2024.12.01

CARS

僕のグッドフレンド 88歳のオーナーがXJ6とEタイプのジャガー2台に、ずっと乗り続けている理由とは?

ジャガーXJ6をドライブするオーナーの田村さん。

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「ジャガー・カー・クラブ・オブ・ジャパン」の会長を務めてきた田村 行さんが、ずっとジャガーに乗り続ける理由とは?

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ミスター・ジャガー

田村行(こう)さんは、1971年に誕生したジャガー・カー・クラブ・オブ・ジャパンのメンバーの1人で、83年から2023年まで40年にわたり会長を務められた、日本のミスター・ジャガーと言うべき人物だ。



そんな田村さんの愛車といえば、50年以上連れ添っている真っ赤なEタイプ・シリーズ1が有名なのだが、今回の主役はもう1台のドライバーズカーである97年型ジャガーXJ6ソブリン4.0である。

「これまでのジャガー・セダンの中で、これほど特徴のないクルマはないなぁ。その代わり丈夫ですよ。触る手間暇がなさすぎるくらいです」 そう言って笑う田村さんは昭和11年生まれの現在88歳。実はお父様も戦前からダットサン・フェートン、そして日本に1台しかなかったアドラーのオープンを乗り継ぐほどのクルマ好きだったそうだ。

取材に訪れた日はメンテ中のためEタイプは不在。「エンジンの美しさは別物。あれを見てぬかるみに入ったようなものです(笑)。言葉は悪いけど悪女。もう全部の修理を2周以上してますからね。でもあれに乗れなくなったら人生終わりだと思っているんですよ」


「初めて“動かした”のは親父のフェートンでしたが、免許を取って最初に買ったのは59年型の初代日産ブルーバード。その次が61年型のオースティン・ヒーリー・スプライトMk1です。当時日本人は新車の外車に乗ってはいけなかった。2年オチなら良いという時代です。だからモグリでアルファベット・ナンバーのまま乗っていました。ブルーバードも持ったままね。その次は64年のヒーリー3000Mk3。この時はもう1台プリンス・グロリア・スーパー6にも乗っていました」

というように、田村さんは現在に至るまでスポーツカーとサルーンの複数台所有を実践してきた。

「なんの映画だったかな。1つの家庭でセダンとロードスターを持っているシーンがあって、それが僕の目標になっちゃったわけですよ。ただ問題はビッグヒーリーよりグロリアの方がいいんです。壊れないし、走りもいい。ビッグヒーリーは後ろがリジッドアクスルなのに、グロリアはドディオンだったからね。それで気持ちがチグハグになって…‥」

そこで田村さんは4輪独立懸架、DOHC、3キャブレター、全輪ディスクブレーキという4つの条件を挙げ、次なる愛車を探し始めた。



「ある日湘南の134号線を走っていたら浜辺にEタイプが停まっていた。いいなぁと近づいて行ったら、友人でミュージシャンの小坂一也のクルマだったんです。早速ボンネットを開けてもらったら、これが別世界だった。だって僕が考えていたことを全部満たしていたんですから」

田村さんが念願のEタイプをガレージに収めたのは69年のこと。すると、その伴侶となる1台も必然的にジャガーになった。

「66年式のジャガーSタイプです。夢だったんですよ。61年のジュネーブ・ショーでEタイプと並んでる写真がありましてね。それを見て“あー、これだ!”って。皆になぜマーク2じゃないの?って言われたのですが、マーク2のリアはリジッドでSタイプは独立だからですよ。やっぱセダンは乗り心地でしょって言い返したもんですよ」



しばらくこの“つがい”を楽しんでいた田村さんだが、Sタイプにクーラーがなかったため、76年に73年式のXJ12を買い足した。

「スポーティーに乗れるクルマだったんで、大変気に入っていました。LSDが入っていてハンドルをそっと切ると後ろがコチンコチンと鳴るのも気持ちよくてね。富士ではカミさん用に買ったXJ-Sより速かった。2000年くらいまで10万km近く乗りましたが燃費が酷くてね。両側合わせて100リッターのタンクがあるのにゴルフ場の往復ができない。あと年もとってきましたし。少しおとなしいのに乗ろうと……」



そこで選んだのはX300型XJ6のベーシックグレードである3.2だった。

「最初は良かったんですよ。でもどうせおとなしく走るなら、もっとおとなしい方がいいと思いまして」

そんなとき、懇意のショップで見かけたのがロングボディのソブリン4.0だったという。

「ちょっと試乗してみたら“揺れ”が全然違うんです。よく“ジャガーは猫足”って言いますが本当にそうでね、例えばウチのガレージを出る時も猫の前足の様に左右がしなやかに動く。両手をついて行ってる。そんな感じです。今まで乗ったジャガーすべてに共通することですが、特にロングボディは猫足なんです」



一方で、V8エンジンになったX308以降のモデルは選択肢に入らなかったのだろうか?

「僕は2、4、8気筒ってあまり好きじゃないんですよ。6、12気筒の方が点火間隔がスムーズで好き。あと他はクルマじゃないって感覚になっちゃったのもありますね。X300くらいまでは座ると見慣れた風景で落ち着くんです。そりゃそうですよ。XJ12以降、50年くらいその風景しか見てないんだから(笑)」

今でもメインカーはあくまでEタイプで、ゴルフにも近所の買い物にも使っているという田村さんだが、昨今はXJ6 の出番も多いそうだ。

「この前の暑い日にも潮来カントリー倶楽部まで朝5時半に出発して往復250km走ってきました。そういう使い方にX300はいい。僕のグッドフレンドです」

文=藤原よしお 写真=茂呂幸正

(ENGINE2024年12月号)

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