今年もやりました2025年版「エンジン・ガイシャ大試乗会」。大磯プリンスホテルの大駐車場に集めた注目の総勢33台の輸入車にモータージャーナリスト33人が試乗! 各メーカーがこの上半期にイチオシするそれぞれのニューモデルに5人のジャーナリストが試乗した、計165本の2025年注目輸入車の試乗記を順次公開。
シボレー・コルベット Z06には、島下泰久さん、田中誠司さん、河村康彦さん、松田秀士さん、石井昌道さんが試乗。今回は島下さん、田中さん、河村さんの「ここがスゴイ」リポートをお届けする。

「いつ乗る? イマでしょ」島下泰久ホワイトのボディカラーもキマっているコルベットZ06。勇んで走り出すと、コクピットからも見える背後に積まれた5.5リッターV8ユニットの野太いサウンドとバイブレーションに、更にテンションが高まった。
低速ではガシャガシャというメカニカル・ノイズが目立つが、速度が高まるにつれてそれらは意識の外に消え去って、凝縮感の高い吹け上がりを堪能できる。そのまま8600rpmから始まるトップエンドまで回す……のは、公道では憚られるが、この時の突き抜けるような刺激は、堪らない魅力だ。

嬉しいのは、そうしたリアル・スポーツとしての高い純度の一方で、ゆったり流して気持ちいいコルベットらしさも失っていないことである。もちろん、ルーフの脱着も可能。飛ばしても、飛ばさなくても、常に走りの快感に浸ることができる。
今しか味わえないクルマなのかは、トランプ政権になって不透明になっている。けれど、やはり乗れる時に乗っておくべき1台であることは間違いないだろう。
「線が太い荒々しさ」田中誠司アメリカン・マッスルカーの象徴、ということは当然にV8エンジンのFRレイアウトであったシボレー・コルベットが、8世代目でついにミドシップ・レイアウトに転じたことは多分に衝撃的だった。
ボートのように長く低いノーズをコクピットから眺め、自らの背後にはほんの少しのスペースしかない心許なさを意識させるのがかつてのコルベットだった。
新型でも標準モデルにはOHV式エンジンが受け継がれ、その響きをいままでと違うカタチで味わえるのが新しい魅力となっていた。
新しいZ06には、レーシング・マシーンであるコルベットC8.Rに由来する最高8550rpmの超高回転型DOHCユニットが搭載されている。
ビッグ・トルクで押し出すものの、トップエンドでは伸び鈍ったOHVとは異なり、このエンジンはレブ・リミットを突き抜けてしまうほど高回転を好む。
官能的、というのとはまた違った、線が太く荒々しさを隠そうともしないV8は、フェラーリなどのスーパー・スポーツに乗り慣れたスポーツカー・ファンの心も刺激するはずだ。
「硬質ながら軽快で快適」河村康彦強烈なエンジンのアウトプットにかかわらずの2輪駆動。ベース・モデルでも十分広かったのにそれを大幅に凌いで軽く2mを超えた日本には到底フレンドリーとは思えない全幅。フロント用で275、リア用に至っては345幅という極太タイヤ……そんな常識外れなスペックの数々に事前に高まった緊張の度合いが、実車を前に「スッ」と収まった気がしたのは、見た目にさほどの威圧感を覚えなかったから。ボディカラーがホワイトだったこともあってか、この種のモデルにありがちな巨大ウイングがそそり立ったりしていないルックスに、予期していたほどの凶暴さは感じられなかったのだ。
エンジンに火を入れた際の咆哮はさすがに勇ましいが、走り始めると8段DCTの変速マナーは望外に良く、ショート・ストロークで超高回転型のエンジンは街乗りも抵抗なく受け付けてくれそうにフレキシブル。ランフラット・タイヤを履くのに角が丸められた乗り味は、硬質ながらむしろ軽快で快適。「F」や「L」にしか興味が無いというマニアも絶対試すべし!
■シボレー・コルベット Z06OHVではなくV8DOHCユニットを搭載し、歴代中最もロードゴーイング・レーサーとしての色合いが濃いC8のZ06。5.5リッターV8は最高出力646ps/8550rpm、最大トルク623Nm/6300rpmを発生、8段DCTを介し後輪を駆動する。4680×2025×1220mm。ホイールベース=2725mm。車重:1720kg。車両価格=2580万円。
写真=神村 聖/小林俊樹
(ENGINE2025年4月号)