2024.07.10

CARS

500馬力のスーパースポーツよりマツダ・ロードスターのほうが上の理由とは? モータージャーナリストの斎藤慎輔がズバリ指摘するND型ロードスターの魅力

マツダ・ロードスターSとロードスターRF VSを斎藤慎輔氏が乗り比べた。

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初代(NA型)の登場から35周年、現行(ND)型がデビューして9年。世代を超えて多くのクルマ好きに支えられてきたマツダ・ロードスターの最新改良型に乗って、モータージャーナリストの斎藤慎輔は何を思ったのか。

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「乗る」のではなく「着る」

今年35周年だそうだ。ロードスターが世に送り出されてから、もうそんなにもなるのか。幸いと言うべきか、その4世代全てにリアルタイムで乗る機会を得てきた私ではあるけれど、すでに投入から9年を経たND型が、時の流れ、クルマを取り巻く環境の変化とともに、その貴重さを深めていくことに、ND型を開発してきた方々には、畏敬の念と感謝を抱いている。とはいえ、これまでも、これからも評価は評価として冷静にさせていただくことには変わりない。時には熱狂的なロードスター・ファンからか、かなりエゲツない言葉で罵られたりすることもあるのだが、それだけロードスターが愛されている証拠だと受け止めてきた。



そこで、今年1月に大幅改良された最新のNDロードスターである。電子プラットフォームの全面改良など、発売以来最大の変更がなされたのだが、見た目からは、マツダが言うにデザインは手の入れようがないくらいに完成されているということで、すぐに気づくのは前後ランプ類のデザイン変更や、室内ではモニター画面の拡大による形状変更くらいしかない。ただ、今回の変更でデイタイム・ランニング・ライトが新たにヘッドライト・ユニットの外側に配されたことで、周りから常に存在とともに、とくに対向側から車幅の確認がしやすくなったことは、表情の変化以上に重要な点だと捉えている。これまでND型ロードスターは、そこに無頓着に過ぎたからだ。

インパネのデザインはシンプルで運転席が主体。


こうしてすでに見慣れた感をもたらすND型ではあるが、乗り込んだ瞬間から他車と違うと思わせるのは「乗る」のではなく「着る」感覚をもたらしてくれることにある。これは今もって新鮮だし、量産スポーツカーでは、もうこれしかないのかもしれない。

実は初代、つまりNA型ロードスターがデビューした時、揶揄されることもあったロータス・エランの亜流みたいな声の中で、エランに何度か乗る機会を得ていた私は、乗り込んだ時に、エランと違ってなんだかブカブカしているなと感じたものだ。

つまり、勝手に期待していたクルマへのフィット感に乏しいと感じてしまったのだった。もちろん、古いエランと違い、当時の技術の中での側突対応といった理由はあって、それが日常の使い勝手にも貢献していたし、それでも、他の最新スポーツカーに比べれば、圧倒的にタイトではあったのだが、あの時に求めていたものに近い「着る」感覚がND型には備わっている。

試乗車の「S」は最もベースのグレードで、シートは布地、エアコンは手動調整タイプだ。


これは、スペースにゆとりがないということでもあるのだが、そうした小さなボディに詰め込まれた緻密なパッケージングには隙がない。

もう少し無造作にモノをおける、放りこめるスペースがあればな、と思ったりはする時もあるが、自身でもNA型ロードスターを含めて2シーター・スポーツには何台か乗ってきた中では、スペースの使い方の工夫や発見が楽しかったりしたものだ。不便を楽しむのもスポーツカー・ライフのひとつだったりする。

そうした点も含めると、私の中ではRFの電動ルーフはやり過ぎの感もあり、それが走りにも少なからず影響をもたらしていることから、ロードスターの本質からは少しばかり離れたものと考えている。

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