村上 座談会2でのBMWシリーズのライバル比較では、どのブランドも大黒柱がそろっているから気合いが入っていてすごいという話をしたけれど、ひとクラス上のA6のライバルたちのグループは、ワンランク上の品質感がハンパないね。
塩澤 値段が全然違うからね。
上田 確かに別物感がすごかった。
村上 540に乗ってサイクルスポーツセンターに向かったんだけど、この超高級車はいったいなんなんだ、ってホントにびっくりした。
齋藤 あれは吊るしで1078万円だからね。オプションを入れたら1330万円もする。
村上 いやぁ、イイもの感の塊のようなクルマだった。
塩澤 そうは言っても、メルセデスAMGのE53も1226万円。マセラティのギブリも素のモデルだけど1105万円。千万切りはジャガーのXF300スポーツだけでこちらは866万円ですよ。
村上 なるほど、さすがにすごい。では、はじめにざっとこのクラスのラインナップを紹介してください。
塩澤 まずメルセデスAMGのE53・4マチック・プラス。4輪駆動で普通の4マチックよりもよりスポーティな制御が特徴です。
村上 今評判の最新の直6を搭載している。なにしろターボチャージャーも付いていれば、電気駆動式のスーパーチャージャーも付いていて、さらに電気モーターでも加勢するという、これでもかのこれでもかの、さらにこれでもかのようなモデル。
塩澤 はい、でBMWは540i・XドライブMスポーツで、これも4輪駆動。オプション込みの試乗車の値段は1329万8000円。オプションの内訳ではメタリック・ペイントとかメリノ・レザーのシートとかB&Wのオーディオとかが高い。
村上 あのシートはすごかった。内装では一番豪華だったな。
齋藤 ジャガーは下のクラスのXEと同時にXFにも加わった300スポーツという2リットル4気筒で300馬力のエンジンを載せたスポーツ・モデルです。
村上 本日唯一の4気筒モデル。866万円が安く感じるのが怖い。
齋藤 マセラティはギブリのグランルッソです。トリムが豪華な仕様のモデルがこれ。ほかにスポーツ仕様のグランスポーツというのもある。
村上 3リットルV6ターボで350馬力。これが一番スタンダードなモデル。
齋藤 ジャガーとギブリが後輪駆動で、E53と540は4駆でした。
村上 A6と比較したくなるのはやっぱりBMWとメルセデスだよね。A6のときにも話に出たけど、ドイツ車は今ものすごいデジタル化の波のなかにある。それから今回のドイツ車がみな4駆だったことにも注目したい。さっき最初に乗った540のイイもの感がすごいって言ったけど、サイクルスポーツセンターに着いてA6に乗って驚いた。540はイイことはイイんだけど、けっこう強引なんだよね。
齋藤 いやいや、Mスポーツっていうのがそもそも強引なんですよ。普通はそんなことはない。
村上 これでもか感がすごく強くて、そのままA6に乗り換えて、ああ、イイものってこういうものなんだと思っちゃった。じゃあ、さっきのはなんなんだということになって、一杯食わされたと思った(笑)。
齋藤 540もE53も、ファン・トゥ・ドライブ演出が200%入っているでしょ。
村上 もちろん今回の選びの問題もあるけど、あのA6のナチュラル感に対して540MスポーツとE53の演出感はハンパじゃなかった。
齋藤 どっちもスポーティな4駆なんだけど、後輪駆動感を出しながらその後輪駆動の危うさを消すために積極的にフロントにトルクを配分しているからね。
塩澤 そういう後ろで蹴り出して、前で引っ張るという4駆感がグイグイと伝わってきた。
上田 しかも今日は雨だったから、特にすごかった。
齋藤 別にファン・トゥ・ドライブ感は必要ないという人にはトゥ・マッチだよね。過剰ですよ。
村上 過剰と言えば、E53はエンジンをかけたとたんにすごい音がする。しかも走ってる間それがずっと続くから驚いた。
齋藤 AMGの演出だからね。そもそもドイツ車って車外騒音にあまり頓着しない。
塩澤 まあ、音はともかくとして、やっぱり2台とも直6のエンジンはすごく良かった。ホント、びっくり。
村上 やっぱり直6 は完全バランス・エンジンだけあって、ターボが付こうとスーパーチャージャーが付こうと電気で加勢しようと、素のエンジン自体の良さがものすごく感じられたよね。
齋藤 ベンツだって長いこと直6をやってたんだけど、いつも世評ではBMWに勝てなかった。今度こそという気持ちがあるから気合いが入りまくってる。打倒BMW!
