2024.11.17

CARS

【詳細解説】自動車評論家の大谷達也が内燃エンジンのRS6アバントとBEVのSQ8スポーツバックe-tronに試乗して、アウディ・クワトロの走りを改めて分析した!

V8ツインターボ・エンジンを積むRS6アバント・パフォーマンスと、アウディの未来を象徴するともいえるBEVのSQ8 スポーツバックe-tronにモータージャーナリストの大谷達也さんが試乗

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「秘伝の味」は変わらない

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そうしたアウディ独自のカラーは、BEVに生まれ変わったSQ8にもそのまま引き継がれているといって構わない。むしろ、エンジン車より重心高が低いBEVは、相対的に足回りのロール剛性を下げられるため、路面から伝わるゴツゴツ感をさらに低減することが可能となる。RS6から乗り換えたとき、SQ8のほうが乗り心地が滑らかでソフトな印象を受けるのは、2台のロール剛性の違いに起因しているはずだ。



このような特性のハンドリングや乗り心地を守り続けるため、アウディには製品の味付けを決めるドライビング・ダイナミクス担当が4人いて、彼らがお互いの仕事振りを相互に確認することにより、どんな環境でどのモデルに乗っても共通の「アウディらしさ」が感じられるように仕上げているという話を、先日のA5/S5国際試乗会の際に聞いてきた。「秘伝の味」は、こうして守られているのである。

インパネの造形やシートの形状はRS6に近い。エンジンを搭載しないため、フロント・トランクには充電ケーブルを収納できるスペースが確保されている。市街地と高速道路を200km強試乗した際の平均電費は4.1km/kWhだった。一充電走行距離は公称482km(WLTCモード)。


そうしたアウディという大枠のなかで、RS6やSQ8といった個々のキャラクターは生み出されていく。

たとえば、630psと850Nmという強烈なパフォーマンスが与えられたRS6は、どんな車速域であろうと豪快な加速を披露してくれるほか、ハードコーナリングでは車重が2.2トンもあることが信じられないくらいステアリングを用いた修正が容易で、思い切ってタイヤの限界を引き出したくなる衝動に駆られる。



いっぽうSQ8はどこまでも静かで、乗り心地も滑らか。おかげでハイウェイをクルージングしていると気持ちがスーッと落ち着くとともに感性が研ぎ澄まされ、普段は見落としがちなちょっとしたことに気がついたり、新たなインスピレーションを得る機会が増えるような気がする。

もちろん、ワインディング・ロードでは正確なハンドリングとスタビリティの高さをもたらしてくれるが、2.7トンの車重が生み出す巨大な慣性力はいかんともしがたく、限界的なコーナリング時にステアリングなどで修正できる余地はRS6よりも小さいように感じられる。このため、ワインディング・ロードではややマージンを残した走りとなるはず。個人的に、2台のドライビング・ダイナミクスにおける最大の違いは、この点にあるように思われた。



アウディの走りを理論的に解き明かすという主旨からはやや離れるが、デザイン性や質感の高さもアウディの魅力のひとつといえるだろう。

とりわけプロポーションが優れていて、無駄な装飾を与えずとも美しいと感じさせるエクステリア・デザインは秀逸。3次元的造形のうまさもアウディの特徴で、たとえば立ち位置を少しずつ変えながらリア周りのデザインを眺めても、彫刻的な美しさが破綻することはない。

いっぽうのインテリア・デザインは緻密さや精度感の高さが魅力的。おかげで派手なデザイン・モチーフを使うことなく魅力的な室内空間を生み出しているように思う。

そうしたアウディのデザインや走りの哲学は、いずれも上品で、しかも際だって知的。そしてその点にこそ、アウディというブランドの真価があるように私には思える。

文=大谷達也 写真=神村 聖

■アウディRS6アバント・パフォーマンス
駆動方式 エンジン・フロント縦置き4輪駆動  
全長×全幅×全高 4995×1960×1485mm  
ホイールベース 2925mm  
車両重量 2200kg  
トレッド(前/後) 1665/1650mm  
エンジン(モーター)型式 V型8気筒DOHCツインターボ  
排気量 3996cc  
最高出力 630ps/6000rpm  
最大トルク 850Nm/2300-4500rpm  
トランスミッション 8段AT  
サスペンション(前) ウィッシュボーン/エア  
サスペンション(後) ウィッシュボーン/エア  
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッドディスク  
タイヤサイズ(前後) 285/30R22(試乗車)  
車両本体価格(税込) 1933万円  

■SQ8スポーツバックe-tron
駆動方式 電気モーター・4輪駆動  
全長×全幅×全高 4915×1975×1615mm  
ホイールベース 2930mm  
車両重量 2720kg  
トレッド(前/後) 1680/1675mm  
エンジン(モーター)型式 フロント1+リア2モーター  
排気量 114kWh(バッテリー容量)  
最高出力 503ps  
最大トルク 973Nm  
トランスミッション 1段固定式  
サスペンション(前) ウィッシュボーン/エア  
サスペンション(後) ウィッシュボーン/エア  
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッドディスク  
タイヤサイズ(前後) 285/35R22(試乗車)  
車両本体価格(税込) 1492万円  
 

(ENGINE2024年12月号)

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