関東のとある駅の近くに建つガレージハウスには、外に1台、中に2台、計3台の2シーターのミドシップ・スポーツカーたちがいた。ただしガレージのシャッターは、今は開かずの扉なのだという。
開かずのガレージの扉のその奥には?
今にも雨が降りそうな曇り空の下、住宅街の狭い道を進んでいくとクラシック・ミニとルノー・アヴァンタイムの並ぶガレージハウスが現れた。2台の横にはエッジの効いた、小さく低く幅の広い、いかにもスポーツカーらしい形のクルマもカバーを被って並んでいる。玄関ベルを鳴らすと、なにか警戒するようにさっとドアが開き、隙間からすっとカップルが姿を現し笑顔を見せた。この家の主、中田州彦(くにひこ)さんと聖子(しょうこ)さんだ。
さっそくカバーを外してもらうと橙色のランチア・ストラトスのレプリカ、CAEコルセが現れた。レプリカとはいえ雰囲気満点。カウルには無数の小さな飛び石の跡があるし、足元を見ればタイヤは履き込んだスタッドレス。いかにも走っているぞ、というオーラがみなぎっている。
撮影の準備中、カメラマンが「そのガレージのシャッター、開けたら中のクルマも写りますよ?」と2人に声をかけた。実は事前に、ガレージ内にはこの3台以外に、ポルシェ914とデ・トマソ・パンテーラが置いてあると打ち合わせていたからだ。
2人はちょっと心苦しそうな、微妙な表情を見せた。「すみません、今はそこ、開けられないんです」。カメラマンは残念そうだったが、ぱらぱらと雨が落ちてきた。急いで州彦さんが3台の位置を調整していく。聖子さんも手慣れた様子で、クルマの前後に立って誘導を手伝う。2人の息はぴったりで、みるみるうちにクルマがキレイに並んだ。「だってぶつけたら家計が大変でしょ」と聖子さんは笑う。なんとか雨が強くなる前に撮影を終え、玄関からガレージへお邪魔する。橙色の914と黄色と黒のデュオ・トーンのパンテーラに、ようやくご対面だ。ところがなんとその上を、白、黒、茶色の生き物が縦横無尽に走っている!
「先住の猫と保護猫、全部で22匹ネコがいるんです。逃げたら大変で」
見慣れぬ来客たちのせいで緊張が解けるまで、少し時間がかかった。彼らもまた、ガレージの主なのだ。
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