塩澤 で、結果はどうなの?
齋藤 エンジン単体でみると今のBMWよりいいと思う。
塩澤 おおおおー!
村上 だけど、あれだけ補器類が付いて電子制御が入りまくると、結果としてどちらも演出過剰な感じがしてしまうけど。
齋藤 あの芯から振動のない感じはベンツの方がいい。まったく新しく開発した直6で、過給器も2段構え、電気モーターも噛ませて、それでこのデキは素晴らしいですよ。BMWにバルブトロニックが最初に入ったときなんか、これがあのBMWの直6かよっていうデキだったからね。
村上 わかるけど、せめてターボだけにするとか、もう少し内燃機関としてのエンジンの味を楽しみたい。
上田 逆にBMWは直6にモーターを付けたりしないのかな。
齋藤 BMWはハイブリッドに対しては用心深いよ。だって社名がバイエルン“発動機”会社だからね。
塩澤 そうか、EVだとバイエルン“電動機”会社になっちゃうな。
齋藤 今のBMWの直6ってこれが完成形なんだよね。今までいろんなアプローチをして取捨選択して、3リットル直6に対して一番いい組み合わせを選んだわけだ。このツイン・スクロールのデカいターボチャージャー1個でまかなう直6は、ガソリンではいろんなクルマに使っている。過給にかんしてはシンプルだからね。ターボ1個だから。そういう意味ではBMWの直6の方が味わいはわかりやすい。
村上 やっぱりE53は補器類とかモーターとか、とにかく何かやってる感が常にあった。4駆の制御も同じ。その点、BMWの方が……、でも4駆システムはBMWも何かやってる感があったな。それに比べるとアウディA6が一番ナチュラルだったね。
塩澤 あのね、A6は340馬力。540も同じく340馬力。E53にいたっては435馬力も出てる。これはもう4駆じゃないと危ないですよ。もうあとは制御をどうするかの問題でしょ。やっぱりアウディは長い間4駆をやってきたからね。一日の長があって当然ですよ。
村上 でもみなさん、あと2台のことを忘れてやしませんか。僕はこの2台が、今日ほど光ったことはないと思う。ああ、自然な乗り味のクルマというのはこういうクルマのことをいうんだと、改めて思い出させられて、感心したけどね。
齋藤 異論はないね。特にジャガーはそうだった。
村上 余計な介入がないので、乗っていてホントに素直に気持ちがいい。悪く言えばオールドファッション的な古くささがあるんだけどね。黄色いバッジで300って書いてあるエンジンも、どうってことないはずなのに、全体としていい感じがする。
齋藤 同じエンジンなのにXEのときほど低回転で鈍い感じがしなかった。ターボラグもなかった。
塩澤 それはどうしてだろう?
