筆者が参加したTGR-WRG チームでは、105号車と106号車の2台体制でエントリーした。106号車のドライバー/コ・ドライバーは大森文彦選手/山本正裕選手である。

そんな早川氏のマシンはGRヤリスだが、当時はまだ開発中だったDAT(ダイレクト・オートマチック・トランスミッション)のテスト車両だ。このクルマの生い立ちを簡単に説明すると「MTとガチンコ勝負できるATが存在すれば、モータースポーツの裾野を広げるキッカケになるのでは?」という豊田氏の強い思いから開発がスタート。目指すは「Dレンジのままで意のままの走りを実現させる“完全”な自動変速」だ。開発はモリゾウ選手や勝田範彦選手をはじめとするプロドライバーも担当しているが、実はメインの開発ドライバーは早川氏。この理由は単純明快で「モータースポーツの裾野を広げる」モデルだからこそ、ターゲット・カスタマーに近い存在の人に不具合を出してもらうのがベストという考えによるものだ。

世の中には優秀なコ・ドラは沢山いると思うが、「トヨタのクルマづくりの本質を知り、その模様を記事化して発信できるコ・ドラ」はと言うと? 恐らく筆者だけだろう(笑)。

ドライバーと一心同体

そんな中、参戦者の一人として「ラリーの魅力は何か?」と言われると、一番は「観戦する人との距離が短い事」だと思っている。日本のラリーは安全性の観点から競技区間(SS=スペシャルステージ)での観戦場所は限定されるが、ラリチャレでは短い距離だがギャラリーステージ(公園の取付け道路やミニサーキットなど)を用意。ラリーカーの迫力ある走りを身近で見ることができる。



更に競技開始(セレモニアルスタート)やSS間の移動区間(リエゾン)などで、たくさんの旗を振って応援してくれている人の姿と「頑張って!!」という声援に対して「ありがとう!!」という言葉が自然と出てくる双方向コミュニケーションは、参戦者としてはとても嬉しい。恐らく、これはラリーでしか味わえない醍醐味である。

もう一つの魅力は「ラリーはチーム競技」である事。ドライバーとコ・ドライバーは「夫婦のような関係」と言われるが、コ・ドラは単なる道先案内人ではなく、「ドライバーを思い通りに操り、正確に誰よりも速く走らせること」が最大のミッションだ。勝つためにはドライバーと一心同体で走らないとダメだし、クルマの不具合や不調を感じてエンジニアやメカニックにフィードバックを行なうのもコ・ドラの役目の一つだ。

写真は2024年シリーズ第3戦の八ヶ岳 茅野ラウンド(4月21日開催)のSS区間を走る様子。

今回出場したラリチャレ八ヶ岳茅野では、前回出場した沖縄戦での反省からペースノートの精度向上や指示タイミングを的確にする事を心がけた。更に前回上手く作動しなかったローンチコントロールのカイゼン(正確な作動)も相まって、ターマック(舗装路)では上位に食らいつくタイムを連発できた。

しかし、その一方でグラベル(非舗装路)ではDATの変速が意図通りに行かず失速してしまった事、室内のクモリが原因の視界不良でスピード・ダウンせざるを得なくなりタイムを伸ばせなかった事は反省点。ちなみに結果は78台中11位だった。

この辺りはすぐにエンジニアにフィードバックしており、次戦までには何らかのカイゼンが行なわれるだろう。すでにDATの発売は開始されたが、それでも常に進化を止めない姿勢こそが、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」の根っこと言えるだろう。

実は当初はステアリングを握らないコ・ドラを担当する事に不満もあったが、今ではその魅力に引き込まれている。最初はペースノートの指示とドライビングが噛み合わず苦労もしたが、それがピッタリ合致していいタイムで走れた時の嬉しさはコ・ドラにしか分からない“喜び”だ。

またメカニックやエンジニア、マネージャーも大事な仲間。彼ら無くしては走ることはできないので、常に感謝しかなく、競技中は常にチーム皆の想いを背負って走っている。

そんなラリチャレの2024年シーズンは北海道から九州・沖縄まで全12戦+特別戦を開催。クルマ好きな本誌読者には、是非とも参加をしていただきたい。入り口は身近だけどラリーの奥深さにハマると思う。

文=山本シンヤ 写真=真壁 強、TOYOTA GAZOO Racing

(ENGINE2024年7月号)

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