2020.07.31

CARS

クルマ雑誌編集者のメートル原器! エンジン編集長、村上政の愛車は2005年型ポルシェ・ボクスター

2005年型ポルシェ・ボクスター

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さらに大きな衝撃をもたらしたのが、当時のスズキ編集長が担当していたポルシェ911GT3(996型)だ。初めて運転した時には、背後から襲ってくる凄まじいエンジン音に仰天した。フロアは鋼鉄のように固く、ボディには金庫の中にいるような剛性感があった。そしてクラッチ・ペダルのとてつもない重さには本当に参った。これを乗りこなすには、100年かかると思った。

私は誰よりも運転が下手だった。とにかく練習の日々。やがて、VW各車やマツダ・ロードスターの市販車を使ったレースに参戦するようになったのをきっかけに、「なるほどクルマというものはこうやって動かすのか」ということが少しずつ分かってきた。要は物理学の問題で、正しい入力をすればその通りに動いてくれるが、根性や体力勝負では絶対に上手くも速くも走らせられない。一番賢い運転が一番スムーズで一番速いということを痛感させられた。

そんな時、私の前に現れたのが、フルモデルチェンジして2代目になったポルシェ・ボクスターだった。オーストリアで開かれた国際試乗会に参加する機会を得て、その遅くはないけれども決して速すぎない、洗練されてはいるけれど決して大人しすぎない、どこまでもドライビング・ファンを追求した走りに魅せられた。まさにスマートな運転が一番楽しいことを、そのまま体現したようなクルマだったのだ。私が乗るべきはこれだと思ったけれど、新車では手が出ない。そこへ、当時の上司が買ったばかりの新型ボクスターを手放すという話が飛び込んできて、ここぞとばかりにアタマを下げて譲ってもらったのである。以来15年を経て、今も自宅のガレージにあるボクスターは、私の愛車であるとともに、クルマ雑誌編集者としての思考の原点を確かめるためのメートル原器だ。死ぬまで手放すつもりはない。


文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬(車と人物)




(ENGINE2020年7・8月合併号)

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