齋藤 クルマがデカくて重いからね。エンジンが常に負荷の高いところを使っているから。その上クルマの動きもおっとりしていて、全体のバランスがすごく良かった。
村上 それでいて決して遅いという感じがしない。十分以上に速い。
齋藤 今まで乗ったXFで一番良かった。
上田 メルセデスもBMWもトゥ・マッチ感がハンパなかったから、余計に際立ちましたね。
村上 ジャガーはアダプティブ・ダンパーさえも付いてないよね。
上田 マセラティも付いてない。
村上 いやぁ、へんなこと言うようだけど、マセラティってやっぱりマセラティなんだってつくづく思った。スポーツカーに乗ってるみたい。びっくりしたもの。アクセル・ペダルの軽さとファンッとエンジンが吹け上がる感じとか、ステアリングを切り込んだときの反応。ノーズの入り方。もう、全然ほかの3台と違った。
齋藤 高速道路を真っ直ぐ走るのに一番気を遣うのがマセラティ。
塩澤 でも、山道を乗ってあれだけ楽しいセダンもめずらしい。
齋藤 夜中の高速道路をズバーンと行くようなときはBMWやベンツが楽ですよ。アウディが一番楽かもしれない。やっぱり後輪駆動のこの2台は、かりにエンジン・パワーで追いついたとしても、はるかに気を遣う。だけど、XFは穏やかにしてある。ところがギブリは山道での反応はいいんだけど、高速道路ではその分大変。
塩澤 スポーツカーだからね。
上田 ギブリだけ違うグループのクルマに思えたくらいだった。
齋藤 5シリーズとかEクラスがたくさん売れるので、マセラティもクアトロポルテだけじゃなくてギブリを出して仲間に混ざろうとしたんだけど、混ーぜてって言っておきながら混ざろうというつもりがない(笑)。
村上 我が道を行くクルマですよ、ホントに味付けがまったく違う。
塩澤 同じ格好の同じ味付けのセダンばかりじゃ面白くないでしょ。
村上 それもあるし、欲望に火をつけるタイプのクルマだと思う。
齋藤 排気音フェチは一発でやられます。いかにBMWやベンツの直6がいいって言ったって、排気音の官能性においてはギブリの足元にも及びません。
村上 後席なんかも狭いけど、キャビンも全然後ろの方にあって、ほかとスタイルが違うからね。
齋藤 ビジネスマンズ・エクスプレスっていう言い方があったけど、このクラスでは5シリーズとかEクラスがそうなんだけど、つまりカンパニー・カーなんだよね。ギブリはこのクラスに入ってきながらカンパニー・カー需要を獲ろうなんて思ってない。ギブリの後でBMWやベンツに乗ると、真面目なドイツ勢には捨てられないものがあるって、よくわかる。A6も含めて今日乗った5台のなかで圧倒的に華があるのはギブリですよ。買おうとするとめちゃくちゃ敷居が高いんだけどね。
村上 いやぁ、今日乗った5台はどれも興味深くて面白いクルマだった。やっぱりセダンはいいねぇ。
話す人=村上 政編集長+齋藤浩之+塩澤則浩+上田純一郎(すべてENGINE編集部) 写真=郡 大二郎
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
PR | 2024.12.12
CARS
SUVに求められる要素をしっかり満たしている 新しくなったルノー・…
PR | 2024.12.06
CARS
純内燃エンジン搭載のプレミアム・コンパクト・スポーツ、アバルト69…
PR | 2024.11.27
CARS
14年30万kmを愛犬たちと走り抜けてきた御手洗さんご夫妻のディス…
2024.12.04
LIFESTYLE
現実となった夢のカメラ 焦点距離43mmのライカQ3が登場 超高性…
2024.12.02
CARS
順調な開発をアピールか? マツダ次世代のロータリー・スポーツ、アイ…
2024.12.09
LIFESTYLE
特等席はカウンター シェフが目の前で鍋を振る割烹のような料理が楽し…
advertisement
2024.12.07
パ・リーグ新人王・武内夏暉投手 とりたての免許と初めての愛車 夢のカーライフがスタート!
2024.10.18
冒険心があるなら誰でも一度は乗ってみたい憧れのクルマ 総合15位はこのSUV! 自動車評論家44人が選んだ「2024年 身銭買いしたいクルマのランキング!」
2024.12.04
現実となった夢のカメラ 焦点距離43mmのライカQ3が登場 超高性能レンズ、アポ・ズミクロンを搭載!
2024.12.09
ホンダWR-Vとどう違う? スズキの新しいBセグメントSUV、フロンクスに自動車評論家の森口将之が試乗!
2024.12.05
プラモ好き、集まれ! タミヤ プラモデルファクトリー 新橋店がリニューアル デジタルでは味わえないリアルな模型の楽しさとは?