2025.08.26

CARS

ホンダS2000がくれた“走りの刺激”! 開発者が明かした新型テメラリオ高回転V8と日本車スピリット

エストリル・サーキットで開催された試乗会で、開発責任者ルーベン・モール氏のワークショップに参加。テメラリオのパワートレイン哲学や、彼が語るホンダS2000への想いから、走りの核心に迫る。

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ホンダS2000が教えてくれた“刺激”の大切さ

モール氏がクルマへの情熱の原点として挙げるのは、ホンダS2000だ。

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「あのクルマが登場したとき、本当に衝撃でした。自然吸気で9000rpmまで回るなんて、まるで未来から来たように思えたんです」

その体験は、彼にとって“走りの刺激とは何か?”を教えてくれるものだった。

「スポーツカーにはドライバーをワクワクさせる“刺激”が欠かせません。私はそれを、もう一度いまの時代に持ち込みたかったのです。10年後、15年後に“あの1万回転のV8を覚えてる?”と語られるような存在にしたい」

テメラリオのエンジンには、その強い思いが込められている。


クルマ全体を“オーケストラ”に見立てる

テメラリオは、レヴエルトと同じHPEV(ハイ・パフォーマンス・エレクトリファイド・ビークル)プラットフォームを採用する2台目のモデルだが、ドライブフィールはまったく異なる。その違いを生むのが、新開発の統合制御システム「LDVI 2.0」だ。

「クルマ全体を“オーケストラ”だと考えてください。エンジンやモーター、ブレーキ、トルクベクタリングといった各システムは楽器であり、LDVI 2.0はそれを指揮するコンダクターなのです」とモール氏は説明する。アクセルやステアリングの入力に対し、各コンポーネントがリアルタイムで連携し合い、ドライバーの意図を自然に、そして力強く増幅させる。

「大事なのは、ユーザーがすべての技術を完璧に使いこなす必要はないということです。“このクルマならできる”と知っているだけで特別な気持ちになれる。これこそが私の言う“パフォーマンスの民主化”です。誰もが簡単に、最高レベルの性能を味わえるようにしたいのです」




精密なシミュレーションが支えるドライビングフィール

テメラリオの開発では、初期段階から実車テストだけでなく、先進的なシミュレーション技術が大きな役割を果たしてきた。モール氏はこう強調する。

「現代のクルマはあまりにも複雑になりすぎています。エンジン、モーター、電子制御、空力……それぞれが高度に絡み合っている。だから実際に走らせて壊して直すといった従来型の方法だけでは、もう追いつけないのです。もしシミュレーションを導入していないメーカーがあるとすれば、その時点で時代遅れだと断言できます」

仮想空間上でのテストは、現実のプロトタイプでは到底不可能な数の反復を可能にする。たとえばシャシーのセッティングやパワートレインの応答性などは、実車を作る前から数千パターンにわたり検証され、最適解に近づけられる。開発の効率は飛躍的に高まり、実車でのテストは確認と仕上げに集中できるようになった。

そして、その成果は「ドライバーがステアリングを握った瞬間に伝わってくる」とモール氏は強調する。

ステアリング操作に対するクルマの応答の自然さ、アクセルを踏み込んだときの力の出方、そしてブレーキのタッチ。これらはすべて、膨大なシミュレーションを重ねた結果として磨き込まれているのだ。

「私たちが目指したのは、数値的に正しい挙動ではなく、“ドライバーが心地よいと感じる挙動”です。シミュレーションはそのための強力な道具であり、だからこそテメラリオは、開発の段階から常に人とクルマの一体感を意識して作り込むことができました」

つまりテメラリオのドライビングフィールは、単なる偶然や経験則の積み重ねではなく、精密な仮想空間での設計と実世界での感覚的な仕上げの融合によって生まれたものなのだ。





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