2019.03.20

LIFESTYLE

長年売れ残っていた難題の多い28坪の土地に建つローコスト住宅 建築家の奇想天外のアイディアは必見!!

庄司寛氏設計による奇想天外なローコスト住宅

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さて、小野寺さんの土地は、28坪しかないだけでなく、さらなるマイナス要素を抱えていた。地盤が軟らかく特別な対応が必要なうえ、4坪も歩道として市に供出する必要があったのだ。それにもかかわらず、庄司さんはローコスト住宅とは思えない、印象的な外観の家を設計した。特徴は、直線で構成されたコンクリートの躯体から、大きなガラス窓を持つ部屋が突き出たデザイン。小野寺さんのクルマの趣味から好きなデザインを推察し、外観を設計したのである。この突き出た部分の上部は木造なので軽く、軟らかい地盤への負担が少ないうえ、コスト削減にも貢献している。

コストを抑えるため空調機は1台のみ。天井は張らずダクトも見える状態。グレーの壁の部分がRCで、白い部分は木造。


2階にも無駄な空間は無い。突き出した部分の大きな窓の向こうは広い道路なので、視線が抜けている。しかも上方に行くにしたがって広がる斜め壁の玄関吹き抜けは、僅か1mほど幅が広がっただけだが、小さな住宅にあって効果は絶大。小野寺邸は、サイズを感じさせない、豊かな広がりが印象に残った。

実は小野寺さん、建築家の庄司さんに依頼する前に、ある建築家紹介会社の利用を検討したことがあったという。その会社からは、20名を超える建築家による、この土地のための設計図が無料で寄せられた。ところが残念なことに、心揺さぶる提案は皆無。それでも義理を感じた小野寺さんは大いに悩み、最も「まし」な案に決めるつもりでいたそうだ。そんな時、心情を察し、気に入らないデザインなら断るべきと助言したのは、それまで家造りに意見を挟むことの無かった奥様だったという。クルマ好きのお父様と住宅好きのお母様、そして奥様の存在が無ければ、今の小野寺さんの個性的な家も、豊かなカーライフも存在しなかったのだ。

カッコいい小野寺邸は、家族のつながりの結晶なのである。

文=ジョースズキ 写真=山下亮一

玄関ホール脇の半地下部分は、小野寺さんの書斎。2畳ほどの空間だが、吹き抜けになっているので広さを感じる。


■建築家:庄司寛 1961年、東京生まれ。早稲田大学卒。ESPAD環境建築研究所などを経て独立。RCの住宅を得意とし、狭小から豪邸まで幅広く手掛ける。端正で上品な佇まいと、印象に残る外観が特徴。手放す気になれないと、1994年に新車で購入したビュイックのステーションワゴンに乗り続けている。

■お知らせ:雑誌『エンジン』の大人気企画「マイカー&マイハウス」の取材・コーディネートを担当しているデザイン・プロデューサーのジョースズキさんのYouTubeチャンネル「東京上手」がスタート。第1回配信は、エンジンでも紹介したことのある国際的建築家、窪田勝文さん設計の山口県のミニマリスティックな住宅。必見です!

(ENGINE 2017年11月号)

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